なぞなど
その個人タクシーの運転手さんの話によると、昨夜
帯広から音別という町までの長距離客を乗せた帰りに
どうも、あの巴菜さんのお店の看板の所で
私が立ち止っているのを目撃したらしい。
ちなみに、夜間の長距離客のことを「オバケ」というらしい。
『 私も、オバケに見えませんでした? 』
『 いや~、一瞬幽霊に見えたけどね・・・でも、
コンビニの袋を持っていたから、違うなと思ったよ。
私もこの仕事は長いが、あんな場所で姫客拾うと後が怖そうだから
やっぱ蹴っ飛ばすかなぁ~ 』
運転手さんは、後半は独り言のような呟きになっていた。
『( 姫客? 蹴っ飛ばす? タクシー用語かしら? ) あぁ、そうですよね 』
あ、そうだ!!
道路の迂回路って、どうだったんだろ?
『 あの、途中で工事による道路の迂回路とかありませんでした? 』
『 迂回路? 本工事は無かったかな・・・。 』
( 本工事? )
『 あぁ、そうですか・・・。 』
私以外、知る人は無し・・・か。
あの銃撃戦・・・
ほんと、もう・・・ぜんぶ、幻のようだ・・・。
『 ところで、あんた何処に行くね? 』
『 えっ、 私ですか? 』
『 あぁ、あんた・・・ちょっと変わってるからさ・・・ 』
『 か、変わってる? 』
『 あぁ、言い方は悪いが、なんかヤバそうだよ 』
『 ・・・・・。 』
『 なんか、目的があるなら明確にした方がいい。
若い女の人がフラフラしてるのは、あまり感心できないなぁ・・・
アブナイよ。 』
なっ! なん!! なんだ!!! しっ、失礼な!!!!
的を得ているだけ、他人で見ず知らずの人に言われると
無性に腹が立ってくる。
『 くっ・・・・・。 』
わたしは、どう説明して
自分の正当性を述べようか、考えてみたが
それは少し見当違いだった。
そう、
わたしは、いま彷徨っている。
いま、流れが少し止まり、何処へ吹かれようとしているか・・・
自分でも解からない。
幼き自分の元へと、早く向かいたい。
でも、彼女との再会が正しき道か?
しかも、あのなぞなぞのような言葉をまだ理解していない。
いま、まだ少しの おカネがある。
親に電話を掛け、助けを求めることもできる。
でも・・・。
『 むかし、ねぇ・・・・。 』
『 ・・・・・。 』
『 むかし、こんな客がいたんだよ。
あんたくらいの年齢で女性の客だ。
その客は、自宅からタクシーを呼んでパチンコ遊びさ。
私はその客を降ろしてから、数分流しているとパチンコ屋から呼び出しさ。
その同じ客は帰るのかと思ったが、違うんだ。
無人融資の店舗に向かわせて・・・また、パチンコ屋に戻る。
まぁ、それを4回も繰り返すんだよ。
あれには、参ったよ。 』
『 ・・・・・。 』
『 あんたの目は澄んでいるね。 』
『 えっ? 』
『 あんたが、その客と感じが似ているとは言わないけど・・・
なんかヤバそうな女性には、この話をするようにしているんだ。 』
私は見ず知らずのタクシーの運転手にまで、
心配されている。
自分が思っているより、人にはヤバく映っているのか?
吉川さんも・・・・心配していたよね・・・。
『 あ、あの・・・。 』
『 ん? 』
『 帯広駅って、もう開いていますか? 』
『 開いてるよ。 なに、駅行くね? 』
『 取りあえず・・・。 』
『 なに? 行く当て無しかい? 』
『 ば、場所が・・・解からないんです。 だから、取りあえず駅へ・・・ 』
『 なに、何処さ? 』
『 え、その・・・木、その大きな木を探しているんですけど・・・ 』
『 木? 木って、なんか由緒ある木かい? 』
『 由緒があるかは解からないんですけど、大きな木・・・
遠くから見ると1本の木、近くから見ると2本の木・・・ 』
『 はっはっはっ!! 』
『 え? 』
『 それ、ハルニレの木だよ。 』
『 ハルニレの木? 』
『 うん、間違いない。 』
運転手さんの力強い頷きに、
私は初めて運転手さんに対して、笑顔を向けたような気がした。
~つづく~




