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#15 四分帳尻のトリック

《03:50 地下配電室》


 御堂司はライトを咬え、ラックの背面に潜り込んでいた。ケーブルハーネスの束に規格外の光ファイバが一本だけ紛れ込み、端末へ伸びている。剥き出しのコネクタに“白い花”のシール。


 (院内ネットじゃない……玲奈が敷いた独立回線だ)


 ポータブル端末を直結すると、タイムコードが走った。**00:00→03:56** を四分単位で切り刻むタイムテーブル。そこに「帳尻=+240sec」と赤字。御堂の眉が跳ねた。


 「――四分前倒しで記録を上書きし、映像の犯行時刻とログの穴を一致させる。そうか、黒瀬は“誤差”を利用していたのか」


《03:54 ICU屋上リンク回線》


 タブレット越しに映し出された映像には、玲奈とあかりがヘリポート中央で対峙する姿。御堂はイヤホンで医療LANへ割り込む。「白石、聞こえるか? 四分帳尻の種が割れた!」


 あかりの声が風に揺れた。「どうすれば非常灯を取り戻せますか?」


 「黒瀬の端末は映像ログを4分ずらして書き換え、そこから遠隔遮断をトリガしている。逆に**+4分** を与えてやれば、帳尻が崩れて館内電源が通常系統へ戻るはずだ」


《03:56 屋上ヘリポート》


 玲奈が腕時計でカウントする。残り **00:04**。あかりは胸ポケットから造花ブローチを取り出し、花弁裏の刃で指を切った。滴る血を時計盤に落とす──


 「玲奈さん。あなたの“四分”を、私が貰います」


《03:57》


 あかりは時計のリューズを引き、針を**04:01**に進めた。LED盤の時刻がネットワークへ同期要求を送り、玲奈の独立回線に“+240sec” が流し込まれる。


《03:58 地下配電室》


 御堂の端末にエラー吐き出し。「時刻矛盾検出――」 直後、館内非常灯が一斉に消え、通常照明が戻った。四分帳尻が崩壊し、玲奈の遮断プログラムが停止。


《03:59 屋上》


 ライトが灯り、ヘリポートの赤ビーコンが戻る。玲奈は驚愕の目を見開いた。「なぜ戻るの……四分は私の世界だったのに」


 「私たちの命は、そっちの帳尻合わせじゃ決まらない!」


 あかりが造花を握り潰すと、針金の手錠が花屑とともに落ち、金属音を立てた。


《04:00》


 ドクターヘリがホバリング。保安員が屋上へ雪崩れ込み、御堂の声が拡声器で響く。「黒瀬玲奈、あなたを確保する。これ以上選別はさせない!」


 玲奈は一歩後退し、ヘリのローター風を浴びながら微笑んだ。「帳尻が合わない世界で――あなたは誰を救うの?」


 その問いを掻き消すように、夜明け前の東の空が青白く滲んだ。

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