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12/50

かみ, あつない駅




その駅は、昭和の懐かしさを感じさせてくれる木造建の無人駅だった。




私たちは再び動き出した列車を背中で見送った。


もちろん、この駅で降りたのは私たち二人だけ。


( 他のお客さんや運転手さんは、なんて思っただろうか・・・ )




私たちは、走り去っていく列車の音を感じ、

そして 改札付近の切符回収箱を横目で見ながら、

ゆっくりと誰もいない駅の中へと、引き戸の扉を開けた。



建物は古いが、

貼られている鉄道関連や地元の消防・警察の広報ポスター等は

比較的新しく、床も掃除が行き届いていて清潔感が保たれている。


壁に面して丸みを帯びた椅子が4席。

その一つに動物の名を付けた、あの国民的なアイドルが座っていて

「 ここ空いてるよ。 お姉ちゃん、何処から? 」 

等と、声を掛けてきそうな雰囲気だ。


駅内は、やはりというか、勿論というべきか

私たち2人しかいない。


小さな私は、興味津々に駅の中のモノを注意深く見つめている。



私も少し落ち着いたのか、あるモノを探し出し、

私の付けている小さな腕時計に それを照らし合わせる。


現在、19時52分。


帯広・滝川方面と釧路方面の二つの時刻表を見合わせる。


19時50分、釧路行き。


ということは、今のが釧路行きの最終列車。 



( じゃあ、今日の最終列車は・・・

帯広・滝川方面の新得行の20時51分、これが最後か・・・。 )



『 ねぇ、お姉ちゃん!! 』 

『 な、なに? 』

『 これ、みて! 』 

『 駅ノート? 』

『 なんか、みんなスゴイ書いてるの。 この絵、カワイイ・・・ 』



駅ノート。


立ち寄った人たちが、それぞれの想いを綴る旅ノートかぁ・・・。



『 ねぇ、これ見て。 

この人なんか、寝過ごして 慌てて この駅で降りてるよ・・・

浦幌の人だって。 ふふふ、可愛い。 』 

『 うらほろ? 』



私は、発車時刻表の隣りにある きっぷ運賃表に目を凝らす。


帯広、池田、浦幌、上厚内(ここだ!)、厚内、直別、音別、白糠、釧路。


帯広からここまで 大人1270円、こども630円。

ここから釧路まで 大人1270円、こども630円。



( ん? ここは帯広と釧路のちょうど中間にあるのか? )



『 ねぇ、来てよ。 一緒に見ようよ。 』 

『 えー、私はいいよ。 』

『 じゃあ、私たちも何か書こうよ。 』

『 えー、それもいい・・・かな。 』


( っていうか、何を書くのよ。 無賃乗車しましたとか? )


『 つまんないの。 』

『 あなただけでも、書けばいいじゃん。 』

『 うん。 そうする。 』


『 じゃあ、私はちょっと、周りを・・・あ、跨線橋があったよね。

あそこに登ってみるわ。 』

『 えぇー、じゃあ、私も行く。 』

『 あなたは、ノートに何か書いてなさいよ。 

私は・・・その、少しはじっくり考えたいし・・・ 』


その言葉に、小さな私は少し俯き気味になったが、

すぐに小さく頷いた。



再び、駅の入口の引き戸を開き

外へ出る。


近くには国道が通っているのか・・・少し、車の交通量は多い気がする。


でも、跨線橋の階段を一段一段昇っていくと、

少し身の縮む思いが、私を襲ってきた。



だって・・・


だって、そこから見える景色は

黒々とした山々に覆われた、真っ暗闇のなかに


たった一つの光。


そう、上厚内の駅があるだけだったから・・・・。








~つづく~

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