第6話 ある種の変装
――ピピッ
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「そんじゃ、街の散策をしようぜ!今回の観測は結構いろんな人と関わるからな。そういう時は、あたかもオレ達がずっとこの街に住んでいた風に振舞わないといけない。ま、中にはこの街に来たばかりだと告げた方が有利な相手がいることもあるけどな。その辺りは……フィーリングだ」
確かに、前回の観測で関わった人はほんのわずかだった。それに、異国の研究者という立場により知識がなくても何も不思議に思われなかった。今回は違う。自分の役をより鮮明にする作業が必要だ。
「こういう時はやっぱレストランだな。でもなぁ……時間軸を戻したせいで知り合ったおっさんたちとまた初対面になるのはキツいんだよなぁ。カウンター席しかないカフェでもいいか?」
そっか。時間軸を蒔き戻すとそうなってしまうわけか。僕にも将来そう言った機会があるかもしれない。そうなったとき、僕は今のエクエのように愚痴を漏らす程度で耐えられるものなのか。いや、エクエは彼らと会うことを拒んでいるから耐えられてないのか。
「エクエに任せるよ」
僕のそんな返事に、エクエは申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
カフェまでの道中では、エクエが知っている限りのこの世界の常識や情勢、主要人物などを教えてもらった。と言っても、特に複雑ではない。情勢については、現在かつて仕事の奪い合いで対立していた警察と私立探偵協会が治安悪化に対処するためルーモアの助けのもと和解し、ともに対処しているということだけだ。それに主要人物というのも、それぞれのリーダーとルーモアのみである。
それにしても、不思議な気分だ。物語がハッピーエンドを迎えたとしても、その後世界が必ずしも幸せであり続けるわけではないなんて。物語が終わっても、フィクション世界の人物たちは生き続ける。難しいな。フィクション世界を知り、実際にその世界の人々と話したことがある自分には、もう物語を書く勇気は、フィクション世界を創世する勇気は湧いてこない。
「よし、着いたぜ……ってやっべぇ!質屋で金を手に入れるの忘れてたわ。アズマたちは先に中で待っててくれ!すぐに行くから」
隠れ家のような半地下のカフェを前にして、エクエは慌ただしく去っていった。
「相変わらず騒がしい奴だな。余計に何故マティさんが『相棒』なのか分からない」
ヴェルスが小さくなっていくエクエの背中にそう呟いた。
「確かにそうですね」
と賛同するリアス。気になるけれど、カフェの中じゃこんな話出来ないしな……。でも、エクエがいない時しかこういう話できないというのも事実。質屋までは距離があるし、多少店に入るのが遅くてもいいだろう。僕はリアスとヴェルスにマティについての話を聞いた。
「僕、マティさん……?のことはカッコいいとしか思ってないんだけど、違うの?」
そんな僕の質問に二人は、
「そりゃ本来の姿がケツァルコアトルだからに決まってんだろ」
「それに、もともとマティさんは一匹狼というか一人でいることが多い方だったんです。ジェマさんぐらいしか懐いていませんでしたし。ただ、ジェマさんが懐いていた理由は全く見当がつきません」
本体の姿がケツァルコアトルという神であり、元一匹狼……。やっぱりかっこいいな。
――ピピッ
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