ピローソング
心地良い揺れを感じながら、
私は薄っすら開けた目から青みがかった景色を確認する。
牛・・・牛・・・馬・・・牛・・・人・・・牛・・・牛・・・。
十勝の早朝の景色。
( あ・・・、車に乗ってるんだ・・・わたし・・・。 )
後部座席でシートベルトに包まれながら、前方をみやる。
運転席には爺やさん、助手席には巴菜さんの頭が見える。
『 爺や、眠くない? 』
『 私は平気です。 御嬢様は少しでも御眠りになられた方が・・・ 』
『 私ね、全然眠くない! 』
『 ほほ・・・。 御酒、益々強くなりましたね。 』
『 私、日本酒って好きよ。 何杯でもイケちゃう。 』
『 末恐ろしいですね。 』
『 なに、笑ってんのよ。 』
『 いえ、失礼いたしました。 』
『 楽しかったわね。 爺やも楽しかったでしょ? 』
『 はい。 お嬢様の歌は久しぶりに聴きましたから・・・ 』
『 ぷっ、何それ? 』
『 お客様に負けず劣らずの美声でした。 もっと、拝聴したかったです。 』
『 もう、何言ってるの? 』
『 すみません。 少し口が過ぎました。 』
『 でも・・・、別れるのが惜しいわ。 』
『 はい。 』
『 〇〇病院って、駅のすぐそば? 』
『 はい。 線路沿いです。 もう、30分も掛からず着きます。 』
『 はぁ~~~。 』
『 帰りにカラオケボックスでも御寄りになられますか? 』
『 うん! わたし、あれ歌いたい。 〇ンウェイ・ジェネレーション!!
それに、爺やの歌も聴きたいし、ねっ!
あ、あれ! 一緒に歌ってあげる。 星〇に両手を。 』
『 これはこれは、また古い曲を・・・嬉しいですけど 困りましたね。 』
『 何言ってるの?
日曜昼の素人カラオケ番組にも出たことあるくせに・・・。 』
『 御嬢様、あれは予選に出ただけです。 』
心地良い睡魔と気持ちの良い会話が
私を包んでいる。
酔いつぶれた私は 彼女の計らいで宿泊を提案されたが、
朝までに吉川さんと小さな私のいる病院へ向かわないと
収拾が付かなくなる。
そう思い、彼女のとても有り難い配慮に断りを入れた。
すると、巴菜さんは病院まで送ると言い出し
爺やさんに車を運転してもらい、一路 帯広へ向かっている。
わたし、本当に何をやっているんだろう・・・
巴菜さんと爺やさんに借りができてしまった・・・
返す当ても無いのに・・・全く・・・
『 フフンフ・・・・に 〇手をあげて~~~~~♪ 』
鼻歌交じりのメロディに歌詞が乗り、歌声が徐々に
2つになっていく。
巴菜さんと、爺やさんの気持ちの良い歌声。
わたしの父も好きだった古いデュエット・ソング。
わたしも起きて、歌声に交じりたかったが、
二人の歌声を聞いていたい気持ちが上回り
Zzzzzz・・・・・
私は邪魔にならない程度の寝息をたてた。
そして、
心地良い車の揺れ、酔いの気持ち良さ または
昨夜からの緊張が途切れたのか?
再び、心地良い歌声とともに 夢の中へといざなわれた。
~つづく~




