↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/52

第三十三話 みんな仲良し

「ん? リズアラ、何かあったの? 目が真っ赤だよ? それに、ラグルさんも……まだ疲れた顔をしてますね……大丈夫ですか?」

 

 昨日の疲れでこんな風になっているわけじゃない。

 そのことを知らないロラーナは、椅子に座っているカエラの髪の毛をとかしながら、俺とリズアラの顔を見比べていた。

 

「お姉ちゃん、いっぱい泣いちゃったもんね。私もびっくりして泣いちゃったよぉ」

 

「ちょ! カエラ!」

 

 リズアラがそう叫んでも遅いようで、ロラーナはカエラの言葉にはっ、とした表情になる。

 

「そっか〜。リズアラはカエラが元気になって嬉しかったんだよね。それなのに、ラグルさんに迷惑かけて、びえーん! って、なったんじゃない?」

 

 妙に鋭いというか、ほとんど合ってるんだが。

 心でも読めるのか?

 ロラーナのすぐ横に立っているリズアラに目を向けるが、一瞬だけ合うと弾けるように顔を逸らした。

 

 茶色い髪の隙間から見える、彼女の耳の先端は赤く、こっちが気になるのか、チラチラと視線を向けてくるが、顔を向けることはなかった。

 

「そうだ! カエラちゃん、髪の毛切ろうか」

 

 リズアラと同じ栗色をした髪の毛は、長年切っていなかったのだろう。

 ロラーナがいくら整えてもボサボサで、尻まで隠れるくらい伸びている。

 

「本当!? ロラーナお姉ちゃんが切ってくれるの?」

「ええ、任せて。私も子供の頃はリズアラの髪もよく切ってあげてたんだよ」

「やったー! お姉ちゃんとお揃いがいい!」

 

 両手を突き出して喜ぶカエラに、ロラーナが微笑みかける。

 リズアラは、元気になった妹を見て、いつも凝り固まってるような表情がほころんだ。

 

 たったそれだけなのに、達成感とは違う、温かいものが流れ込んでくるような気がした。

 

 これがロラーナの目指している世界なのかもしれない。


「ロラーナお姉ちゃん、可愛くしてねっ!」

「カエラ! ロラーナ姫にそんな言い方しちゃ――」

「――いいのよ、リズアラ。それに、私も昔みたいに、ロラーナって呼んで欲しいかな」

 

 三人の会話を耳にしながら、ゴミ箱に捨てられたサリスを回収する。

 持ち上げた時に、薄っすら瞼が開いたけれど、すぐに閉じてしまった。

 

 テーブルの上で、白い布を被せられたアリシャの横に、並べるように寝かせてやると、サリスは横に寝ている彼女に体を寄せて丸まってしまった。

 

「吸血鬼の王にも、可愛らしいところがあるじゃないか」

 

 そう軽口を叩いても、サリスもアリシャも起きることはない。

 サリスが丸まった拍子にずれた布を直している最中も、三人の会話とハサミの軽快な音が聞こえていた。

 

「……分かった。ロラーナ」

「えへへっ! 嬉しいな。リズアラが帰って来てくれたみたい」

「お姉ちゃんとロラーナお姉ちゃん、仲直りしたの?」

「ん〜、喧嘩はしてないからちょっと違うかな。私がリズアラに冷たくされてたんだよ……シクシク」

 

 ようやく雪解けって感じかな。

 サリス達から目を離して視線を動かすと、泣き真似をするロラーナが視界に映った。

 

「お姉ちゃん、めっ!」

「カエラまで……ふふっ、リズアラにはかなわないなぁ。分かったよ。ロラーナ――ごめんね」

「うん、許します。リズアラ」

 

 二人が顔を見つめ合って笑っている。

 カエラも赤みが戻った頬を緩ませて、ロラーナとリズアラを真似るように笑っていた。

 

 仲直りできてよかった。

 

 後は、俺もしっかりリズアラに言わないと。

 

「リズ――」

「――ラグルさん」

 

 ほぼ同時に発した言葉は、わずかにリズアラの方が早く、俺の口を塞いでしまった。

 ロラーナの横に立っていた彼女が、ゆっくりと歩いてくる。

 

「あらためて……このたびはカエラ=エイスを助けていただきありがとうございます」

 

 リズアラは両手を体の前で合わせて、深々とお辞儀をしてくる。

 

「そして、ロラーナ姫……ロラーナを、友達を、助けてくださりありがとうございます。リズアラ=エイスの名に誓って、微力ですが……私もロラーナ=ドラグーンを王にする手助けをさせてください」

 

 むしろ、こっちからお願いするつもりだったんだけどな。

 

「その……なんというか……いや、俺の完敗だよ。リズアラ」

「完敗……ですか?」

「そうだ。君の心は強い、それは俺が保証する。俺なんかよりも、ずっとずっと強かった」

「いえ……そんなことは……」

 

 否定してくるリズアラに、俺は首を横に振った。

 

「ごめんな、体痛かったろ? もっと違うやり方があったのに、弱い者いじめするみたいでさ……ずっと謝りたかったんだよ」

「それは私も一緒ですから……」

 

「そうかもしれないけど……三人の仲がいい姿を見せられて、万が一があったらと思うと……自分の力が少し怖くなったんだよね」

 

 自分の心を懺悔するようにさらけ出し、リズアラの奥にいるロラーナとアリシャにも目を向けた。

 

「だから、いろいろ――ごめんな」


 今の俺にできることは、謝ることしかない。


「安心……しました」

 

 リズアラの呟きが耳に届き、ゆっくりと俺は頭を上げた。

 

「……安心?」

「ええ、力に溺れた怪物じゃないと。ちゃんと、あなたも――人間だと」

「人間……そうだな」

 

 半分は魔族だけど、何故か「人間」と言われたことが嬉しかった。

 

「それで、お返事をいただけていませんので、教えていただけますでしょうか?」

「――むしろ、こっちからお願いしたい。ロラーナを――頼む。俺達に協力してくれ」

 

 俺がそう言うと、リズアラは柔らかい口調で「はい」と返事をする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。