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ハルニレの木。





あね。 


おねえさん。 


おねえちゃん。



そう、わたしも お姉ちゃんだった。



すっかり実の弟のことなんか

忘れてしまっていたけど・・・。 

まぁ、お互い成人しているし・・・・。


それは、いいとして・・・。



いまは、もう一人の妹みたいな・・・・・あの、こ。


あの子はハルニレの木の下で、

わたしを待っていてくれてるのかしら?



彼らと別れ、

わたしは右側のすべてを覆っている河川敷の

深い緑の草原を横目に

ゆっくりと、そして少し緊張しながら歩いていく。


ほどなく、右前方に

大きな木が視界に入ってくる。



( あれが、ハルニレの木・・・・・。 )



大草原に、少し大きな木がひとつ

ポツンと存在しているのが見える。



前方の左側には

休憩所のような2階建ての建物がある。


わたしは、その休憩所を背に

いま一度、大きく深呼吸をし、

辺りの様子を くまなく確認してみる。



堤防の小高さ故か、少し気持ち良い風が吹き抜けていく。


休憩所の駐車スペースには車は一台も止まっておらず、

ハルニレの木の方を凝視してみても、何も動くモノは確認できない。



誰も、いない・・・のかな?


でも・・・。


わたしは、なにか吸い寄せられるように

堤防の丘を下り、気が付くと無我夢中で走り出していた。

木へと通じる草原の小道は、約300mほどの道のりだ。


途中、

ペットボトルを落としそうになりながら・・・、

もらった麦藁帽子を振り落としそうになりながら、

無心に

ある一点を見つめながら、わたしは駆けていく。


たくさん走り、

息があがり

ぜぃぜぃと呼吸を乱しながら、

彼女の姿を、

目的の木の辺りを探す。



そして、

ゆっくりと歩幅を狭め

私の前に立ち尽くす 巨大な大木に目を奪われる。



( こ、これが・・・ハルニレの木・・・・。 )



ほんとだ。 


2本の木が1本の木のように・・・

何本も太い幹が枝分かれ、

扇を広げたように左右に伸びる枝葉が、

すごく美しく 存在感がある。



しかし・・・・・。



彼女は、いない。


どこにも、いない・・・・


見渡す限り、何処にも・・・いない。



彼女は、この木にはいなかった。



わたしは、その事実に

身体を大の字に広げて、その場に仰向けで倒れこんだ。



( な、なんで!? ここじゃ、ないの? )



もう、わかんない。


わかんないよ。


もう・・・・なにも、考えられない。




『 うぅ・・・・ 』

『 ぐっ・・・・ 』


『 うっ・・・・ 』


『 うわぁ~~~~~~~~~~~~ん。

 あぁ~~~~~ぁ、あ~~~~~ぅ、うぅ。 』



わたしは、感情を押さえることができず

子供ように声を荒げ、大粒の涙を流し

号泣してしまった。










・・・・・。




どれくらいの時間が経ったのだろう・・・。



わたしは気が付くと、

寝不足と疲労、そして

あの子のいないショック・・・いや、淋しさからか・・・

いつの間にか泣き疲れ、眠ってしまっていた。



身体を起こさず

寝そべったままの私の目には

とても清らかな青い空が果てしなく映っている。

それとは相反する 自分の気持ちに

また涙腺が緩んでくる。



わたしは、身体を起こし

近くに投げ出されたペットボトルを手に取り

1口、2口と

落ち着きを取り戻すように

水分を体内に取り込んでいく。


そして

再度確認するように辺りを見渡してみる。


とても静かでゆっくりな風が、草原の緑を音も無く 小さく揺らしている。

まるで

世界に自分一人が取り残されたかのように

辺りは物音もせず、不気味なくらいの静けさに覆われている。



わたしは、ゆっくりと立ち上がり

ハルニレの木の奥の方、河川の方へと、

なにか引き寄せられるように歩き始めた。


それは ゆっくりと、

まるでゾンビのように・・・


生きる屍のように歩き始めた。







~つづく~

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