第29話 帰還
『門』を使って第四惑星に戻り、そこから半日をかけて船は奇振都に戻る。
地上に降り立つと奇振都は黄昏時だった。
春人ら視察の参加者は視察の終了手続きを済ませると軍の宇宙港から軍が手配したバスで街まで向かう。
日が暮れつつある街に向かうバスの車内で土方が春人に話しかけてくる。
「で、どうするんだ?」
「どうするって?」
「ゼフィルのやつらがいっていただろう?独立するかどうかと言う話さ」
土方の言葉を聞いた春人はその事を思い出す。
「やつらはいけすかないが、俺は勝ち馬に乗るぜ。こっちに来てまで日本やアメリカやロシアの言いなりになる気はないからな」
「なら、あなたはどうするんですか」
「そうだな、俺が知っている限りの情報を奴らに渡して報酬受け取って、それで終わりさ。
後はなるようになれだ」
その答えに春人は流石に眉を寄せ、土方をにらむ。
だが彼は肩をすくめる。
「勘違いするなよ、俺なりに考えた結果だからな。
ゼフィルに協力するつもりはないが、反政府テロとかにも荷担はしない。今俺たちがゼフィルに敵対するのは無謀なのがよくわかったからな」
窓の外を見ていた土方は腰を上げる。
「たぶんゼフィルが俺達転生者を視察に誘っている目的はそれだろう。
今、俺たちが逆らって勝てる見込みはないぞということを分からせる。それがわかっただけでも十分さ」
「それにだ」
土方は一段声を潜め、隣に座る春人にしか聞こえない声量で言う。
「俺は地球なんてどうでもいい。いや、前世の記憶からしたらいっそ核戦争で滅びる寸前までなってもいいとさえ思ってる」
その言葉に春人は表情を凍りつかせる。
「奴らがここまで来たら、せっかくの俺達だけの楽園が奴らに踏みにじられかねないからな。余計なことをしないでもらいたいものだぜ」
「それは…そうですが」
土方の言葉を聞いた春人は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。
そんな春人を土方は睨みつけると、
「時任、もう俺達は地球人じゃない。アマテラスを太陽とするこの地球の人間だ。地球の奴らのことまで考えていたらきりがないぜ」
土方は鼻を鳴らして腕組みをする。
「まあ、ゼフィルの奴らが目論んでいるのはあくまでも地球との再接触みたいだからな。接触して交渉して決裂して物別れで終わってくれれば俺達にとってはしばらくは安泰だろう」
「ゼフィルはこの星を…地球に売り渡したりはしないでしょうか?」
ためらいながら春人は土方に尋ねる。
「それはないだろう。まあ、ゼフィルが地球に大負けして銀河の各国が地球の味方をして、ゼフィルを見放したら話は別だろうがな」
それは容易ではないことが春人も分かる。
「そろそろだな。俺はここで失礼するぜ。縁があったらまた会おう」
そう言うと土方は荷台においてあった荷物を下ろして立つ。
「せっかくの第二の人生。せいぜい楽しまてもらうさ」
そう言うと土方は荷物を手にバスの昇降口に向かう。
やがてバスが停止し、昇降口が開くと土方は春人らに向かって軽く手をあげ、降りていく。
土方らを降ろし終えると再び浮き上がり、走り出すバス。




