腹ぺこ祈祷師
中に入ると、黒の布で覆われた待合室へと通された。
そこは3畳ほどの畳の部屋で、
靴を脱ぐにも 少し足がむくんでいて
座布団に座るまで、少々時間が掛かってしまった。
『 わかってはいたけど・・・やはり、なんか不気味よね。 』
何にも窺い知れない場所で そんな感想を持ちながら、
数分ほど胡坐をかいて、休んでいたところ
黒幕の暖簾のような黒い布が小さく揺れ、
中から清々しく 若くて美しい顔の女性が、
スッと顔を出し 私の前に現れる。
( お客さんだろうか・・・? なんか、すごくいい顔をしている。 )
その女性は、私を確認すると
軽く笑みを浮かべた会釈をして、店から出ていった。
( うわ~~。 良い顔してたなぁ~~。
これって、かなり評判の お店なのかしら・・・。
でも、こういうのって、お店っていうのかしら・・・
まぁ、深夜も営業中っていう ド派手な照明を灯した看板を出すくらいだから、
商売熱心なんだろうけど・・・・ この場所と雰囲気・・・合わないなぁ
う~~~ん。 わかんないなぁ。
でも、わたし・・・・一体、何をみてもらおうかしら・・・? )
全部は話せない自分の事情を考慮しながら、
なんか自分の人生が上手くいくアドバイスを頂けないか、考えてみる。
私は自分の順番に少し緊張し、それを誤魔化すように
解れかけの畳目を指で弾いてみた。
程なく、20代くらいの女性の気の抜けた声が
私の耳に届いた。
『 あーーーー、終わった、終わった。
ねぇ、爺や。 今ので、終わりでしょ?
お腹空いたから、カツ丼つくってよ。 ねぇ? 』
そう催促すると黒幕が揺れ、
少し童顔の女性が顔を出し、私と目があった。
『 えっ? 』
『 あっ! お客さん!? 』
『 す、すみません。 急に・・・ 』
『 い、いえいえ。 あ~~、恥ずかしいトコ見られちゃったなぁー。 』
『 あの・・・お食事、まだなんですか? 』
『 そうなのよ~~もう、昼から今まで飲まず食わずよ。
あれ、爺や、何処に行ったのかしら? 』
( この人が、祈祷師!? なんかイメージと違うなぁ・・・ )
私は、トモダチ感覚で話しかけてくる その女性に
すっかり肩の力が抜けてしまった。
『 やっぱり、私・・・帰りますね。 』
『 そう? ゴメンねぇ~~。 今日はもう疲れちゃって・・・さ。 』
「 ぐぅ~~~~っ 」
私の耳に届くほどの、大きな腹の虫の音。
『 うわぁ~~~、恥ずかしい! 』
『 ・・・・・あの、私が何か作りましょうか? 』
『 えっ!? ホントに?? 』
『 トンカツ・・・いや、カツ丼は無理ですけど・・・ 』
『 ねぇねぇ、こっちに来て!! 』
私の気まぐれの提案に、
その女性は 飛びっきりの笑顔を私に向け
子供のように私の手を引き 奥へと案内した。
~つづく~




