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妹に婚約者も屋敷も奪われましたが、亡き王妃の帳簿には私の名前しかありませんでした 〜追放された公爵令嬢が王宮の裏金を暴いたら、冷徹宰相閣下に「国ごと君を守る」と言われています〜  作者: 終焉を綴る堕天筆聖セラフィム・夜叉王院常闇寛龍


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25/80

第25話 私の名前は、王太子府の通行証ではありません

王太子府から届いた箱は、四つあった。


 どれも、濃い緑の封印布で包まれている。


 表には、王太子府の事務印が押され、宰相府へ提出するための目録が添えられていた。


『略式確認印使用文書 一式』


 その文字を見た瞬間、セレスティアは胸の奥に冷たいものを感じた。


 一式。


 便利な言葉だ。


 すべて入っているように見えて、実際には何が含まれているのか分からない。

 何が含まれていないのかも、分からない。


 エルフォード公爵家の提出資料がそうだった。


 整って見える箱の中に、都合の悪いものは抜け落ちていた。


 だから、信用しない。


 信用しないことは、疑い深いという意味ではない。

 事実を確認するという意味だ。


 宰相府の小会議室には、朝から関係者が集められていた。


 カイン、法務官オルド、記録官ミリア、王宮会計副監ローレン。

 そして、王太子府側からは会計責任者バゼルと、侍従長が同席している。


 ジュリアス本人は、まだいない。


 だが、カインは王太子府へ別途通知を出していた。


『必要に応じ、王太子殿下本人に現物確認を求める』


 セレスティアは、その文言を見たとき、少しだけ息を呑んだ。


 逃がさない。


 そういう文書だった。


 オルドが封印を確認する。


「王太子府提出箱四点。封印破損なし。提出目録あり。これより開封します」


 ミリアが記録する。


 一箱目が開けられた。


 中には、年度ごとに分類された文書束が入っていた。表紙にはそれぞれ、赤い小さな印影が押されている。


『セ確認済』


 セレスティアは、その印を見るたびに、胸の奥がわずかに縮むのを感じた。


 自分の名ではない。


 けれど、自分を示している。


 セレスティアではなく、セ。


 確認ではなく、確認済。


 人間の判断ではなく、処理済みの合図。


 その粗さが、彼女には耐え難かった。


 ローレン副監が最初の束を開く。


「王太子府茶会費、若手貴族交流会、外交贈答品調整……やはり社交費関係が多いですね」


 オルドが別の束をめくる。


「こちらは慈善関連広報費、孤児院報告書、地方視察資料、王妃基金支援先一覧」


 セレスティアは、静かに手を伸ばした。


「その支援先一覧を見せてください」


 オルドが渡す。


 紙面は整っていた。


 支援先名、地方、担当者、概要。


 だが、見た瞬間に違和感があった。


「この一覧は、古いです」


 バゼルが顔を上げる。


「古い、とは」


「聖ミラーナ救護院の院長名が前任者のままです。北方施療院の診療棟増築も反映されていません。それから、西部養蜂組合は、この年に代表が代わっています」


 セレスティアは紙を指で示していく。


「私は、この時期に更新版を作成しています。この一覧を見ていれば、古いと指摘したはずです」


 ミリアが記録する。


 ローレン副監が王宮会計室の控えを確認した。


「確かに、会計室に残る支援先一覧は更新版です。この王太子府提出文書とは内容が違います」


「なのに、セレスティア様の略式確認印が押されている」


 オルドが言った。


 セレスティアは頷いた。


「本人確認なしです」


 一件目。


 そう心の中で数えた。


 二件目は、外交贈答品調整書だった。


 そこにも『セ確認済』の印がある。


 内容は、隣国使節へ贈る品の一部を、北方支援産品として処理するものだった。


「これは、贈答品費です」


 セレスティアは言った。


「北方産品を使うこと自体は問題ありません。ですが、外交贈答品として使うなら、王太子府外交儀礼費で処理すべきです。王妃基金の北方産品購入支援費に混ぜてはいけません」


 バゼルが小さく頭を下げる。


「おっしゃる通りです」


「当時、この文書を見ましたか」


「……見たと思います」


「私に確認しましたか」


「しておりません」


 記録される。


 三件目。


 四件目。


 五件目。


 確認作業は、まるで薄皮を剥ぐように進んだ。


 印は、想像以上に多かった。


 茶会費。

 贈答品。

 広報文。

 地方支援報告書。

 慈善茶会引き継ぎ資料。

 若手貴族交流会の招待順位。

 王太子府内の臨時雇用手当。

 式典資料作成費。


 どれも本来なら、確認者が誰で、何を確認したのか明確にすべき文書だった。


 だが、そこにあるのは短い印だけ。


『セ確認済』


 セレスティアは、一枚ずつ見ていった。


 自分が見たもの。

 見ていないもの。

 見ていれば止めたはずのもの。

 見たとしても、後から内容が変わっているもの。


 分類表が埋まっていく。


『本人確認済み』

『本人未確認』

『内容差異あり』

『印使用不適切』

『原本照合必要』

『王妃基金規程違反疑い』


 昼前には、最初の箱だけで二十件以上の不適切使用が見つかった。


 ミリアの筆を持つ手が、わずかに疲れている。


 ローレン副監は眼鏡を外し、眉間を押さえた。


「これは……王太子府の事務処理全体が、セレスティア様の名を安全札のように使っていたということになります」


 安全札。


 その言葉は、胸に刺さった。


 通行証。


 抜け道の蓋。


 責任の緩衝材。


 セレスティアの名前は、そのように扱われていた。


 カインが短く言った。


「ジュリアスを呼べ」


 侍従長の顔が強張る。


「殿下を、今ですか」


「今だ」


「しかし、殿下は午前中、謁見準備が」


「王太子府の確認印乱用より重要か」


 侍従長は、何も言えなかった。


 カインはオルドへ視線を向ける。


「現物確認要請を出せ」


「承知しました」


 セレスティアは、机の上に並んだ文書を見つめていた。


 ジュリアスが来る。


 この印の山を見る。


 彼は何と言うだろう。


 知らなかった、とまた言うのだろうか。


 たぶん、言う。


 そして、それはおそらく本当だ。


 だが、もうその言葉だけでは足りない。


 ジュリアスが小会議室に現れたのは、半刻後だった。


 礼服ではなく、王太子府の執務服だった。急ぎ呼び出されたのだろう。表情には苛立ちと警戒がある。


「叔父上。今度は何です」


 カインは、机の上を指した。


「見ろ」


 ジュリアスは眉をひそめたまま机へ近づいた。


 並べられた文書。


 赤い印。


『セ確認済』


 最初は意味が分からない顔をしていた。


 だが、次第にその量に気づいていく。


 一枚ではない。


 数枚でもない。


 机一面に、同じ印が押された文書が並んでいる。


 そして、別の机にはまだ開封待ちの箱が三つ残っている。


「これは……」


 ジュリアスの声が低くなった。


 オルドが答える。


「王太子府より提出された略式確認印使用文書です。現時点で確認済みのものだけで、セレスティア様本人が確認していない文書、または内容差異のある文書が二十件以上見つかっています」


 ジュリアスはバゼルを見る。


「どういうことだ」


 バゼルは深く頭を下げた。


「申し訳ございません。王太子府内での事務簡略化のため、セレスティア様確認済みの略式印を広く用いておりました」


「広く、とは何だ」


 バゼルは答えられない。


 セレスティアは、静かに一枚の資料を差し出した。


「こちらは、慈善茶会次期担当者引き継ぎ資料です」


 ジュリアスはそれを受け取る。


「リリアナの?」


「はい。私の略式確認印が押されていますが、私は確認しておりません。また、内容は実務上大きく不足しています」


 ジュリアスは資料に目を落とした。


 花。菓子。挨拶。招待客。


 読みやすい。


 美しい。


 だが、確かに軽い。


 彼は、それを好ましいと思った記憶があった。


 リリアナには、このくらいから始めればいい。

 セレスティアのような重い資料では、彼女が可哀想だ。


 そう感じた。


 その資料に、セレスティア確認済みの印が押されていたことまでは、気に留めていなかった。


「私は……この印のことは知らなかった」


 ジュリアスは言った。


 予想通りの言葉だった。


 だが、その声は昨日より弱い。


 セレスティアは静かに答える。


「はい。殿下がこの印の存在をご存じなかったことは、昨日の聞き取りで記録されています」


 ジュリアスの顔が少し歪む。


「なら」


「ですが、殿下の府で使われていました」


 セレスティアは、机の上の文書を示した。


「王太子府の茶会費にも、広報費にも、慈善茶会引き継ぎにも、地方支援報告書にも。私の名を略した印が、本人未確認のまま押されています」


 ジュリアスは文書の山を見た。


 その視線が、初めて逃げ場を失ったように揺れる。


「こんなに……」


 小さな声だった。


 誰かを責める声ではない。


 ただ、量に圧倒された声だった。


 カインが言った。


「君は知らなかったと言った」


「実際、知らなかった」


「そうだろうな」


 カインは淡々と続ける。


「だが、これだけの文書が君の府で動いていた。君は知らなかったのではなく、知らないままでも府が回る仕組みを許していた」


 ジュリアスは口を開きかけた。


 反論は出なかった。


 セレスティアは、彼を見ていた。


 胸は痛む。


 しかし、不思議と昔のように助けたい衝動は弱かった。


 今、彼を助けることは、文書を片付けることではない。


 彼自身に見せることだ。


 知らないで済ませていたものを。


 ジュリアスは、一枚の文書を手に取った。


 地方支援報告書。


 そこには『セ確認済』の印がある。


 だが、セレスティアは確認していない。


 内容には、北方施療院の予算削減を「次期支援へ調整」とする文言がある。


 ローレン副監が説明した。


「この文書に基づき、北方施療院への一部支援が翌期へ回されました。その間の不足分は、地方領主側が臨時に負担しています」


 ジュリアスの顔色が変わる。


「そんな報告は受けていない」


 バゼルが苦しげに答える。


「殿下には、支援全体は継続と報告しておりました」


「なぜ細部を言わなかった」


「殿下は、細かな調整は事務方に任せると」


 ジュリアスは、言葉を失った。


 自分が言った言葉が、自分へ返ってきている。


 細かな調整は任せる。


 それは信頼の言葉だったはずだ。


 だが、その裏で、北方施療院の支援が後ろへ回され、セレスティア確認済みの印が押されていた。


 セレスティアは、静かに言った。


「殿下。これは、私を信頼していたという話ではありません」


 ジュリアスが彼女を見る。


「私が確認していないものまで、私が確認したことにする仕組みです」


 ジュリアスの唇が震えた。


「私は、そんなことを望んでいない」


「はい」


 セレスティアは頷いた。


「望んでいなかったのだと思います」


 ジュリアスの表情が少しだけ緩みかける。


 だが、セレスティアは続けた。


「ですが、望まなかったことと、止められなかったことは別です」


 その言葉は、聞き取り室に静かに落ちた。


 ジュリアスは、今度こそ目を伏せた。


 オルドが確認する。


「王太子殿下。今後、王太子府内でセレスティア様名義の略式確認印を使用しないこと、当該印が押された全書類を再確認対象とすること、本人確認済みとしての効力を停止することに同意されますか」


 ジュリアスはしばらく黙っていた。


 王太子としての誇りが、喉に引っかかっているようだった。


 だが、机の上には文書が並んでいる。


 もう、見なかったことにはできない。


「……同意する」


 ミリアが記録する。


 オルドが続ける。


「また、王太子府の会計および事務処理について、宰相府と王宮会計室による再監査を受け入れますか」


 ジュリアスの顔が強張った。


「王太子府全体を?」


 カインが答える。


「当然だ」


「それでは、府の威信が」


「威信を守るなら、まず腐った処理を止めろ」


 厳しい声だった。


 ジュリアスは反論できなかった。


 長い沈黙の後、彼は言った。


「受け入れる」


 その声は、ほとんど絞り出すようだった。


 セレスティアは、胸の奥が少しだけ揺れた。


 これは勝利ではない。


 王太子が屈した場面を見て、喜ぶ気持ちはない。


 ただ、初めて彼が自分の府の現実を見た。


 それだけだった。


 その日の午後、王太子府の文書室にも宰相府の封印が貼られた。


 会計室の一部、略式印の保管棚、過去三年分の事務処理箱。


 封印紙が一枚ずつ貼られるたびに、王太子府の侍従たちは青ざめた。


 王太子府は、華やかな場所だった。


 磨かれた廊下。

 美しい花。

 若い貴族たちの笑い声。

 王太子の演説草案が整えられる明るい執務室。


 だが、その奥にある文書室は、今日初めて冷たい目で見られていた。


 セレスティアは、同行していなかった。


 カインの判断で、今日の現地保全には出ないことになった。


 理由は簡単だった。


 朝からの確認作業で、彼女の顔色が悪すぎたからだ。


 以前なら反論した。


 今はしなかった。


 自分を使い潰さないこと。


 それも、自分の名前を取り戻すことの一部だと、少しずつ分かり始めていた。


 彼女は宰相府の自室で、王太子府再監査の初期分類表を作っていた。


 ただし、勤務時間内に。


 机の上には、今日扱う分だけ。


 カインの規程は、相変わらず厳格だった。


 分類表の最初の欄に、彼女はこう書いた。


『略式確認印使用文書分類』


 一、本人確認済み。

 二、本人未確認。

 三、内容差異あり。

 四、基金規程違反疑い。

 五、王太子府責任確認対象。


 五番目の項目を書いたとき、少しだけ手が止まった。


 王太子府責任確認対象。


 かつて自分が守っていた場所。


 今は、自分が確認する対象。


 人の立場は変わる。


 関係も変わる。


 それでも、名前は残る。


 だからこそ、どう使うかを選ばなければならない。


 夕刻、カインが戻ってきた。


「文書室の封印は完了した」


「抵抗は?」


「大きな抵抗はない。ジュリアスが受け入れを命じた」


 セレスティアは顔を上げた。


「殿下が」


「ああ」


「そうですか」


 胸の奥に、複雑な感情が浮かぶ。


 安堵。

 痛み。

 少しだけの寂しさ。


 ジュリアスは、遅すぎるかもしれないが、ようやく見ようとしている。


 それは喜ばしい。


 けれど、なぜ婚約していた十年の間にそれができなかったのだろうとも思う。


 カインは、彼女の前に一通の文書を置いた。


「ジュリアスからだ」


 セレスティアは息を止めた。


「私に?」


「いや。宰相府宛てだ。ただし、君にも関わる」


 文書を開く。


 そこには、王太子府としての正式な通知があった。


『セレスティア・エルフォード様名義の略式確認印について、本人許可なき使用であったことを認め、即時使用停止とする』


『同印が押された文書については、本人確認済みとしての効力を停止し、再確認対象とする』


『王太子府の事務処理体制について、宰相府および王宮会計室の再監査を受け入れる』


 そして最後に、一文。


『セレスティア・エルフォード様の名が、本人の意思に反して用いられたことについて、王太子府責任者として遺憾に思う』


 謝罪ではない。


 遺憾に思う。


 王族らしい、硬い言葉。


 それでも、初めて彼は、王太子府責任者として文書にした。


 自分の府が、セレスティアの名を本人の意思に反して用いたと。


 セレスティアは、しばらくその一文を見ていた。


「謝罪ではありませんね」


「そうだな」


「でも、記録にはなります」


「なる」


 カインは短く答えた。


 セレスティアは文書を丁寧に閉じた。


 今は、それでいい。


 感情の謝罪を求めるより先に、責任を文書に置く。


 それが、今必要なことだった。


 その夜、リリアナは王太子府の廊下から、文書室に貼られた封印紙を見た。


 赤い宰相府の印。


 王太子府の中に、それが貼られている。


 異様な光景だった。


 ジュリアスは、封印された扉の前で立ち止まっていた。


 リリアナは少し離れた場所から、声をかけるか迷った。


 やがて、ジュリアスが言った。


「私は、知らなかった」


 誰に向けた言葉なのか分からなかった。


 リリアナは静かに答えた。


「はい」


「本当に、知らなかった」


「はい」


「なのに、知らなかったことが、こんなに重い」


 その声には、初めて弱さがあった。


 リリアナは胸が痛んだ。


 殿下を抱きしめたい気持ちがあった。


 大丈夫です、と言いたい気持ちもあった。


 けれど、言わなかった。


「私も、そうでした」


 代わりにそう言った。


 ジュリアスが振り向く。


 リリアナは、王妃基金規程の冊子を胸に抱いていた。


「知らなかったと分かるたびに、少しずつ重くなります」


 ジュリアスは、しばらく彼女を見ていた。


 以前なら、彼女のそんな言葉に困ったように笑ったかもしれない。


 今日の彼は、笑わなかった。


「リリアナ」


「はい」


「君は、それを読んでいるのか」


「はい。とても難しいです」


「そうか」


 沈黙が落ちる。


 リリアナは、少しだけ勇気を出して言った。


「殿下も、読まれますか」


 ジュリアスは答えなかった。


 だが、拒絶もしなかった。


 それだけでも、リリアナには小さな変化に見えた。


 宰相府の夜。


 セレスティアは、自分の机で覚書を書いた。


『私の名前は、王太子府の通行証ではない』


 それから、少し迷ってもう一行。


『でも、今日、その通行証は止められた』


 ペンを置く。


 肩の力が抜けた。


 完全に取り戻したわけではない。


 まだ、確認すべき文書は山ほどある。


 略式印が押された書類の先には、基金の金、王太子府の慣例、公爵家の派閥、商会の利益が絡んでいる。


 だが、今日ひとつ止まった。


『セ確認済』


 あの印は、もう使えない。


 セレスティアは引き出しを開け、覚書を重ねた。


 そこには、これまでの言葉が残っている。


『私は、私の名前を取り戻す』

『切り取られた署名欄は、私の名前ではあっても、私の意思ではなかった』

『信頼と放任は違う』

『許しではなく、受け取ることから始まるものもある』


 その上に、今日の紙を置く。


 引き出しを閉じる。


 小さな音がした。


 扉の外から、カインの声がする。


「寝ろ」


「はい」


 即答すると、少し間があった。


「今日は素直だな」


「疲れていますので」


「いい傾向だ」


「疲れていることがですか」


「疲れたら休むことがだ」


 セレスティアは少し笑った。


 確かに、少しは成長したのかもしれない。


 窓の外では、王宮の灯りが静かに揺れている。


 その灯りの中で、自分の名前はずっと勝手に使われていた。


 けれど今、ひとつの印が止まった。


 明日からは、その印が押された過去を一枚ずつほどいていく。


 それは痛い作業だ。


 でも、もう彼女の名前はただの略号ではない。


 セレスティア・エルフォード。


 彼女自身が、確認する。

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