ねずみ小僧
ねずみ小僧?
私のアパートには、幽霊でも座敷童でもなく
ねずみ小僧がいる。
まるで小学生の女の子が好みそうな
可愛らしいクマのイラストが入った封筒で、
おカネを入れてくれる人が現れた?
そんなワケ、ないか・・・。
でも、これは一体・・・なに?
いたずら?
それとも、ニセ札?
アパート廊下を薄暗く照らす外灯に少しかざしてみる。
透かし・・・
福沢さんが二人、確認できる。
やっぱりホンモノか・・・
「 ルルルルル 」
( あ、電話。 とりあえず、なかに入るか )
私は自分の部屋のカギを開け、玄関口で
慌ててバッグから青色のガラケーを取り出す。
( なんだ、母さんからか・・・ )
液晶画面の表示に少しゲンナリしながらも、通話ボタンを押した。
『 あ、もしもし 』
『 ん、なに? 』
『 あ、うん。 』
『 何かあったの? 夜に掛けてくるなんて、珍しいじゃん。 』
『 いや、実はね・・・
ちょっと、あなたのことが気になって・・・ 』
『 え? なんで? 』
『 なんで・・・って、ねぇ。 』
( ねぇ、と言われても、こっちにはちっともわからないよ )
『 なんかテレビでも観てたの? 』
『 いや、そういう訳じゃないんだけど・・・ 』
『 まぁ、親が子供に電話するのに理由なんかいらないけど・・・
なんか、気になるじゃん。 』
『 あなた、大人ね。 』
『 そう? そんなこと無いよ。 』
『 いや、ちょっと・・・昔のあなたのことを思い出しちゃって
つい、つい・・・ 』
『 ついつい、電話してきた、と? 』
『 まぁ、そんな感じよ。 元気? 』
『 うん。 元気は元気だけど・・・30過ぎて独身で・・・
何かと心配かけてしまって、ゴメンナサイ。 』
『 彼氏とか・・・? 』
『 いません。 欲しいけど・・・ 』
『 そう・・・。 あ、ゴメンね。 立ち入ったこと聞いて・・・ 』
『 いいよ。 ( あれ? ) 』
なんか、階段を昇ってくる足音が聞こえてくる。
( こんな時間に、だれ? )
『 あ、ごめんね、もう切るね。 お父さんにもよろしく言っておいて。 』
私は慌てて電話を切り、薄い玄関戸に自分の左耳をくっ付けて
外の音に耳を澄ました。
カタン、カタン。
タッ、タッ、タッ。
( うわーー。 結構ハッキリと聞こえる。 誰だ? )
タッ、タッ、タッ・・・・。
( 私の部屋に向かっているよね? なんか、怖いよ~~、でも。 )
こんな夜中に・・・
しかも、独身女性の部屋に・・・
チカン? ストーカー? 新聞勧誘? 大家さん?
それとも・・・・ねずみ小僧?
なんでもいいや、開ければわかるさ!!!
私は意を決して、思い切りドアを開けて相手を確認する。
そう、相手が驚くほどの勢いで・・・
でも、驚いたのは自分の方だった。
それも腰が抜けるくらいの衝撃。
あとにも先にも、あんなに驚いたことなんて無い。
だって・・・・・
そこに立っていたのは、
制服姿で10歳くらいの・・・
自分そっくりの女の子だったから・・・
~つづく~




