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イベント回収①

 旦那様の専属メイドとして働き始めて五日が経った。

 初日の頃は仕事に追われていた旦那様も、少しずつ落ち着きを取り戻し、以前より規則正しい生活を送れるようになりつつある。


 この五日間で私自身も、多少は信頼を得られたのだろう。

 最初の頃はメイドとしての仕事だけを行っていたけれど、最近では時折、仕事のことで意見を求められるようにもなってきた。


 日課になりつつあるマッサージも、最近では夜に行うようになっている。

 元々は休憩時間に行うつもりだったのだが、最初に試した際、そのまま旦那様が眠ってしまったため、今では旦那様の要望もあり、就寝前に旦那様の部屋で行うようになっていた。


 いくら専属メイドとはいえ、未婚の男性が異性を自室へ招き入れるのは問題なのではないだろうかと思わなくもないが、旦那様本人はあまり気にしていないらしい。

 それだけ信頼していただけているということなのだろう。

 なら、私が気にする必要もない。

 今日も私はいつものように朝から旦那様の部屋を掃除し、その後は屋敷内の仕事を片付けていく。

 そして昼になると、昼食を準備して執務室へと向かった。


 ――コンコン


「旦那様、ご昼食をお持ちしました。」

「ああ、ちょっと待ってくれ。」


 扉をノックして声をかけると、旦那様の返事が聞こえてくる。

 そしてしばらくすると扉が開き、旦那様自ら出迎えてくれた。


「入ってくれ。」

「では、失礼します。」


 私は一礼して部屋に入ると、そのまま昼食の乗った台車を机まで運ぶ。

 机の上は、初日に整理して以降、綺麗な状態が保たれていた。


「溜まっていた仕事も、随分減ってきましたね。」

「ああ。それも君が手伝ってくれたおかげだ。」

「いいえ、私は何もしていませんよ。」


 実際、私がやったことなど、資料の整理と、以前必要になるかもしれないと調べていた街や周辺地域の事を簡単に教えたくらいだ。

 それだけで仕事が片付いたというのなら、それは旦那様自身が頑張った結果だろう。


「フッ、そんなことはない。エリーが資料をまとめてくれたおかげで仕事も捗ったし、ここで先に暮らしていた君の意見は貴重だった。この地を任される身としては、大いに役に立ったよ。」


 そう言って、旦那様が真っ直ぐ見つめながら柔らかく微笑む。

 ……こうも真っ直ぐ褒められると、少し照れてしまう。

 ファンの間ではツンデレと呼ばれていたらしいけど、少なくとも私は、まだツンの部分を見た覚えがない。


 私は浮ついた気持ちを切り替え、旦那様のこっそり疲労度を確認した。


 ――疲労度、十八%。


 ……うんうん、健康で何よりだ。


「それに、セントロールでの問題は思った以上に少なくてな。おかげで仕事も想定よりもかなり少ない。」

「冒険者の方々が頑張ってくださっていますからね。」


 私たちが暮らす街『セントロール』は、公爵邸が置かれているだけあって規模も大きい。

 だが、その割には報告される問題が少なかった。

 その理由は、やはりギルドの存在が大きいのだろう。


 元々、この街では問題が起きればエトワール家が対応することが多かったため、以前のギルドはあまり活発ではなかったのだが、二年ほど前、お嬢様がアリサと共に冒険者登録へ行った際、ギルドに発破をかけたことがあったそうだ。


 その影響もあってか、今では以前とは比べものにならないほど活気づき、依頼にも積極的に取り組むようになっている。


 しかし、そう言いながら机へ昼食を並べていると、旦那様がどこか険しい表情を浮かべる。


「冒険者……か。エリーはギルドへ行ったことがあるのか?」

「え?はい、何度か。」


 私も一応、『ノゾミ』という名前で冒険者登録はしている。

 もっとも、素材集めや鍛錬のついでに依頼を受ける程度なので、ほとんど活動はしておらず、ランクもまだDである。


「冒険者は荒くれ者が多いと聞く。君のような人間が、あのような場所へ近づくべきではないだろう。」

「そんなことありませんよ。確かに横暴な方もいますけど、優しくていい人たちも沢山いますよ。」


 そう答えてみるものの、旦那様はどこか納得していない様子だった。

 そういえば、ゲームの設定でも、旦那様は最初あまり冒険者に良い印象を持っていなかったんだっけ?


 元々、エトワール家とギルドの仲があまり良くないこともあるのだろうが、旦那様自身、少し偏見が強いところも原因の一つなのだろう。


 ……よし。


 なら、ここはひとつ、この機会にギルドへの偏見をなくしてもらおう。


「では、せっかくですし、息抜きがてら午後からギルドへ行ってみませんか?」

「なに?」

「仕事も落ち着いてきたという事ですし、街の視察も兼ねて見て回りましょう。」

「……そうだな。領地を任されるなら、いずれ街を回る必要もある。この機会に見ておくのも悪くない。」


 そう提案すると、旦那様は渋々ながら承諾してくれた。

 そして午後。

 私たちは二人で街へと繰り出した。



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