夜明けのコーヒー
また、一人になってしまった。
いや、違う。
一人なのは、あの子の方だ。
自販機のホットコーヒーを飲みながら、
近くにあるであろう帯広駅を目指し、
取りあえず歩き出す。
あの子は、木の下にいると言っていた。
遠くから見ると1本の木。
近くで見ると、2本の木。
いったい、どういう意味だろう。
何かの名所かしら?
それとも、なぞなぞ?
コーヒーの空き缶をコンビニのゴミ箱に捨て
すぐに店内へと入らずに、少し考える。
あの子に、なんて声を掛けようかしら・・・?
いや、あの子って・・・本当は いったい 何者?
もし、再会できたとして・・・いつまで、こんな関係が続くの?
さっきの別れ・・・。
吉川さんや、巴菜さん、爺やさん・・・そして、まつりちゃん。
いつかは、別れが訪れるんだろうし・・・
でも・・・。
あ~~~~。 考えがまとまらない。
『 にゃ~~~ 』
『 えっ? 』
わたしは、その小さな泣き声に耳を疑った。
瞬時に自分の足元を見ると、クロネコが一匹
私の足に纏わりつくように身体を揺らしている。
( こ、これは・・・・あの時の、コンビニのクロネコ? )
『 まさか、ね・・・? 』
『 おい、あんた! 』
『 ふぇ!!! しゃ、しゃべった!!!!? 』
『 なに言ってんだぁ! こっちだよ! 』
『 え? 』
私はクロネコから声を掛けられたと思って、びっくりしたが
実際は そうではなかった。
私は声のする方に視線を伸ばしてみると
コンビニ前の駐車場に タクシーが一台。 その隣りに
少し禿上がった、タクシー運転手の制服を着た男性が一人。
缶コーヒーとタバコを持ち立っている。
そして、その彼の視線は私に向けられている。
( 声を掛けたのは、あの人? )
『 あんたさ、もしかして・・・夜中、国道を歩いていた人かい? 』
『 え? 』
『 豊頃・・・いや、幕別の手前だったかなぁ 』
『 あ、あの・・・ 』
『 いや~~~、あんたに似た人を昨晩見かけたもんでね。 』
『 はぁ・・・。 』
『 いやぁ、その日は久々の 「 オバケ 」 でね・・・ラッキーだったのさ 』
『 おばけ? 』
『 あぁ、音別までの 「 オバケ 」 でね。
その帰り道で、あんたに似た人を見かけて・・・ 』
私は露骨に怪訝そうな顔を向けたんだと思う。
そのタクシー運転手は、すぐに 詫びを入れながら
くわしい説明をし始めた。
~つづく~




