私の知らない世界
『 はぁ・・・はぁ、はぁ・・・・ぁ。 』
私は少し息を切らしながら、ゆっくりと登っていく。
途中から傾斜がワンランク上がったようで、
木で出来た簡易な手摺をつたいながら、登っていく。
( こ、これじゃ・・・まるで、登山じゃない!? )
恐怖よりも疲労が勝ってゆき、
額に汗も滲んでくる。
私は しばし、足を止め
ペットボトルの お茶をグビグビと飲みながら
辺りを見渡してみる。
うっすらと、私の上部に見える 鳥居のような門構えに
少し、ギョッとする。
( いったい、何屋さん?
っていうか、店の灯りが全然見えないんだけど・・・ )
私は少し不安になりながらも、
薄暗い頂上部をめざし、ゆっくりと 再度歩きはじめる。
国道にある外灯や疎らな民家の灯りが見え始め、
結構高くまで登ったんだなぁ、と実感し、
ちょっとした充足感と共に虚無感も感じ始めてきた。
( 本当に、わたし・・・何やってんだろう? )
頂上まで数段の所で、私は足を止めて
辺りの様子を窺う。
木々の黒く薄暗い景色に、すべてを窺い知ることは困難だったが、
小さな神社もしくは蕎麦屋さんのような建物の行燈が
一際目立って灯っていて、
夏の虫のように 自然と その光に吸い寄せられた。
ゆっくりと歩みを進めていくと、
『 ドッワァ~~~ンッドッワァ~~~ンッ、ドッワァ~~~ンッ。 』
先程より大きなドラの音が3回、私の耳に響いた。
『 ひゃ~~~~~!! 』
私は その場で蹲るように耳を押さえていると
私の叫び声が思ったほど大きかったのか?
小さな建物の入り口から
初老の男性が、私の様子を窺うように懐中電灯の眩い光を私に向けた。
『 お客さんかい? 』
『 い、いえ・・・ちょっと・・・ 』
『 まぁ、こんな時間だ。 取りあえず、中に お入んなさい。 』
その男性は、自身の懐中電灯の灯りを消し、私に手招きをする。
私は立ち上がり、少し小走りに その男性の元へと歩み寄る。
男性は60代ぐらいで
立派な髭が特徴の、メガネを掛けた老紳士にみえた。
『 あ、あの・・・ここは、何屋さんですか? 』
『 ここは、俗にいう拝み屋さんだよ。 』
『 ・・・おがみやさん? 』
『 祈祷師は、御存知ですか? 』
『 ・・・霊媒師とか霊能力者とか、ですか? 』
『 まぁ、そんな感じです。 』
『 宗教とは、違うんですか? 』
『 まぁ、信仰心だけでは解決できない問題を解決するところです。 』
とても落ち着いた紳士的な応対に
胡散臭い怪しさは微塵も感じられない。
でも、
これは あなたの知らない世界。
いや、私の知らない世界。
なんか、恐怖心も捨てきれないが・・・
でも、これも・・・何かの縁・・・なのか・・・。
『 こちら、料金は 御幾らなんですか? 』
『 一人千円を頂戴しております。 』
『 ・・・・・わ、わかりました。
ワタシも、ちょっとお願いしても よろしいでしょうか? 』
『 お受けします。
今、先客がいますので、そちらが終わりましたら
お伺いしましょう。 取り敢えず 中へどうぞ。 』
( 本当に・・・この先、私は どうなってしまうのだろう )
私は 今後の自身を少し占ない、清めてもらおうと
その小さな社の中へと優しく案内された。
~つづく~




