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第12話 14歳/存在

第12話となります。

ご意見ご感想などお待ちしております。

この年も私は無事に進級して十四歳になった。


今回もエミーナとは同じクラスメイトだった。


一方であの日会った同じ時戻りのフィファレス・ローランズフィファは他のクラスに在籍していた。


後に知ったのだが、彼女は学年テストでベスト3に入る優秀な生徒だった。


私はフィファの存在を気にしないほど、彼女はうまく時戻りの強制力と対峙できているようだった。



家族関係では動きがあった。


兄のラヴェルの婚約者探しが始まった。


この国で貴族階級や騎士階級の子息令嬢は高等部に入ると卒業までに婚約者を選ぶことが一般的とされている。


その後、世襲予定の後継者や騎士と文官になる子息令嬢は二十歳になると婚姻の誓いを果たすことになる。


この結婚ラッシュは毎年必ず訪れるので冠婚葬祭を司る教会や業者に対して経済的な好影響を与えていた。


もちろん時戻りの前の私もエミーナと共に花嫁衣裳や結婚式の会場を教会や業者にお願いしていたのを記憶している。


結果として私は断罪されたが、今でもこの伴侶探しは面倒でこの上ないものだと印象に残っていた。


・・・兄上の婚約者は誰だったかな。


そう言えば兄の婚約者の名前が思い出せない。


これも時戻りの影響の一つ、記憶障害の部類に入るのだろう。


そもそも兄の婚約者と顔を合わせた事もあまりなかったかも。


しかし、兄には早く結婚して頂きたいものだ。


我が家は農業関連の地盤を持つ貴族。


この国の農業を守る立場にいる。


兄は高等部に入学後は農業従事者を対象にした農業科に入っており実践的な技術や経営の基礎を学んでいた。


貴族階級や騎士階級の子息令嬢の中には土を扱うことを下賤だと言う輩もいる。


だが、我が家はそんな偏見と差別を気にしない家柄でありこの国の人々が食糧難で困らないようにしていた。


それがどうしてああなったのか。


悪意ある私の噂を信じてた家族はついには除籍まで考えて私を僻地にまで追い詰めようとした。


今でも家族の行為に理解が追いついていない。


だから今でも家族のことも油断ならないと私は思っていた。



共闘関係になったフィファからはその後、1ヶ月に3回ほど手紙が届くようになった。


手紙の内容はもちろんガブリエルのことだった。


ガブリエルはパルダビュー王子にうまく取り入った後、王都で有名な剣術道場に通い始めた。


ガブリエルは口癖のようにこう同級生に語っていると言う。


「あのグヤコールスを必ず倒してやる!」


ま、そうなるなと思っていた。


なんともここまで奴に恨みを買っているのだから、私の腕は同世代では本当に強いのだろう。


ただ、意志と強さは水物だ。


そのときの条件によっては強くなるかもしれないが、そもそもガブリエルにその才能があるとは思えない。


嫉妬に任せての行動は剣術使いとしては三流以下だ。


感情に出来うる限り、左右されないようにしなければならない。


そのことを奴がわかっているとは到底思えないからだ。


そして、手紙の最後にはこう書かれていた。



<ガブリエルとの婚約は解消するため、両親にあなたとの婚約を願い出るかもしれない。その時はエミーナとの事も覚悟して欲しい>



フィファの大胆な提案に私はその手があったかと感嘆した。


確かにフィファと婚約すればエミーナとの関係性が解消される。


これだけでも私にはメリットがあるし、フィファもガブリエルから解放される。


デメリットを考えるとすれば、ガブリエルがパルダビュー王子と共に何かしてくる可能性があること。


その場合、もっとも最悪なのは私とフィファがパーティー会場で断罪されることだ。


もしその時が来たらどうするか。


私は自室に置かれている剣に視線を向ける。


そうなれば剣を手にして抵抗するのみだ。


私はそんな思いに駆られながらフィファに<婚約の件は考えて構わない>と返事をした。



しばらくして、私はべラック先生からある話をされた。


「どうでしょう、剣術大会に出てみませんか?」


べラック先生は私に一枚の紙を渡した。


それは王都で行われる剣術大会の案内状だった。


「今年の後半に騎士団主催で剣術大会が行われる。大会は壮年の部、成人の部、そして青年の部の3つに分かれて行われるのですが君を青年の部で参加させたいのです」


「僕がですか?」


その話を聞くと私の胸が高鳴るを覚える。


べラック先生は私の腕を認めて下さっている。


今の私にはこれほど嬉しいことはない。


「はい。君なら青年の部で良い成果を挙げることができるでしょう。ですが一つ問題がありますね」


少し困惑するべラック先生の様子を見て、私は先生の懸念をすぐに理解した。


「つまり、時戻りのことですか?」


「ええ。王都に行けば君が嫌いなガブリエルと言う人やパルダビュー王子がいます」


そう、王都には彼らがいる。


「そのガブリエルもこの大会に出るでしょうね。そうなると再戦の可能性があります」


「はい」


「なにより私が一番懸念しているのはガブリエルが何かしらの手を使って君に危害を加えることです」


べラック先生が心配する理由を私は理解した。


「いくら前世の記憶があろうとも相手の悪意で不意に討ってかかられたら君でも対応するのは不可能です。まず君は私のように本当の実戦を経験していない。逆に相手は実戦慣れしている。そうなると君が怪我を負う。最悪、命さえ奪われるでしょう」


確かに私には実戦経験はない。


あるとしてもあくまでガブリエルとの手合わせとべラック先生との訓練のみ。


実際に本物の剣を向けられた時、私には対応可能かどうか・・・きっと、難しいだろう。


「もちろん、私は君を助けるよ。今回は一緒に行って君の側にいる」


べラック先生はいつものように頬んでくれる。


その笑顔を見ながら私はふとある疑問が生じる。


どうしてそこまでこの大会にこだわるのか?


「先生はどうして僕を大会に出したいのですか?」


私はその理由を聞きたかった。


「君が時戻りの運命に勝つには自ら死地に臨む必要があると思ったからです」


「死地って何ですか?」


「死地は言わずと知れた危険な場所です。危険な場所とは王都ですね。今後、君は死地たる王都に行かなければならない身です。では、この死地を脱するにはどうすればいいと思います?」


「・・・わかりません」


「そうですね。では、こういう考えを持つのはどうでしょうか、危機を脱するためにあえて自らそこに飛び込んでしまうと」


「自分からですか?」


「そうです。受け身ではなく積極的かつ自発的に相手の懐に飛び込んでみましょう、そうしたら相手は動揺して隙を見せる。そこを弱点として突く」


「つまり、自分の意志で攻めに転じるんですね?」


「そうです。何も相手を待つ必要はありません。積極的に動けばいいのです」


べラック先生の考えは私の気持ちを変えた。


こんな考え方があるとは知りもしなかった。


私は今まで逃げることのみを念頭に置いていたがそれでは後手に回ってしまう。


状況によっては先手を打つ必要がある。


今はまさにその状況だとべラック先生は判断した。


べラック先生は剣術使いだ、


実戦経験からそう判断したのだから私には大きな説得力はあった。


「どうですか、大会に参加してみませんか?」


「やります」


「うん、よろしい。では、大会までにさらに君を鍛えよう、いいね?」


「はい」


私は頷いてべラック先生に応じた。




私はフィファに王都で行われる剣術大会に参加することを手紙で告げた。


彼女からすぐに返信が来た。


そこに書かれていたのは、



<ガブリエルを負かせてきてね>



だった。


フィファらしさがそこからにじみ出ていたし、奴のことが相変わらず嫌いなのだと私は感心した。


家族からは別段反対はなかった。


両親としては私が進学前の王都見学になると考えていたし、王都には兄もいるので心配はしていないようだった。


エミーナにも王都に行くのでカフェ<カトレア>に行けないと告げた、


彼女は驚きながらも「私も参加したかった」と残念そうにした。


エミーナも剣術を習っているのだからその気持ちは当然だった。


とは言え、私はしっかりと家族やエミーナたちには事の次第を話した。


ちゃんと義理を果たしたのだから私の気が少し楽になったのは言うまでもない。


二か月後、私はべラック先生と共に王都へ向かった。




私が断罪されるまで残されたのは6年。


私は時戻り後、初めて忌まわしき因縁の場所へ向かう。


自分の運命に本格的に抗うために。

〇登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。

べラック先生に誘われて王都の剣術大会に参加することになりました。

ついに剣術使いを道を本格的に歩み始めます。


・エミーナ・ナイトレイ

主人公の元婚約者で今はクラスメイトです。

少し影が薄くなってきたかもしれません。

フィファのことにも気付いていません。

意外と鈍感なのかも。


・フィファレス・ローランズ

謎の手紙の主で時戻りの一人です。

手紙のやりとりの中で主人公との婚約を考えていると伝えます。

もしかすると主人公に好意を抱いているかも。


・ペラック・ベルドリッチ

主人公の剣術の師匠です。

時戻りの主人公を鼓舞するために王都での剣術大会への参加を促します。

今、一番頼りになる剣術使いです。

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