夢の かくれんぼ
『 ねぇ、こっちこっち。 』
『 待ってよ。 はぁ、はぁ。 』
『 ねぇ、早く早く。 もう、大人は体力無いね。 』
『 うるさい。 今日はあんまり寝てないから、ちょっと・・・ 』
『 ははは。 』
草原の中を私は、小さなわたしを追いかけていく。
風のように駆け抜けていく小さな私。
小さな身体が、より小さなモノになっていく。
『 ねぇ、ホントに待ってよ! 』
『 やだ~~~~。 』
私と彼女の距離は、段々と離れていく。
もう、追いつけそうもないくらいに・・・。
『 ねぇ、ねぇってば! 待って! 待ってよ!! 』
『 ・・・・・お姉ちゃんのバカ! 』
『 え? 』
『 油断していると、大切なモノを失うよ。 』
『 いったい、何の話よ? 』
( 何の話? でも、追いつけないこの状況は ウサギとカメの話か? )
あ~~~、もう走れない・・・。
わたしの足は縺れ、小さな草丈が絡みつくようだし、
息が・・・息が続かない。
その場に座り込んでしまった私に
小さなワタシの声だけが届く。
『 わたしは、病院には いないよ。 』
『 え、なんでよ? じゃあ、何処にいるのよ? 』
『 教えない。 』
『 なんで? 』
『 だって、変な人と一緒だもん。 その人には、あまり会いたくない。 』
『 な、何言ってるの? 』
『 バカ! 』
『 あ、またバカって言ったな。 ・・・そりゃあ、
寄り道して悪かったな、とは思ってるけどさ・・・
あ、グミでも食べる? 』
『 ばぁ~~~~~か!!! 』
『 そ、そんな怒んないでよ。 』
私は靴を脱ぎ、裸足になって辺りを見渡してみる。
小さな私の姿など、もう何処にも見当たらない。
『 ちょっと、何処まで行っちゃったのよ? 』
『 私に会いたい? 』
『 そ、そりゃ、もちろんよ。 当たり前じゃない! 』
『 じゃあ、クイズを出してあげる。 』
『 クイズ? 』
『 うん。 正解したら、また会えるよ。 』
『 ちょ、ちょっと! 何よ、それ!? 』
『 いっくよ~~~~!! 』
『 ちょっと!! 』
『 わたしね。 木の下で待ってるから。 大きな木の下で・・・。 』
『 木の下? なにそれ? それって、ほんとにクイズ? 』
『 じゃあね。 』
『 え、ちょっと・・・もう少しヒント。 ヒントを頂戴! 』
『 ヒント? しょうがないなぁ・・・ 』
『 お願い・・・します。 』
『 うん~~とね。 遠くからだと一つに見えるけど、
近くで見ると実は2本の木から成ってる・・・ 』
『 な、なにそれ? なぞなぞ? 』
『 お姉ちゃん、早くよ。 早く来てね。 待ってるから。 』
『 あ、ちょっと・・・。 』
トントン。
『 御客様、御着きになりました。 』
『 ふぇ? 』
私は後部座席から身体を起こし目を擦りながら、周囲の様子を見渡してみる。
ここは・・・・・。
( あっ!!! )
私が運転してきた吉川さんの車が見える。
そして、中には誰も乗っていないように見える。
病院の入り口付近を見やると
巴菜さんが玄関ドアを開け、少し小走りに戻ってくるのが見えた。
車中に戻るなり、
私の隣りに陣取り 勢いよく私に声を掛ける。
『 あなたの言う吉川さんって人、
いま処置室で点滴を打ってもらって眠っているわ。 もう大丈夫よ。 』
『 よ、よかったぁ・・・・。 』
『 でも・・・・・ね。 』
『 でも? 』
『 私の会いたかった人は、もういなかったなぁ。 』
『 え? 』
『 小さくて、とても特別な存在。 』
そう言うと、
一瞬、巴菜さんの目が薄ら恐ろしく光った気がした。
私は瞬時に小さなワタシを思い浮かべ
咄嗟に目を逸らすと、
巴菜さんは、悪戯っぽく
『 冗談よ 』 と、短く笑った。
~つづく~




