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#14 夜が明ける前に

《03:32 ICU中央モニター室》


 救助隊からの「旧手術室クリア」の報告が入った直後、ICUの天井灯が二度瞬き、再び非常灯モードに沈んだ。白石あかりは血の滲むほど手を握り込み、モニターへ駆け寄る。

 ベッド4――輸血で失血した女性患者の波形が、まるで誰かがつまみを捻ったように乱高下し始める。


 御堂師長は応急処置室へ視線を飛ばした。「霧島は?」

 「拘束室から移送準備中、鎮静をかけているだけです」保安員の無線が応える。

 御堂は歯噛みした。「黒瀬が霧島を“生かすか殺すか”のカードにした!」


 あかりは除細動パドルを準備しながら、胸ポケットの造花ブローチを握った。花弁の裏に“つづく”と刻んだ刃――玲奈が告げた“選別”の宣戦布告だ。


 「二〇〇ジュール……放電!」


 閃光とともに女性患者の身体が跳ねる。が、隣のベッド6――心筋炎の少年が同時に警報を鳴らし始めた。波形がフラットへ傾く。玲奈はまた二択を突きつけている。


《03:37 ICU前廊下》


 ストレッチャのタイヤが軋みながら進む。鎮静剤で半覚醒の霧島拓真が白衣ごと拘束されている。あかりは走って追いつき、ストレッチャの側壁を叩いた。

 「先生を手術室じゃなく X 線室へ! ICU 手前で止めないで!」

 搬送要員は戸惑いながらも頷く。あかりは担架脇の拘束具に絡むブローチをそっと外した。花弁の間に白いメモ――《あと一人》と赤インクで。


 (玲奈さん、誰を“あと一人”に数えているの? 私? 霧島先生?)


《03:40 地下配電室前》


 御堂と保安員チームが配電室の扉をこじ開ける。内部は空。壁面に貼られたモニターには ICU のライブ映像とタイマーが映っていた。残り **04:00**――四分刻みで減算するカウントダウン。


 御堂が舌打ち。「全館の非常系統を四分ごとに切り替えるトリガだ。次で ICU が完全ブラックアウトになる」


《03:42 ICU中央モニター室》


 非常灯のみの薄暗い病室。あかりは少年の胸骨圧迫を交代しつつ、PHS を耳に当てる。「玲奈さん……お願い、灯りを返して」

 応答はない。ただ PHS の画面に通知――**位置情報:屋上ヘリポート** と点滅した。 


 (屋上? “夜が終わる前に”って、夜明けをヘリポートで?)


《03:46 屋上搬入口》


 雨上がりの夜風が吹き抜ける。ヘリポートには非常灯が行灯のように浮かび、中央に玲奈が立っていた。白衣は風に靡き、袖口にはミクロな血痕。

 あかりと御堂が駆け上がるのを見て、玲奈は笑う。「四分後、この病院の命は私ひとりが握る。でも、あなたがここに来た――なら、選び直せます」


 背後でヘリのローター音が遠くに轟く。夜明け前、応援搬送のドクターヘリが接近する時刻だ。


 「この病院を“救う”のは、あなたか私か。あと四分で決めましょう、白石さん」


 カウントダウンは **03:46:00** を指し、数字が真紅に染まった。あかりは息を飲み、造花を握り締める。手のひらに刃が食い込んで、温かい血を呼び覚ました。

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