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生命のりんご

名(な)も知(し)らぬ あなたに会(あ)えて うれしいの


生命(いのち)の交流(こうりゅう) 命懸(いのちが)けだもん







りんごがありました


りんごが話をして私と対話しようと試みています


「りんごがしゃべるなんて思わなかった」


でも目の前で机に座ってしゃべっていると言います


「座りがいい尻だよね」


とか冗談を言っています


「りんごはユーモアがあるんだね」


そのりんごは甘い匂いを漂わせた果実でありしゃべることのできる意思ある生命でした


今までただ在るだけのりんごが当たり前でしたがこのりんごはしゃべる


私は動揺しました


けれど害なくただしゃべるだけのりんご


しゃべる機能を持っているということにしたのです


「おはよう。今日は穏やかに過ごせそうだね」


なんて言いながら自身の実を食べることを勧めてきます


ことあるごとに「今日が食べ時だよ」言います


「なんでそんな食べて欲しがるのさ?」


「もちろん、食べて欲しいからさ。今もおしゃべりできて楽しいけれどね」


りんごは役割自体は変わっていないから喜んで食べてくれと言います


りんごはもとい草木は虫鳥獣に食べられるのがうれしいから出世するからどうか味わって食べてとも言います


食べられるのが嬉しい正気を疑いました


私の常識は砕かれて


さらに粉々に砕こうとする


悪魔のリンゴなのか


目の前にあるりんごは楽しそうです


ただ在るだけなのに


私は戸惑いました


今までそういうことは無意識のうちに感謝して食べるものであり


しゃべる生命のことを考えて食べるのは難しく感じました


今までは当たり前に食べていたのに当たり前ではなくなった


とまどい葛藤する私にりんごは言います


「しゃべるからとか、無遠慮に食べれないとか、罪悪感とかそんなのは考えすぎなんだよ。生命を大切にしたいとと思うなら、なおさら僕を食べてよ。受け取って良いんだ。君に食べられること嬉しいだろうなぁ」


「どうして身を捧げられるのさ?」


「私が食べてしまえば君は死ぬんだよ?」


りんごは死ぬもんかと朗らかに笑って言い切りました


「りんごの木から実が芽生え今までの一生を経験した。だから次に向かう。じゃないと、僕は腐ってしまう。腐るか、食べられるかで次の生が違ってくるんだ。食べられることを経験するには食べられなければ次に行けない。次の生も美しいと知っているから。だって僕が言うんだ。間違いないよ!」


りんごの言っていることはほとんどわかりませんでした


けれどりんごは食べられることを決めていることはわかりました


りんごは言います


「今を命懸けで味わう。これ以上に喜ばしいことはないよ。それには、君の許しが必要なんだ。君が僕を味わうということは、僕が君を味わうことでもある。生命と生命の交流だね。ハハッ、そんな顔をしないで笑って味わって食べてよ。今(・)が一番食べ頃なんだ」


どんな顔をしていたでしょう


りんごを手に取ります


りんごはもう何も言いません


ですが穏やかな感情が伝わってきます


口の前に持ってくると私のお腹が鳴りました


私はりんごと私の願いを叶えるべく食べます


勇気が入りましただけどその勇気もりんごが与えてくれました


私は笑ってりんごを食べました


おいしかったです




すめらすめら


かわるかわる


うれしうれし


たのしたのし


ありがたいありがたい


愛する愛する


出会いに感謝出会いに感謝


                  杉乃中かう 拝



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