↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/51

第七話 新しいお友達

「ふん! ふん! ふふーんっ!」

「バルバト、キモい……」

 

 上機嫌に、ロラーナの歌に合わせて鼻歌を歌うバルバトは見たことなかった。

 この図体とツラ、それと触れることすら危険な生物が――歌だと。

 

 やめろ、やめろ。

 

「ラグルは歌わんのか?」

「歌わないよ。そういうの知らんから」

 

「知らなくてもいいんだぞ? こう言うのは、雰囲気が大事なんだぞ」

「そうですよー。ふふふんふーん」

 

 最初はあれだけバルバトに怯えていたのに、二人はいつの間にか仲良しになったみたいだ。

 ロラーナもドラゴンの血を受け継いでいるから、そういうのがあるのか。

 

 いや、彼女の人柄なのかもしれない。

 

「おっ、そろそろ森の端が見えてきたな」

「え〜! もっと乗ってたかったのに!」

「ロラーナ、さっさと王になって遊びに来い」

 

 この森の主に力を見せないで、気に入られるなんて。

 俺は三日間、ボコボコにしてようやく今みたいな感じになったのに。

 

「このまま、目的地まで乗せてってもいいんだぞ?」

「我は構わぬぞ」

 

「あ〜……でも、バルバトさんが王都に来たらみんな驚いて」

 

「確かに! コイツめっちゃ悪そうな顔してるもんな」

 

「オイ! コラァッ! 振り落とすぞ!」

 

「やれるもんならやってみろ! こっちは背中取ってるんだからな! 鱗剥いで、トカゲ以下にしてやるわっ!」

 

 俺とバルバトが言い争いをしていると、ロラーナの笑い声が聞こえる。

 

「お二人は仲良しなんですね。フフ」

 

「フンッ! ラグルの実力は認めてる」

「当たり前だ。俺にボコられたんだからな」

 

「ラグルさんって、心開いてると乱暴な口調になるんですね」

 

「そうか?」

 

「全然違いますよ!」

 

 そんなに違うかな〜。

 自分ではありのままのつもりなんだけどさ。

 

「ロラーナ、気をつけろよ。”手枷”をはめた状態で一万年生きた我と互角よ」

 

「一万年――!?」

 

 ロラーナは俺の強さより、バルバトの年齢に驚いたようだ。

 

「そうだ。手枷を外したら手も足も出なかったからな」

 

「まぁ、バルバトって、竜王とかよりも上位の存在だからな。本気出しちゃったよ」

 

 素で戦わないと、さすがにバルバトには勝てない。

 あと、じっちゃんにも。

 

「あ〜、着いちゃった」

 

 と、雑談していたら、森の出口に到着してしまった。

 

「なあ、その竜石を少し見てもらっていいか?」

 

 バルバトがロラーナにそう言った。

 

「竜石? アルキラのことですかね?」

 

 ロラーナが、緑色の宝石を取り出す。

 

「…………」

 

 森の木よりも高い位置にある首を、バルバトはゆっくりと下に下げる。

 覗き込むように、宝石を見た。

 

「ほう……あのチビがこんなに立派になったのか」

 

 バルバトは、何か知っているようである。

 

「……何か、ご存知なのでしょうか?」

「ちょっとした知り合いだ。と言っても、すぐにいなくなったが」

 

 こんな形で出会えるとは、とバルバトが続ける。

 まるで遠い故郷を見るように、目を細めた黒竜からは哀愁のような空気が漂っていた。

 

「あ、バルバト、鱗何枚かちょうだい」

「……空気読めや」

 

 しんみりするの、なんか嫌だからね。

 それにナイフ忘れたから、バルバトの鱗で代用しよう。

 

「ほれ」

「あざーっす!」

 

 わざとらしく腰を九十度に曲げる。

 

「それ……国宝級――」

 

 ロラーナは何か言おうとしていたが、とりあえず鱗を手で割った。

 

「バルバト……鱗、前より硬くね?」

 

「ふっ、鍛えてるからな。でも、煎餅割るみたいにしながら言うな」

 

 ドラゴンのくせに、煎餅とか知ってるのか。

 そっちが驚きだ。

 

「まあ、俺も鍛えてるからな。それと、涙もくれ」

 

 飲み水の入った水筒から、水を捨てるとバルバトの目に近づける。

 

「それも、国宝級――」

 

 また、ロラーナが何か言ってる。

 そんなことよりも、竜の涙はどんな傷も癒すからな。

 持ってて損はないだろう。

 

「もう、やらん」

「これは、ロラーナの」

「……なら仕方ない」

 

 大きな瞳を何回か瞬きをすると、大粒の涙が流れる。

 一滴で水筒が一杯になると、蓋を閉めた。

 

「後は食料だけど……」

「尻尾はダメだぞ」

「…………」

「そんな顔してもダメだ」

「――――!!」

「怒ってもダメ!」

 

 さすがに肉は分けてくれなかった。

 

「ケチくせー!」

「誰が、食わせるために肉をやるか!

 馬鹿か――お前は!」

「ロラーナ……お腹空いちゃうだろうな」

 

「……それなら、仕方ない……」

 

「いや、お友達のお肉は……さすがに」

 

 そんな、遠慮することないのに。

 

「我を友と……」

 

 バルバトはなぜか震えている。

 

「嫌……でしたか? お友達?」

 

 デカい図体で、そんなに首を振るな。

 ほら、ロラーナが飛んでいきそうだ。

 

「良かった。また、来ますね! バルバトさん!」

 

 ロラーナが手を差し出すと、バルバトは鋭い指先を差し出す。

 

「んじゃ、あざーっす! バルバト」

 

「ああ、さっさと王位継承なんて終わらせて、帰ってこい」

 

 俺とロラーナは、空を飛ぶバルバトに手を振る。

 

「いやー、楽ちんだった。三日くらいかかると思ったのにさ」

 

「バルバトさん、いい人……ドラゴンさんでした」

 

「友達になれてよかったな」

「はい! ラグルさんのお陰です!」

 

 ロラーナは、屈託のない笑みを見せる。

 

「ところで、王都までどれくらいかかるんだ?」

 

「街道沿いに歩いて、一週間くらい……ですかね」

 

「遠いな」

「ここまで馬車だったので、だいたいですが」

 

 ん〜、見渡す限り背の低い草しかない。

 

「ここは、平和の大地『ピア』って言うんですよ」

 

「ピア?」

 

「そうです! 勇者が魔王を倒したのが、この場所だと言われています!」

 

 勇者の真似をするように、猫パンチを繰り出すロラーナ。

 

「可愛らしい勇者もいたもんだ」

「馬鹿にしてますよね? ラグルさん」

「はははっ!」

 

 なんと言うか、一緒にいて楽しいな。

 バルバトの奴が気に入る理由は分かるわ。

 

「とりあえず、道案内よろしく」

「はい!」

 

 ロラーナは元気よく返事をする。

 俺達は、逃げるウサギのお尻を追いかけるように、王都に向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。