鈍行列車に揺られて
『 はぁ、はぁ、はぁ・・・・の、乗りまーーーーす!!! 』
『 お、お客さん・・・ 』
『 の、乗りまーーーーす! 』
『 は、早くしてください!! 』
『 す、すみませーーーーん! 』
私は全力疾走で駆けながら、かろうじて?
いや、運転手さんに少し呆れられながら
時間ギリギリで、一両編成の鈍行列車に飛び乗った。
『 せ、せーーーふっ!! 』
『 お客さん・・・ 』
『 あ、アウト? 』
『 ・・・・・一応、乗車券を見せてください。 』
『 ご、ごめんなさい。 はい。 』
『 豊頃まで、ね? はい、お返しします。 』
『 ほ、ほんとにすみませーーーーん。 』
『 列車は定刻通りの運行です。 次は無いですよ。 』
『 はぃ。 』
『 えぇーーー・・・・・。 帯広発浦幌行、出発いたします。 』
ガダッ、ッタン。
列車がゆっくりと動き出し、その揺れにそって再度運転手に頭を下げる。
そして、ゆっくりと車内に目を向けると
わたしは、こちらを覗き込んでいるおばぁちゃん、そして男子学生と 目があった。
私以外の乗客は2人。
先に乗車して座席に腰を下ろしている2人の失笑を買いながら、
わたしは恥ずかしそうに近くの席に腰を下ろした。
そして、
隣りに温かい2つの豚丼定食が入った袋を優しく置いた。
散々走ってきたので、中がどうなっているかは 窺い知れないが・・・・。
そう、結局のところ買ってしまった。
少し高い気がしたが、
あの子の笑顔を見れるなら、と思い購入した。
あの売り子さんの顔は、会計時に顔を正面から見ても
思い出せなかった。
もちろん、むこうから必要以上の声を掛けられることも無かった。
( ただの、気のせいだった・・・のか、なぁ? うん。 )
呼吸が整い、少し余裕が出てきて
ゆっくりと過ぎ行く景色をボーっと眺める。
6分後、到着した札内駅では客の乗り降りも無く、
稲士別駅を通過するダイヤに沿って11分後、幕別駅に到着。
その後、利別駅・池田駅を経由して
豊頃駅には7時23分着。
ちょうど1時間程かかるようだった。
( はぁーーーー、なんか汽車にも なんとか間に合って、
景色も大自然の緑が続いてゆくだけ・・・
あの子と食べる豚丼も買ったし・・・・・、なんか 安心したのかなぁ
眠くなってきた・・・・。)
カタン、コトン。 ガタン、ゴトン。 ガダン、ゴドン。
なんか心地良い、リズム。
こんな気持ち良さのなか、わたしの人生も進んでいけばいいのに・・・。
カタン、コトン。
ゆっくりと瞼を閉じていく。
カタン、ゴトン。
まるで、子守唄のようだ。
ガタン、ゴトン。
気持ちの良い夢の中に、誘われそう・・・・。
ガダンッガッ、ッギィーーーーーーーーン、ギィーーーーーーーー。
えっ?
( な、なにっ? )
わたしは目を見開き、前屈みになる身体を押さえながら
周りの景色が急に雑音をたてながら止まり行く様子を確認する。
( なっ、急ブレーキ?)
『 急ブレーキに付き、身を屈め、何かにお掴まりくださ・・・・。 』
ガガガガ、ギギギギギィギーーーーーーーーーー。
『 あ、あわわわ・・・・・。 』
わたしの開いた口から、言葉にならない声が溢れだす。
これは、ひょっとして人身事故?
それとも、脱線事故?
それとも・・・・?
『 あっ!!!! 』
思い出した。
あの女性・・・、豚丼の売り子の あの女性!!
あの人は、
私にバナナミルクパイを薦めた・・・・あの店員と、
同じ人だ!!!
ギッギィーーーーーーーー。
未だ止まらない緊迫した車内の中で、
そんなどうでもいいことを・・・
いや、とても重要かもしれない、なぞなぞのようなピースを・・・
わたしは、今更ながら やっと思い出した。
~つづく~




