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第11話 13歳/同族

第11話となります。

会話劇が多い内容となっています。

ご意見ご感想などお待ちしております。


※フィファの時戻りの年齢を8才から12歳に修正しました。

この週末、私はエミーナと共にカフェのある市場へ足を運んだ。


街の市場はキャロット通りと呼ばれており、最初にニンジンの取引があったのが名前の由来と聞いている。


キャロット通りでは牛や鶏などの食用肉や近郊の海で獲れた魚、我が家の巨大な農作地から運ばれた野菜など多くの食料品が売買されている。


その一画には産地から送られた食材を使用した多くのレストランやカフェなど飲食店があり、目的のホットケーキを販売しているカフェ<カトレア>はその中の一つにあった。


雰囲気重視のアンティーク調なカフェ<カトレア>に到着するとすでに店の前に20人ほどの待機列ができていた。


その多くが10代から20代の若者ばかりであり、私やエミーナのような学生も並んでいた。


今の私も若者には変わらないが時戻り前はカフェにはエミーナに連れてもらう以外はほとんど行くことはなかった。


カフェに興味がなかったと言うのもあるが、正直言って私には合わないと思ったからだ。


とは言え、今回は別の目的があるのでエミーナの誘いに素直に従ったまでだった。


「もっと早く来れば良かったわ」


私たちは待機列に並ぶとエミーナが店員からメニューを見ながら愚痴を零した。


エミーナが言うには「行列ができるこのカフェでは入店後にすぐに商品を注文できるシステムにしているそうでその辺りもリピーターが多い」と教えてくれた。


私はメニューに書かれたお品書きを真剣に選ぶ彼女の様子を尻目に店の周囲を確認する。


手紙の主がいるような雰囲気はない。


しばらくは様子見かと思うと、


「ねえ、聞いてる?」


私の様子に気付いたエミーナが不審そうにしながらメニューを渡してきた。


「聞いてるよ」


そう言うと私はエミーナから受け取ったメニューを見る。


メニューの内容はホイップクリーム入りのホットケーキやフルーツ入りのホットケーキの二種類のメインメニューとやカフェオレやカフェラテなどの飲料が書かれている。


この店はメニューを限定にすることで集客率を高くしているのだとわかる。


しかしと思う。


メニューに書かれたホットケーキの絵を見ているだけでホットケーキを食べていないのに甘さが伝染して顎が落ちそうになる。


「何を食べるの?」


「君は?」


「私はフルーツ入りのホットケーキかな」


エミーナはメニューに書かれているフルーツ入りのホットケーキの絵を楽しそうに指差す。


なんとなくな印象だが彼女らしいと思った。


「僕はノーマルのホイップ入りにする」


私はこだわりはないので有り勝ちなホットケーキにする。


「フルーツは苦手なの?」


「フルーツは別で食べたいんだ」


普通に食べればいいと思うのは私の感覚だ。


「そうなんだ」


エミーナはふーんと軽い驚きで返してきた。


30分後、ようやくカフェに入店した私とエミーナはすぐにお目当てのホットケーキを注文することができた。


10分後には注文したホットケーキをテーブルに置かれた。


・・・失敗した。


私のホットケーキには絵よりも予想以上にホイップクリームが沢山のっていた。


その上、甘く漂う香りを知るとこれにはさすがに胸やけしそうになる。


「やばいわね」


エミーナもホイップクリームの量を見てご愁傷様と言った感じだ、


「少しもらってもいいけど?」


「いいの?」


「さすがにその量は厳しいでしょ?」


「うん」


私はエミーナにホイップクリームを取ってもらう。


ようやく私が食べられる量になったところで私たちはホットケーキを味わうことができた。


カフェ<カトレア>のホットケーキは評判通りの美味しさだった。


ほどよい感触と甘さにそれに合うコーヒー系の飲料。


これなら男性でも食べられる。


唯一の欠点はホイップクリームの多さだろう。


これが本当いただけない。


店のサービスかもしれないがこれはやり過ぎだろ。


そう思いながらエミールの方を見ると彼女は満面の笑みでホットケーキを食べていた。


幸せそうな彼女姿を見ると時戻り前の時と比べてしまうと何とも言えない気分になる。


・・・今日はそんなことよりも別のことだ。


私は店内に目を向ける。


ここでも至って普通の感じであり手紙の主が現れるとは思えなかった。


・・・無駄足になったかな。。


これは失敗したかと私が考え出した時、手紙の主は予想もしない方法で接触してきた。


ホットケーキを食べ終えてからしばらくしてエミーナがお花を摘みに行くと店員がお水入りのピッチャーを持って現れた。


「失礼します」


店員はそう言うとエミーナのグラスに水を注いだ。


「コースターも換えますね」


そう言うと店員は濡れていたコースターを新しいものに変えた。


その後、私のグラスに水を注いだのだが店員が去った後、気が付くとグラスが置かれたコースターから何かがはみ出しているのに気付いた。


私はすぐにそれがメモだと気付くと自然な動作でメモを手にしてズボンのポケットに入れた。


そして、エミーナが戻ってきたと入れ替わりに私もトイレに入るとメモの中身を確認した。


メモにはこう書かれていた。


<夕方に路地裏で>


書体も手紙と同じであり、今日の行動は無駄ではなかったと安心する。


ようやく手紙の主と会えるのだ。


果たして手紙の主は何者かと思うと私の意識はそちらへ移行していた。



カフェ<カトレア>での食事後、私はエミーナの買い物に付き合うことになった。


これも想定内だった。


私はエミーナの荷物持ちになって彼女の後に続いた。


エミーナはブティックに行くと外出用の服やアクセサリーなどを品定めする。


そのたびに私にどれがいいか聞いてくるので当たり障りない回答に徹した。


私の心はここにあらずだがその辺りはエミーナに感づかれると面倒になるので買い物が終わるまで焦らずの態度を心掛けた。


その成果が出たのかエミーナとの買い物も無事に終わったので今日はその場で解散となった。


「また誘うね」


楽しい時間を過ごせたようでエミーナは満足な面持ちで帰宅していった。


私は一息深呼吸をすると手紙の主が待つ路地裏へ向かった。


すでに時間は夕方になっており建物の隙間から太陽の日差しが漏れる素敵で何気な雰囲気になっていた。


こう言う光景は割と好きだ。


何か落ち着くことができる。


そんな感傷にふける私の名前を誰かが呼んだ。


「グヤコールス・ペパリッチ」


少しだけ高いハキハキとした声だった。。


声が聞こえた方向が右側だったので、私はその方向へと語らを向ける。


少し薄暗くなっている路地にが茶色のローブ・ヴォラントの外出用ドレスを着た少女がいた。


「やっと会えたわ」


暗い路地から出てきた少女が夕陽の光を浴びる。


その姿を見ると橙色の入射光に照らし出されたのは背中まで伸びた銀糸のロングヘアがそこにあった。


「グヤコールス君って呼べばいいかしら、時戻りさん」


当人である少女は微笑しながら私に少しずつ歩み寄ってくる。


「何の事かな?」


私は彼女の様子を見るためあえて様子見のために否定した。


「隠さなくても大丈夫よ。私もあなたと同じ<時戻り>だから」


「じゃあ、証拠を見せて」


今度は相手に乗ってみる。


「そうね、証拠は必要よね」


少女はそこで足を止めた。


「こう言えばいいかしら、あなたの断罪劇を見たと」


「断罪劇って何?」


「へえ~、断罪劇ってだけじゃいけないんだ」


少女は妙に納得していた。


「それくらい否定しないと相手を信用できない、あなたのその気持ちはわかるわ」


少女は下唇の辺りに右手を当てて下目使いのまま頷く。


「これならどうかしら、パルダビュー・アリンガローサ王子はあなたに想いを寄せていたこと」


私はその名前を聞くと思わず目を大きくしてしまった。


パルダビュー・アリンガローサ王子。


その名前を聞くだけでも気分が悪くなってしまう。


「ほら、反応した」


少女は私の様子に満足していた。


「あの断罪劇の場にはあなたの婚約者だったエミーナ・ナイトレイや王子の取り巻きたちもいた。あなたを斬ったガブリエル・スプリンゴラもね」


「そこまで覚えているんだ」


「ええ」


確かにこの少女はあの断罪劇の場にいたようだ。


だが、この少女の記憶にないのは何故だ?


「でも、君の事は覚えていない」


私はそう告げる。


「そうね。でも、関係者なのは事実よ」


「君は誰の知り合いなんだ?」


「ガブリエル・スプリンゴラ」


「どういうこと?」


「あいつは私の婚約だったわ」


女の子が告げる内容に私は驚愕した。


まさかガブリエルに婚約者がいたとは知らなかったからだ。


「あいつ、婚約者がいたんだ」


「ええ、面白いでしょ?」


少女は楽しそうに語るが私はそんな気分になれない。


でも、これで彼女が私に接触したい動機が見えてきた。


私が時戻りがどうか確証を得たかったのだろう。


「中等部であなたの姿を見た時、正直言って驚いたわ。だって、断罪劇の頃よりも体格が数段良くっていたんだもの」


「これでも自分の身を守るために剣術を学んでいるんですね」


「でしょうね。そんな動機がないと剣術を学ぼうなんて思わないもの」


少女は私の話に納得した。


「だから、私はあなたを試すことにしたわ。あいつを使って」


「もしかしてガブリエルと手合わせのことか?」


「ええ。その手合わせをあいつに唆したのは私」


「どんな理由をつけたんだ?」


「あいつに言ったのは<グヤコールス・ペパリッチがカッコいい>、ただそれだけよ。でも、あいつは私があなたに心を寄せていると思ってあなたに絡んだわ」


だからかと私は納得した。


ガブリエルが何故、絡んできたのか。


あいつはこの少女に気が合ったから彼女が私に興味があることが許せなかった。


十三歳の男子としてはわかりやすい動機だが、そのおかげでまた面倒な事をしてくれたと私は思った。


「まだ何も知らないガブリエルが可哀想だ」


私は同情を言葉にするがガブリエルに同情するつもりはしない。


「おかげであいつはあなたに負けて逃げた。でも、まさか王都へ転入するとは思わなかったわ」


「それは僕も同じさ」


私としては結果がそうなった限り、ガブリエルを唆した少女に不信感を抱くしかない。


そんな私の心情を察したのだろう、彼女は話を変えてくる。


「あなたには申し訳ないことをしたわ。だから、あなたに会って話したいことがあったの」


「それは何?」


「断罪劇の後のこと」


そして、少女は私に断罪劇の後の事を話してくれた。



私が斬られた後、パーティー会場はとんでもないことになっていた。


まうz、パルダビュー王子は私が斬られたために大いに心を取り乱したと言う。


すぐに近くにいた衛兵に命じてガブリエルを拘束すると地下牢へ押し込んだ。


そればかりか他の取り巻きたちもガブリエル同様に地下牢へ幽閉された。


ガブリエルは抵抗したが衛兵たちに取り押さえた際に気を失うまで体中を殴打された。


一方でエミーナは涙を流しながらその場で蹲っていた。


エミーナからは「わたし・・・そんなつもりじゃ・・・」と謝罪に似た言葉が聞こえた。


そんな彼女を無視してパルダビュー王子は宮廷医師を呼ぶように文官に指示をした後、私の亡骸を抱き上げて自室へと消えていったそうだ。


「その後、パーティーは解散になったけど私は死ぬことになったわ」


「どうして?君は関係ないだろう?」


「それがあったの。私がガブリエルの婚約者だと言うことで連帯責任を取らされたわ」


そう、彼女にとってその断罪劇の後が最悪だった。


「あの王子、勝手に暴走してガブリエルや取り巻きたちの家族もあなたを殺した共犯だと言って牢獄へ押し込んだわ」


「嘘だろ・・・」


王子のありえない身勝手さに私は絶句した。


「あなた、あの時は王様や王妃様はいなかったの知ってたかしら?」


「いや、知らない」


そうだ。


あの時、どうして王様や王妃様がいなかったのか。


私はその事を疑問に思わなかった。


「王子は王様と王妃様が外遊に行った時を利用してあなたを断罪しようとしたの」


「知らなかった」


そうではない。


知らなかったでは済まされない。


これは完全に私のミスだった。


「だからあの王子は勝手に振舞って勝手に面倒事を起こした事に焦って、王様や王妃様が戻ってくる前に私や家族に毒杯を与えた」


「ありえないな」


つまり、王子の不祥事を隠そうとした者がいた。


それが地位の高い者、宰相か騎士団長あたりが脳裏に浮かんだが確証はもてない。


「そうね。私が毒杯を飲んだ後にあの王子の暴走を知った王様や王妃様が何をしたのかわからないけど、私はその前に死んでしまったからどんな結末を迎えたのはわからない。でも、目が覚めると私は十二歳の自分に戻っていた。驚いたわ。だって十二歳の私に戻っていたのよ」


「ああ、その気持ちはわかる。僕もそうだったし」


「あなたは何歳の時に戻ったの?」


「八歳さ。こっちも最初は信じられなかったよ」


「やっぱし同じなんだ」


少女は苦笑した。


「最初はね、これは夢だと思って信じなかったけど現状を把握してたら私は時が戻ったと確信したわ。だから私はこう思ったの、あなたやガブリエルに関わらないようにしようって。あなたの断罪劇に関わらないように生きようと思った。でも、時戻りの影響は私の想定の超えていたわ」


「何があったの?」


「あいつ・・・ガブリエルとの出会いが早くなったことね。本来なら王都の高等学園で出会うはずがこの中等学園で会うなんて思いもしなかったわ」


少女はため息をつく。


彼女もそうだがガブリエルが中等部にいたのは私も驚いたのを覚えている。


「それだけじゃない。まさかあなたの婚約者だったエミーナ・ナイトレイまであなたの側にいるじゃない。何この状況って思ったわ」


「僕はどうなの?」


「あなたのことは中等学園から知ってたから学園で話さなければいいと思っていた」


「確かに接触しなければいい」


「そう。でも、ガブリエルが問題だった」


「あいつが?」


「ええ。性格がさらに捻くれていたわ」


「それはどういうことかな?」


「時戻りの前よりも嫉妬深くなっていたのよ。私がクラスメイトの男の子と話すだけでも怒るし、私の兄と話すだけでも不機嫌になるから呆れてしまったわ」


ガブリエルがそこまで性格が変わっているとは知る由もなかった。


そんな彼を利用したこの少女も大概だと思うが。


「で、ガブリエルは<時戻り>ではなかったのか?」


「ええ、違っていたわ。私が様子を見ててもそんな感じではなかった」


つまりはガブリエルは時戻りの影響を受けたとはいえ前世の記憶がないことになる。


「でも、まさかあなたのことを褒めただけで手合わせを申し込むなんて思いもしなかった」


「それは僕もさ。おかげでいい迷惑を被った」


「だから、そこは謝らせて」


少女は私に向けて頭を下げた。


「ごめんなさい」


「いいよ。むしろ、こっちが感謝している」


「そうなの?」


「うん。だって、あいつに復讐できたからね」


私はとりあえずその場を見繕うことにした。


少女は敵ではないとわかってきたからだ。


「それで君の望みはなんだ?」


「共犯ってところかしら」


「共犯?」


「ええ。私はガブリエルとの婚約を避けたい。きっと王都にあいつがいても家の事情で婚約するかもしれないし」


少女にとってはガブリエルの存在は悪夢でしかない。


それは私とて同じ気持ちだ。


彼女の気持ちは理解できる。


「じゃあ、何をすればいい?」


「そうね、私はガブリエルの情報をあなたに与える。あなたはエミーナの情報を教えて」


「それだけでいいの?」


「ええ、まだ私たちは十三歳よ。できることは限られているわ」


確かに問題のない条件だ。


こちらとしてもガブリエルの情報はありがたい。


「あなたと連絡を取る際はどうしたらいい?」


「そちらに任せるよ」


「じゃ、前と同じようにあなたの屋敷に私の名前で手紙を送るわ。執事を介しての直接のやりとりなら誰にもわからないと思うしね」


こうして、私と少女の間に時戻り同士の密約が交わされることになった。


それともう一つ確認しなければならないことがった。


「そうだ、君の名前を聞いていない。君の名前は?」


「フィファレス・ローランズ。フィファでいいわ」


そう言うとフィファレス・ローランズは女性の髪をかきあげる仕草を見せながら意味ありげな笑顔で私の前から消えた。




私が断罪されるまで残されたのは7年。


新たな協力者を得た私は自分だけでなく他人も時戻りに苦しんでいたことを初めて知った。

〇登場人物


・グヤコールス・ペパリッチ

この物語の主人公です。

今回は謎の手紙であるフィファレス・ローランズと出会いました。

彼女とは今後、共闘関係になります。


・エミーナ・ナイトレイ

主人公の元婚約者で今はクラスメイトです。

ようやく主人公とホットケーキを食べに行けて満足しています。


・フィファレス・ローランズ

謎の手紙の主で時戻りの一人。

前世ではガブリエル・スプリンゴラの婚約者でしたが

彼の影響で毒杯を賜ったことで彼から逃れたいと思っています。

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