第18話 記憶の再演
――ピピッ
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「エクエ、今の銃声」
エクエはこくりと頷き、僕たちに指示を出す。
「アズマたちは前話したように囮役を頼んだ。目立つためにもこの窓から飛び降りて欲しい」
臨戦態勢入った僕たち。リアスとヴェルスは銃になる。そして、僕は窓に体を滑り込ませて、そのまま外へ出る。それから風の錬金術を使って衝撃を与えずに着地。
しかし、周りに銃を持った人物はいない。
<アズマさん、あそこ!>
視界の隅でピコンピコンと光が点滅する。どうやら、武器形態の時にできる視界への介入はターゲット表示だけではないらしい。視線誘導と呼ぶべきなのだろうか、これは。
しかし、リアスが示した先を見ればそんな冗談は口に出すことが出来なくなった。
「ゔっ……」
僕はその場から動けなくなる。先程まで談笑していたあの不動産屋のスタッフが胸から血を出して倒れていた。まだ完全に意識を失ってはおらず、彼の手は何度も何もない空を掴もうとしている。
<アズマ、彼はこっちに来るなとハンドサインで示してるようだ。恐らく彼からは見えるが俺たちからは死角になる場所に潜んでいるということになる>
恐らくヴェルスの推理通りだろう。彼のその手の動きはここから離れろと、逃げろと告げている。
<だが、彼には申し訳ないがそれを利用しよう。俺たちはエクエから囮になるよう言われてるんだからな>
つまり、僕たちは彼を撃った犯人の方へと、撃たれた彼の方へと近づかなければいけないということになる。
パンッ
先程と同じ銃声が再び鳴る。銃弾はスタッフの頭を貫き、彼は全く動かなくなった。そして、その方向から重いブーツが地面を叩きこちらへ近づいてくる音が聞こえる。
<アズマさん、構えてください!>
リアスにそう促されるも、僕の体は言うことをきかない。全く動けない。
僕は記憶がフラッシュバックしていた。あの日、家族を亡くした日のことを。地面に広がっていく彼の血が、母の血の記憶と重なる。
力が抜けた手はいとも簡単にリアスとヴェルスを床に落としてしまう。耳元でドクドクと脈が音を立て、その音があまりにも大きく、ブーツの音はやがて聞こえなくなる。
<……チッ、リアス少し手を貸せ>
ヴェルスの声が聞こえたかと思えば、ヴェルスだけが人間態になり、体全体を使って僕の視界を覆った。そしてそのまま、耳を腕で塞ぐように僕を彼の胸元へと引き寄せた。
<ターゲットロックオン!>
リアスの声だけが脳内で聞こえる。
それからしばらく無音が続き、次に僕が聞いたのはエクエが心配する声だった。本当はくぐもった銃声や僕とヴェルスの心臓の音も聞こえていただろうが、記憶には残っていない。だから無音というよりは、その一時的な時間の記憶を喪失していると言った方がいいかもしれない。
「アズマ、もう片付いたぞ。大丈夫か?」
――ピピッ
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