小さな訪問者
『 うわ~~~~~~~~~~~!!!!!!! 』
私の驚愕に比例するかのように、けっこう大きな声で叫んでしまった。
階下の住民や近所の人たちは、なんて思うだろう?
いや、そんな他人のことなど どうでもいいぐらいのショック。
目の前に佇み、私を見据える少女の存在。
まるで水兵さんのような学校指定の可愛い夏用のセーラー服。
少女の被っている麦藁帽は縁を紺の生地でトリミングされ
クラウンの下端に巻かれた同じ紺色の帯布が可愛らしく
ブリムからはみ出している。
あれは気に入っていたので、妙に憶えている。
それに見間違えることなど無い、あの
大きな瞳に、帽子から溢れ出た漆黒のセミロングの黒髪。
目の前にいるのは、間違えなく 昔のワタシだ。
『 ねぇ・・・ 』
( しゃ、しゃべった!! )
『 はぃ?! 』
『 封筒・・・見てくれた? 』
( え? 封筒って?
あの封筒の一万円札って・・・もしかして? )
『 う、うん・・・。 』
『 良かった。 ・・・・・・元気出た? 』
『 ちょっと、は・・・ね。 』
( 少し嘘を付いた。 結構嬉しい、うれしいに決まっている )
『 ちょっと、かぁ・・・残念。 』
( あ、落ち込んじゃった? ゴメンね。
ホントは嬉しいよ! でも、
でも・・・ね )
そんなことより
私の目の前にいる人物は・・・ほんとうに・・・
『 ねぇ・・・ 』
『 なに? 』
『 ねぇ、あなた。 あなたは・・・・・わたし、なの? 』
『 ・・・・・・。 自分の顔、忘れちゃったの? 』
『 いや、そうじゃないけど・・・さ 』
( やっぱり、小さい頃のワタシ、なんだ・・・。 )
いったい・・・なんなんだ、これ?
『 ねぇ。 』
『 はい!? 』
『 私もパイが食べたいな・・・ 』
『 パイ? 』
『 うん、お腹空いた・・・よ。 』
これって、何なの?
これって、どういう仕組み?
そもそも現実なの!?
なんだか、もう・・・夢を見ているみたい。
『 ねぇ、連れてって。 』
私は少女のワタシ?に手を引かれ、
カギも閉めずに階下へと導かれた。
私の右手を握る小さな、その手は・・・その、
とても温かかった。
~つづく~




