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偽りの悪旗外伝 もう一つの地球『イザナミ』への転生編   作者: 新景正虎


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第28話 キスラ・イプニル

「これで正規軍じゃないのか」


「辺境の星系を守るには充分だろう。

もっとも、この戦力でも、地球の大国の1艦隊くらいは相手取れそうではあるが」


 皮肉を込めた土方の言葉に春人はうなずく。


 彼らはしばらく施設を案内されていたが、停泊する軍艦を見下ろせる展望室につき、見渡していた時、


「おい、見ろよ時任!」


 珍しく土方が驚きの声を出す。


 促されるまま土方が指差す先には停泊している巨大な軍艦が見えた。


「あれは」


「キスラ・イプニルだ。生で見たのは初めてだ!」


 展望室の縁に駆け寄ると、興奮気味に叫ぶ土方。だが無理もない。


「あれが」


 春人も茫然と眼下のドックに停泊している巨大な軍艦を見下ろしていた。


「ゼフィル共和国政府外務統括省、異星文明調査局の象徴。調査艦隊の総旗艦にして司令官であるユリウス・クアモデスが乗っているとされる艦。しかしなんだってアマテラスに。

 あれは確か調査の進んでいない未開地の調査用のはずだぞ」


「そう…なんですか?」


 土方の声で気がついたのか、いつの間にか彼らの辺りには参加者が集まっていた。


「すごい!本物だ!」


 参加者たちは口々に声をあげ、周りには人だかりが出来ている。


そんな中、土方は春人の言葉に答える。


「ああ、単独で未開地の調査を長期に渡って行い、確実に帰還する。そのために戦艦、護衛艦、調査や乗組員の休養設備もある指令艦の複数に分離できるとの話だ」


 そう言われて春人は改めてキスラ・イプニルを見る。


 三つの艦首を持つ三胴艦。左右の船体に空母のような飛行甲板が見える。その様は確かに圧倒的だが土方の言うように分離出来るようには見えない。


「…そうは見えませんが」


 春人の言葉に土方は首を振る。


「それはな、あれは戦艦部分だけだからだ」


「あの大きさで?」


「ああ」


 春人は改めて眼下のキスラ・イプニルを見る。


 その巨体は停泊しているこのアマテラスの防衛艦隊の各艦艇より一回り以上大きい。


 あれに他の複数の船が合体すると言うことだろうか?


「ここにいるということはこれから地球テラ)の調査に向かうのか?今さら?」


 そう呟く土方に陽葵(ひまり)が尋ねる。


「ユリウス・クアモデス司令官もここにいるんでしょうか?」


「かもな」


 それからしばらくして一同は施設の食堂で昼をとる。


 その時土方は食堂で隣の席についた兵士の一人とゼフィルの公用語でなにやら話をしていた。


「何を話していたんですか?」


 しばらくして兵士が去っていった後、春人は土方に聞いてみた。


「駄目元でユリウス・クアモデスがいまどこにいるか聞いてみたのさ」


 その答えに春人はさすがに呆れる。


「教えてくれるわけないじゃないですか」


 相手は国家的な重要人物。例え知っていても答えるわけがない。


「ああ。だがな「閣下は突然おいでになり、我々の前に姿を見せたと思ったら、数時間後には艦ごといなくなっていることもある」そうだ」


「やはりお忙しいんですね。お会いしたかったな」


「ああ。アメリカの大統領なんかには別に会いたくもなかったが、ユリウス・クアモデスには会ってみたいぜ」


 土方と陽葵のやり取りを聞いていた春人は今更ながら彼と面識がある自分の境遇に驚くしかなかった。なぜ彼は自分と会ったのか。


 たまたまだろうか?なにか特別な理由があったのだろうか?


「にしてもだ。二人ともゼフィルの公用語は話せるようになっていた方がいいぜ」


 突然土方が真剣な顔で春人と陽葵に忠告する。


「え?」


「確かにここでは日本語が使えるが、それは移民一世世代の事を考慮したゼフィルの保護政策の賜物だ。これから成人して仕事をするにはゼフィルの公用語が話せないと困るぜ」


 確かに、今までは普通に日本語で会話ができていたが、それはあくまでも日本人同士だったから。


 ここに来てからはマアナ・ロハスの兵士と話すことがあったがそれは大抵土方が通訳してくれていた。


 現に春人らとここの兵士らとの会話はほぼ無いに等しい。


「は、はい」


「俺も、転生して間もない頃は日本語しか話せないで周りからは怪しまれたからな」


「そうですね」


 彼らはしばらく話をしていたがやがて未来の話になる。


「ゼフィルと地球(テラ)は戦争になるんでしょうか?」


 陽葵の言葉に土方は首を振る。


「すぐにはならんだろう。この世界の地球の宇宙技術が俺たちが知る前世と変わらないのならテラ人は月や火星に探査機を送るのがやっとのはずだ。それに比べてこっちはどうよ。

 俺たちみたいな一般人が海外旅行感覚で火星辺りまで行ける」


 土方の言葉に二人はうなずく。


「仮に地球(テラ)がゼフィルから技術を手に入れたってそこがようやくスタートライン。 それもゼフィルからすれば想定内だろうしな。

 技術を与えて歯向かわれたら元も子もない。ここに来るまでも二重三重に対策しているだろうよ」


 そうして最後の視察を終えた一同は輸送船に乗り込み、第三惑星への帰路につく。



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