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○麦の食事処

麦の食事処(しょくじどころ)




秋晴れの 綿雲(わたくも)の隙間から風が吹く


車の窓の匂いに引き憑(つ)かれて、そっと寄り道をしてゆく


空車の無さそうな駐車場に一つの空き晴れにうれしうれし


車から降りれば香るこの麦の味


人混みかき分け並ぶ名順に一つ書き付け足す


早々呼ばれうる吾の名に振り向き返事が万事が如く案内されて席に着く


四方八方や一際厨房の匂いに痛く腹鳴りやまぬこと期待膨らむべし


お冷や通され注文取られての待ち時間


見上げりゃ梁(はり)の御倉よ


天井まで高さ五メートルくらいか、いやはや高し


一段二段三段ぶっとい梁が横に貫き縦に手延べ以上の円柱の大木、裏拳を握り打てばコンコンとなる


梁ツヤなるまま見とれば、それは梁で吊られし物おかげかと思ふ。障子紙で綴られた両手で抱え込むくらいの丸い照明器具に照らされてのことと知り


ゆらゆら微かに揺れて空調とをほのめかしている


秋の窓は荒いでり小枝をしならせ葉を落としよるわんぱく小僧か


失敬ならぬことを知りながらぼうっと隣人を眺めよると、ずぞぞっーやらずずっやらすする音が聞こえる


ああ食べたい 待ち遠し


冷や水で口と腹とを誤魔化し、梁、柱、窓外、隣人を繰り返す


ふふ楽しいな


ややああ待ち遠し 言うてはならぬ


タタタ 嗚呼来たか


コトン もあもあっと湯が立ち上る


すーっ 待ちに待った麦の味






すめらすめら


かわるかわる


うれしうれし


たのしたのし


ありがたいありがたい


愛する愛する


出会いに感謝出会いに感謝


今有一切大願成就


                  杉乃中かう 拝


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