第1話 状況整理
――ピピッ
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「資料は読み終わったか?」
僕が資料から目を離したのを確認してからそう聞いてきたエクエに頷く僕。だが、資料を読み終わった後の僕の心は若干曇っている。
『魔王は老衰で死にたい』は意図的にバッドエンドにされた作品である。しかし、今回の『ナンセンス・オブリージュ』はそうではない。死者の未練を果たすためとはいえ、僕たちは作者が望んだ結末を迎えた作品に介入して、そのエンディングを否定しなければならない。それに僕は若干の抵抗を覚える。
「じゃあ補足情報として、オレとマティがさっきまでどんなことをしてたのかを伝えるな」
すると、マティがやれやれとでも言うように、口を挟んだ。
「別に詳しく説明するまでもないだろう、エクエ。俺達がやったことはその資料に書かれているまんまであるし、想定以上に治安が悪くて逃げ回ってただけ、だろ?」
「ちょっとマティ、それは言わない約束じゃんか」
すかさずエクエが言い返すも、
「そんな約束をした覚えはないし、お前がアズマにはカッコいい姿しか見せたくないというわがままに付き合う気もない」
「マティのケチ~」
「ケチで結構」
彼らの様子を見るに、マティは思っていたよりも親しみやすいのかもしれない。
「……で?俺達は何を手伝ったらいい」
ヴェルスの発言が、彼らのじゃれ合いを止めた。
「そうだな。エクエ、作戦会議はきちんと行おう」
「もちろん。で、アズマ達にやってもらいたいのは、威嚇射撃と囮」
なんと物騒な。
「アズマ達が資料を読んでいる間に、係長に頼んで俺の剣を再現してくれる賢者の石の欠片を作ってもらったんだよね。もちろん、この剣を見た者についても始末するという条件付きでさ。アズマは現代っ子だから人を殺したことなんてないだろ?だからそういう汚い仕事はオレに任せてくれればいいさ」
「え、エクエはさ」
僕は笑顔を保てそうにない。
「人を殺すことへの抵抗はないの?」
エクエは笑顔で答えた。
「そりゃ、ないわけじゃないぜ。それに、生前に錯乱して殺してしまった友人たちのことを思い返す時もある。時々だけどな。でもさ、オレはここに居続けなきゃいけない理由があるから。オレに出来ることはオレがやらないとね」
錯乱して友人たちを……?彼なりの事情があるのだとは思う。それに、あまり思い返したくないものなのだろうから、彼が自ら話さない限り触れない方がいい気がする。
「だから、お前は手を汚さなくていいんだ、アズマ。特に人間は、殺さなくていいんだよ。それが要因でお前にここを抜けられたらやっぱり寂しいしな」
エクエはそう言って僕の肩に手を乗せた。
「お前たちも気をつけろよ、リアスとヴェルス。今回の世界観に、本来エネルギー弾の拳銃はそぐわない。だからできるだけ高速で弾を出すことと、本物の銃弾に出来るだけ寄せることを意識すると騙せるんじゃね?分かんねぇけど」
享年が近いから仲良くして欲しいとは言っていたけど、やっぱりこういうところは「先輩」って感じがするな。
――ピピッ
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