第19話 公爵家会計室に、宰相府の封印が貼られました
エルフォード公爵家への資料提出命令は、翌朝一番に届けられた。
宰相府の印が押された正式文書だった。
内容は明確だった。
ラドクリフ商会との過去十年分の取引記録。
王妃基金に関わる推薦状、紹介状、承認控え。
セレスティア・エルフォードの署名が用いられた全書類。
家令マルクスの作業記録。
旧会計箱に関連する帳簿類。
エルフォード公爵家会計室に保管されている慈善関連支出控え。
提出期限は、本日正午。
グレアム・エルフォード公爵は、その文書を読んで、しばらく黙っていた。
当主執務室には、朝の光が差し込んでいる。窓辺の花はいつも通り整えられ、机の上の銀のペーパーナイフも磨かれていた。
屋敷は美しい。
だが、その美しさは、いまや薄い布のようだった。
少し触れれば、下に隠していたものが見えてしまう。
「旦那様」
執事長が控えめに声をかけた。
「宰相府への返答は、いかがいたしましょう」
グレアムは、ゆっくり顔を上げた。
「提出する必要はない」
執事長の顔がこわばる。
「ですが、正式な提出命令です」
「公爵家には公爵家の機密がある。何でもかんでも宰相府へ差し出すつもりはない」
「拒否なさるのですか」
「拒否ではない」
グレアムは文書を机に置いた。
「選別する」
その言葉に、部屋の空気が冷えた。
選別。
都合のよいものだけを出すという意味だった。
執事長は、もう長くこの家に仕えている。主人の言葉の裏を読めないほど若くはなかった。
「どの範囲を」
「王妃基金に直接関係するものだけだ。公爵家内部の会計記録、商会との私的取引、派閥関連の支出は出さなくていい」
「しかし、ラドクリフ商会は」
「だからこそだ」
グレアムの声は低かった。
「あの商会に関わるものをすべて見せれば、余計な線まで引かれる」
「余計な線……」
「王宮の者は、紙を並べれば何でも真実になると思っている。だが、貴族家の運営は帳簿だけで成り立っているわけではない」
執事長は黙った。
それは、かつてなら屋敷中が納得した言葉だった。
貴族家には、表の帳簿には書けない調整がある。
商会への便宜、派閥の付き合い、茶会の支援、王太子府との関係維持。
そういうものは、きれいな数字だけでは回らない。
だが今、その「調整」のためにセレスティアの署名が切り貼りされていた可能性がある。
王妃基金の金が、別の場所へ流れた疑いがある。
それでも同じ言葉で押し通せるのか。
執事長には、もう分からなかった。
扉が叩かれる。
「入るな」
グレアムが言うより早く、扉が開いた。
エヴァンジェリン夫人だった。
薄い朝の装いのまま、顔色は悪い。だが、目は昨日よりも強かった。
「あなた。提出してください」
いきなりだった。
グレアムの眉が吊り上がる。
「何を聞いていた」
「聞こえました。選別する、と」
「女が口を出す話ではない」
「母親として口を出しています」
エヴァンジェリンは震えていた。
それでも、下がらない。
「これ以上、セレスティアに隠し事を重ねないでください」
「セレスティアのためではない。家のためだ」
「その家のために、あの子の署名を切り取ったのでしょう」
グレアムの顔色が変わった。
「誰が言った」
「屋敷中が知っています」
エヴァンジェリンの声はかすれていた。
「使用人たちも、リリアナも、もう知らないふりはできません。あなたが命じたか、家令が勝手にしたか、まだ私には分かりません。でも、あの子の名前が使われたことは事実なのでしょう」
「黙れ」
「黙っていたから、こうなったのです」
その言葉は、静かだった。
静かだからこそ、重かった。
グレアムは妻を睨んだ。
「お前まで、あの娘の味方をするのか」
「味方という言葉で済む話ではありません」
「では何だ」
「私たちが、あの子に何をしたのかを知る話です」
グレアムは立ち上がった。
怒鳴りつける気配に、執事長がわずかに身を強張らせる。
だが、そこでさらに別の声がした。
「お父様」
扉の外に、リリアナがいた。
昨日から、彼女は何度も大人たちの会話の外側に立っていた。けれど今日は違う。自分から部屋へ入ってきた。
手には、白い封筒を持っている。
セレスティア宛てに書きかけていた手紙だ。
「資料を出してください」
リリアナは小さく、しかしはっきりと言った。
グレアムは信じられないものを見るように娘を見た。
「リリアナ。お前まで何を」
「私、お姉様に謝る手紙を書いています。でも、何を書いても薄く見えてしまうんです。だって、まだお父様が隠しているなら、私が謝っても何も変わらないから」
「お前は何も知らない」
「はい。知りませんでした」
リリアナは頷いた。
「でも、知らなかったことを理由にしてはいけないと、やっと少し分かりました」
グレアムは唇を噛んだ。
エヴァンジェリンが、リリアナの肩に手を置く。
母と妹。
かつては何も知らず、セレスティアに譲らせる側にいた二人が、今は父の前に立っている。
それがグレアムには、裏切りに見えた。
「出ていけ」
彼は低く言った。
「二人とも出ていけ。これは当主の判断だ」
エヴァンジェリンは動かなかったが、執事長が苦しげに頭を下げた。
「奥様、リリアナ様……」
これ以上ここにいれば、屋敷内でさらに激しい衝突になる。
エヴァンジェリンはリリアナの肩を抱き、部屋を出ていった。
扉が閉まる。
グレアムは、荒い息を吐いた。
「正午までに、提出用の箱を作れ」
「かしこまりました」
「ただし、公爵家会計室の奥棚には触れるな」
執事長の手が止まった。
「奥棚、でございますか」
「私が見る」
「……承知いたしました」
執事長は深く礼をした。
そして部屋を出る直前、ほんの一瞬だけ振り返った。
その目にあったのは、忠誠ではなかった。
恐れと、諦めだった。
正午。
宰相府へ届いた資料箱は、三つだけだった。
セレスティアは、新しい執務室でそれを見た瞬間、胸の奥に嫌な冷たさを覚えた。
少なすぎる。
過去十年分の資料を求めたはずだった。
ラドクリフ商会との取引だけでも、箱三つでは収まらない。まして、公爵家内部会計や署名控え、推薦状関連まで含めれば、倍以上はあるはずだ。
法務官オルドが目録を確認する。
「提出物。ラドクリフ商会関連請求書写し、一部。推薦状控え、一部。慈善関連支出一覧、過去三年分。家令マルクス作業記録、該当なしとの回答」
カインの表情は動かなかった。
だが、部屋の温度が下がったように感じた。
「該当なし、か」
ローレン副監が低く言う。
「あり得ません。家令が昨日、署名欄を保管し文書に用いたと証言しています。作業記録がまったくないなら、それ自体が問題です」
セレスティアは提出された一覧を見た。
文字は整っている。
だが、整いすぎている。
余計な線が消されている。
「これは、選別されています」
彼女は言った。
オルドが頷く。
「私もそう見ます」
「過去三年分しかありません。問題の支出は五年以上前にもあります。王妃陛下崩御直後の署名流用疑いも入っていません」
セレスティアは、提出箱の中身を一枚ずつ確認しながら言った。
「それから、ラドクリフ商会の輸送費関係が薄いです。王宮会計室の控えでは複数年にわたり記録がありますが、こちらには二件しかありません」
「意図的な不提出だな」
カインの声は短かった。
セレスティアの手が止まる。
「強制保全に入りますか」
自分で言って、胸が少し重くなった。
公爵家会計室。
父が絶対に他人を入れたがらない場所。
そこに踏み込む。
この一線を越えれば、父はもう娘への怒りだけでは済ませないだろう。公爵家当主として、全力で抵抗するかもしれない。
それでも。
「入る」
カインが答えた。
迷いはなかった。
「提出命令に対する不完全提出。監査妨害の可能性あり。法務官、強制保全命令を準備しろ」
「承知しました」
オルドが立ち上がる。
セレスティアは顔を上げた。
「私も同行します」
カインは彼女を見た。
「会計室だ。昨日より重い」
「分かっています」
「公爵は抵抗する」
「分かっています」
「君に直接言葉を向ける可能性が高い」
「それも、分かっています」
カインは少し黙った。
セレスティアは続けた。
「ですが、提出された資料が選別されているかどうか、私は判断できます。父が何を隠したいかを、私なら見つけられるかもしれません」
それは、娘だからではない。
十年、王宮と公爵家の間で書類を見続けたからだ。
父の癖。
家令の整理の仕方。
公爵家会計室の控えの付け方。
どこに何が残るか。
それを知っている。
「同行を許可する」
カインは言った。
「ただし、前回より護衛を増やす」
「はい」
「私的会話は禁止。父親が何を言っても、その場で議論しない」
「はい」
「顔色が悪くなったら、即時退室」
「はい」
「本気で言っている」
セレスティアは、少しだけ笑った。
「分かっています」
笑えたことに、自分でも驚いた。
怖い。
でも、以前のようにただ震えるだけではない。
彼女には机がある。
役職がある。
記録官がいる。
そして、自分で署名した監査開始文書がある。
カインが短く言った。
「では行くぞ」
エルフォード公爵邸に二度目の宰相府の馬車が到着したとき、門前の空気は昨日よりも重かった。
使用人たちは、すでに何かを察していた。
黒塗りの馬車が二台。
護衛騎士が四名。
法務官、記録官、会計監査官。
そして、セレスティアとカイン。
これは訪問ではない。
強制保全だった。
玄関前で待っていた執事長は、顔面蒼白だった。
「宰相閣下……これは」
オルドが正式文書を示す。
「提出命令に対する不完全提出、および監査妨害の可能性に基づき、エルフォード公爵家会計室の強制保全を行います」
執事長は文書を見て、言葉を失った。
そこへ、当主執務室の方からグレアムが現れた。
昨日よりも顔色は悪い。
しかし、威圧は失っていなかった。
「宰相府は、公爵家の会計室へ踏み込むつもりか」
「すでに命令は出ている」
カインが答える。
「提出物が不完全だった」
「こちらは必要なものを提出した」
「必要かどうかを決めるのは監査側だ」
グレアムの視線がセレスティアに移る。
「お前の差し金か」
セレスティアの胸に、鋭い痛みが走る。
だが、彼女は答えなかった。
私的会話は禁止。
カインとの約束だ。
代わりに、オルドが言う。
「公爵閣下。会計室へ案内を」
「拒否する」
短い言葉だった。
廊下にいた使用人たちが息を呑む。
オルドは表情を変えない。
「拒否される場合、正式に監査妨害として記録し、王宮法務局へ即時報告します」
「私はエルフォード公爵だ」
「はい。その公爵家が、亡き王妃陛下の基金支出と関わる資料提出を拒否しています」
グレアムの顔が赤くなる。
カインが一歩前へ出た。
「グレアム」
その声は、王弟宰相としてのものだった。
「これ以上抵抗すれば、君の家だけでは済まない。王妃基金を軽んじた公爵家として、社交界にも議会にも名が残る」
グレアムは唇を噛んだ。
家名。
それが、彼にとって最大の弱点だった。
しばらく沈黙した後、彼は低く言った。
「……案内しろ」
執事長が震える声で答える。
「かしこまりました」
会計室は、屋敷の西棟にあった。
厚い扉。
鉄の錠。
窓には内側から格子。
公爵家の金の流れを管理する場所だけあって、他の部屋とは空気が違った。
執事長が鍵を取り出そうとする。
そのとき、グレアムが言った。
「その鍵は私が持つ」
執事長の手が止まる。
グレアムは懐から鍵束を出した。
だが、カインが制した。
「開錠前に鍵を確認する」
「疑うのか」
「手順だ」
グレアムは渋々鍵を差し出した。
オルドが鍵の本数、形状、札を記録する。
その中の一本に、札がない鍵があった。
セレスティアは、それを見て目を細めた。
「その鍵」
思わず声が出た。
カインが見る。
「何か分かるか」
「会計室の奥棚の鍵だと思います」
グレアムの顔がわずかに変わった。
セレスティアは続ける。
「昔、父上がその鍵を使って奥棚を開けているのを見たことがあります。札は当時もありませんでした」
オルドが即座に記録する。
グレアムは苛立った声で言った。
「子どもの頃の記憶だろう」
「はい。ですが、確認はできます」
カインが鍵を受け取り、護衛に扉を開けさせた。
会計室の中は、思ったより整っていた。
整いすぎていた。
棚には帳簿が年度ごとに並び、机には羽根ペンと計算板。壁際には大きな金庫。奥には、鉄格子付きの棚があった。
セレスティアは入室した瞬間、違和感を覚えた。
「この部屋、最近整理されています」
オルドが問う。
「根拠は」
「床の埃です。棚の手前だけ薄い。机の上の帳簿も、古い順ではなく、見せたい順に並べられています」
ローレン副監が頷いた。
「会計室を普段使う者の並べ方ではありませんね。監査用に整えたように見えます」
グレアムは黙っていた。
セレスティアは奥棚を見た。
「まず、奥棚を確認してください」
グレアムの声が低くなる。
「そこには公爵家の私的帳簿がある。王妃基金とは関係ない」
「関係があるかどうかを確認します」
セレスティアは、静かに答えた。
カインがオルドへ合図する。
札のない鍵が奥棚の錠に差し込まれた。
合った。
扉が開く。
中には、革表紙の帳簿が何冊も並んでいた。
その背表紙には、通常の年度表記ではなく、短い符号が書かれている。
『R』
『王』
『茶』
『冬』
『調』
セレスティアは、息を呑んだ。
「符号管理……」
ローレン副監が帳簿を取り出す。
「通常会計ではありませんね」
最初に開いたのは『R』の帳簿だった。
ラドクリフのR。
中には、ラドクリフ商会との取引記録が、公爵家内部用に記されていた。
王宮へ提出された表向きの請求額。
実際の見積額。
差額。
差額の配分。
そこには、信じがたい項目が並んでいた。
『調整分――公爵家交際費へ』
『調整分――王太子府関係茶会費』
『調整分――派閥維持費』
『セレスティア確認扱い』
最後の一行で、セレスティアの視界が揺れた。
確認扱い。
確認済みではない。
確認扱い。
つまり、本人が確認していなくても、確認したことにするという意味だ。
カインが低く言った。
「保全」
オルドの声も硬い。
「奥棚より、ラドクリフ商会内部取引帳簿と思われる帳簿を発見。表向き請求額、実見積額、差額配分の記載あり。『セレスティア確認扱い』の文言あり」
グレアムは青ざめた。
さすがに、もう言い逃れが難しいと分かったのだろう。
セレスティアは、帳簿を見つめた。
確認扱い。
自分が十年かけて積み上げた確認の価値が、ただの印として使われていた。
胸が痛い。
悔しい。
だが、それ以上に、はっきりと怒りがあった。
次に『王』の帳簿を開く。
そこには、王太子府関連の支出調整が記されていた。
ジュリアスの名はない。
だが、王太子府付き侍従、茶会、衣装、外交贈答品補填などの文字が見える。
ローレン副監が深く息を吸った。
「これは、王太子府にも照会が必要です」
カインの目が冷える。
「分かっている」
グレアムが口を開いた。
「それは、王太子府への忠誠として」
「忠誠ではなく、基金の私物化だ」
カインが切り捨てた。
その声には、もう容赦がなかった。
「グレアム。君は何をしたか分かっているのか」
「私は家を守った」
「王妃基金の金を動かし、娘の署名を確認扱いにして、家と派閥と王太子府の体面を守ったわけだ」
カインの言葉が、部屋に突き刺さる。
グレアムは歯を食いしばった。
「貴族家とはそういうものだ」
セレスティアは、静かに父を見た。
そして言った。
「いいえ」
グレアムの視線が彼女へ向く。
「少なくとも、王妃陛下はそうではありませんでした」
その一言で、父の顔が歪んだ。
「王妃陛下は、慈善を体面に使うことを嫌っておられました。だから帳簿を残したのです。だから私に、数字の後ろにいる人を見るよう教えてくださいました」
セレスティアは、奥棚の帳簿へ視線を落とす。
「父上が守ったのは家ではありません。家の顔です」
グレアムは何も言わない。
「その顔を守るために、私の名前と、支援を待つ人たちのお金を使ったのです」
会計室の中に、重い沈黙が落ちた。
カインが短く命じる。
「奥棚の全帳簿を保全。会計室の封印を行う」
「承知しました」
オルドと監査官が動き出す。
棚から帳簿が次々と取り出され、保全袋へ入れられる。目録に番号が振られる。
グレアムは、それをただ見ていた。
自分の家の中心部から、秘密の帳簿が持ち出されていく。
その顔にあるのは怒りだけではなかった。
喪失だった。
セレスティアは、その顔を見て胸が痛んだ。
けれど、止めなかった。
止めてはいけない。
やがて、会計室の扉に宰相府の封印紙が貼られた。
赤い印が押される。
エルフォード公爵家の会計室は、王宮監査の管理下に入った。
その瞬間、廊下に控えていた使用人たちが静かにざわめいた。
リリアナも、少し離れた場所から見ていた。
彼女は泣いていなかった。
ただ、真っ青な顔で封印紙を見つめていた。
エヴァンジェリンは、その横で唇を押さえている。
グレアムは、最後にセレスティアへ言った。
「満足か」
その声は低く、疲れていた。
セレスティアは、ゆっくり首を横に振った。
「いいえ」
満足など、あるはずがない。
実家の会計室に封印紙が貼られて、喜べるはずがない。
「ただ、必要でした」
グレアムは目を閉じた。
それ以上、何も言わなかった。
宰相府へ戻った後、セレスティアは自分の机で保全目録の控えを読んだ。
奥棚帳簿。
『R』
『王』
『茶』
『冬』
『調』
とくに『王』の帳簿は危険だった。
王太子府との関係が、具体的に記されている可能性がある。
これが事実なら、監査は公爵家だけで終わらない。
ジュリアスの足元にも届く。
セレスティアは、静かに紙を閉じた。
カインが向かいから言う。
「今日はここまでだ」
「はい」
今度は反論しなかった。
疲れていた。
体も、心も。
「宰相閣下」
「何だ」
「会計室に封印紙が貼られたとき、少し悲しかったです」
「ああ」
「父が私を見て、満足かと言いました」
「言いそうなことだ」
「満足ではありません」
「分かっている」
その一言で、セレスティアの胸が少し緩んだ。
分かっている。
それだけで、今日は十分だった。
「次は、王太子府ですね」
セレスティアは言った。
カインは短く頷く。
「奥棚の『王』の帳簿を確認してからだ」
「はい」
「だが、避けられないだろう」
避けられない。
セレスティアは、窓の外を見た。
王宮の灯りが、夜の中で静かに光っている。
その中に、王太子府がある。
かつて、自分が支えていた場所。
今は、自分の署名と王妃基金の流れが向かう先かもしれない場所。
公爵家の次は、王太子府。
物語は、もう家族の中だけには収まらなくなっていた。




