袖触れ合うも
よく見ると、
この場所から少し過ぎた道路の反対車線にハザードランプを付けた
黒色で車高の低そうな車が停車しているのが確認できる。
反対車線・・・
だから、気づかなかったのか・・・。
それにしても・・・。
『 なんか、困ってんじゃないの? 』
『 困ってんのはこっちだよ。 』
『 聞いただけじゃん、怒んないでよ。 』
『 怒ってねぇーよ。 』
2人の言い合いの声に少し恐怖しながら
2人の雰囲気がこれ以上険悪にならないようにと、
わたしは身体を小さくし、オドオドと目線を合わせずに
なんとか説明の言葉を口にし始めた。
『 釣銭切れランプを確認せずに、購入してしまい
お釣りが出ず・・・どうしようか、悩んでいたところでして・・・ 』
『 ほら。 やっぱ、困ってたんじゃん。 』
『 うるせーよ。 』
『 わたしが合ってたんだろ? 』
『 だから、何だよ。 』
わたしは、慌てて割って入る。
『 あ~~、すみません。 わたしのせいで、喧嘩しないでください。 』
『 してね~~よ。 』
『 でも・・・。 あ、そうだ。
よかったら・・・どうぞ。 わたしは2本だけ買いたかったので・・・ 』
わたしは2本のペットボトルを彼らに見えるように、少し掲げた。
『 え、いいの? ラッキー♪ 』
『 おい。 』
『 だって、おごってくれるって言ってるんだし・・・もらおうよ!
お茶と・・・ガシャ・・・ドクターペッパー・・・ガシャ、
ありがと、お姉さん。 』
物怖じしない大胆な行動を取ったあと、今風の彼女さん(?)は
私に ぺこりと頭を下げた。
『 おい! 』
その行動に彼氏(?)さんが声を上げる。
しかし、怒る彼氏さんを無視しながら
彼女さんは彼氏さんの分の品定めを始め、
『 そして、あんたは・・・アクエリアスと・・・・・コーラのライト! 』
ガシャ、ガシャ。
『 おぃ・・・、そこは、普通のコーラ・・・・・だろ。 』
『 ぶっ。 』
『 わ、笑うな!! 』
『 はい、すみません。 じゃあ、ふつーのコーラ、っと 』
ガシャ。
『 これで、もう買えないんじゃない? ありがと、お姉さん!! 』
『 ・・・・・ぁ・・りがとぅ。 』
『 い、いいえ!! ・・・・良かった。 』
( 何かよくわかんないけど、丸く収まったのかな?
あ~~~ほんと良かった、こわかったぁ~~~~。 )
『 じゃあ、うちらは行くけど・・・お姉さんは何処までさ? 』
『 私は、ハルニレの木を・・・ 』
『 え? なら、すぐ そこじゃん。 』
『 え、そうなの? 』
『 あの橋の手前、堤防の遊歩道を歩いていけば、すぐだって。 』
そう言うと、彼女は腰に手を当て、
まるで銭湯で牛乳を飲み干す男性(?)ように
ドクターペッパーをグビグビと飲み始めた。
『 あ、ありがとう。 』
私は、そんな可愛い仕草の彼女さんに頭を下げる。
すると、ほどなく隣りから
ビックリするほどの柔らかい声が聞こえてきた。
『 ここから1キロも無いけど・・・・
農家のトラックの往来とか多いから、気を付けて行きな 』
『 あ、ありがとう。 ( 意外と・・ )優しいんだね。 』
『 ・・・・・ぅ。 』
『 さっきはゴメンね。 この人さ、実は今日・・・。 』
『 おい、行くぞ。 』
『 待ってよ。 あれ、あんたのスマホ鳴ってるよ。 』
『 ん? あっ、タクからだ・・・。 』
『 なになに、どうしたって・・・? 』
二人身を寄せ、スマホの画面を見ながら
私から離れていく。
( 良かった、普通の日常に戻っていく。 )
最初は どうなることかと思ったけど、
まぁ・・・道も教えてもらったし、
結局いい子たちだった・・・のかな?
わたしは 去り行く彼らに軽く頭を下げ
教えてもらった橋の手前へと、
後戻りの歩を進めたところ・・・
背後から、私を呼び止める
とても大きな声が届いた。
『 おい、あんた!!! 』
でも、
怒っている声では、無かった。
わたしはおそるおそる、ゆっくりと振り返ってみる。
( 今度は、なんだろう? )
『 これ!!! あんた だよな!!!? 』
彼氏さんが私に向けて、スマホの画面を突き出している。
わたしは その画面を確認すると
バカみたいに目を丸くし、ほんと目を疑った。
なんて偶然、いや・・・・・世間は狭い。
狭すぎて、ほんと恥ずかしいくらいだ。
だって、そこには
列車で一緒だった少年に向けた
わたしのありったけの笑顔。
そう
ピースサインを出して笑っている わたしが
映し出されていたのだから・・・。
~つづく~




