↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女を辞めたので、今日から魔王城で働きます  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/46

第23話 聖女の認定式に呼ばれました

「……私も、ですか?」


 翌朝。


 王城の食堂で朝食を食べていた私は、届けられた書状を見ながら首を傾げていた。


「はい」


 王太子殿下が頷く。


「新聖女エミリアの正式な認定式です」


「でも、私はもう聖女ではありませんよ?」


「だからこそです」


「?」


「前任の聖女であるあなたから、新しい聖女へ聖女の証を引き継ぐ形になります」


「なるほど……」


 私は書状を見る。


 確かに、私の名前がしっかり書かれている。


「……分かりました」


「本当に?」


「はい」


 私が頷くと、隣から声が飛んできた。


「俺も行く!」


 レオンさんだった。


「え?」


「護衛!」


「でも、王都ですよ?」


「王都でも何が起こるか分からないだろ?」


「確かに……」


 レオンさんは真剣な顔で頷く。


「それに、俺も新しい聖女に会いたい」


「昨日会ったじゃないですか」


「もっと仲良くなりたい!」


「そうですか」


 すると反対側から。


「私も行く」


 魔王様だった。


「魔王様も?」


「ああ」


「どうしてですか?」


「……護衛だ」


「レオンさんと同じですね」


「…………」


「…………」


 魔王様とレオンさんが睨み合う。


「俺がいるのに?」


「お前がいるからだ」


「なんでだよ!」


「…………」


 朝から騒がしい。


 クロードさんがため息をついた。


「殿下」


「なんだ?」


「魔王様」


「なんだ」


「お二人とも」


「…………」


「完全に口実ですよ」


「…………」


「…………」


 二人とも黙った。


 私は首を傾げる。


「何の口実ですか?」


「いえ」


 クロードさんは笑った。


「何でもありません」


     ◇


 認定式の日。


 王都は朝から大騒ぎだった。


 広場には大勢の人が集まり、神殿の鐘が鳴り響いている。


「すごい人ですね……」


 私は窓から外を見た。


「新しい聖女ですからね」


 王太子殿下が言う。


「人々も期待しているのでしょう」


「エミリアさん、大丈夫でしょうか」


「緊張していると思いますよ」


「そうですよね……」


 私は少し心配になった。


 そして。


「リリアーナ様」


 後ろから声がした。


 振り返ると、白い衣装を着たエミリアが立っていた。


「エミリアさん」


「どうですか?」


「とても似合っています」


「本当ですか?」


「はい」


 エミリアは嬉しそうに笑った。


「でも……」


 すぐに表情を曇らせる。


「少し怖いです」


「…………」


「昨日までは普通の女の子だったのに」


「はい」


「今日から、みんなが私を『聖女様』って呼ぶんですよね」


「そうですね」


「ちゃんとできるでしょうか」


 私はエミリアの手を握った。


「大丈夫ですよ」


「……リリアーナ様」


「私も最初は何も分かりませんでした」


「本当ですか?」


「はい」


「でも……」


 私は笑う。


「分からないことは、これから覚えればいいんです」


「…………」


「一人で全部背負わなくていいんですよ」


 エミリアが目を潤ませた。


「……はい!」


     ◇


 その様子を少し離れた場所から見ていた二人。


「……あれは反則だろ」


 レオンが呟く。


「何がだ」


 魔王様が答える。


「リリアーナ、ああいうこと普通にするじゃん」


「……そうだな」


「手まで握ってる」


「…………」


「魔王?」


「何でもない」


 魔王様の眉間に皺が寄った。


「お二人とも」


 クロードがやって来る。


「顔に出ていますよ」


「何がだ」


「嫉妬です」


「「していない」」


「息ぴったりですね」


「…………」


「…………」


 そして。


 認定式が始まった。


     ◇


 神殿の大広間。


 祭壇の前にエミリアが立つ。


 その後ろに私。


 そして王太子殿下。


 さらに両脇には、なぜか魔王様とレオンさん。


「……魔王までいるのか」


 貴族の一人が小声で言った。


「英雄レオンも……」


「なぜ聖女の認定式に?」


「さあ……」


 ざわめきが広がる。


 私は少し困った。


「魔王様」


「なんだ」


「目立ってますよ」


「……分かっている」


「帰ります?」


「帰らない」


「レオンさんも」


「帰らない!」


「…………」


 二人とも頑固だった。


 その時。


 神殿長が祭壇の前に立つ。


「新たなる聖女――」


 大広間が静まり返った。


「エミリア」


 エミリアが一歩前へ出る。


「はい」


「汝は人々を救う力を持つか」


「……はい」


「汝は聖なる力を正しく使うことを誓うか」


「はい」


「そして――」


 神殿長が、私を見る。


「前聖女リリアーナの意思を受け継ぐことを誓うか」


「…………」


 私は驚いた。


 エミリアも驚いている。


「…………」


 エミリアが私を見る。


 私は静かに頷いた。


「……はい」


 エミリアは答えた。


「リリアーナ様の意思を受け継ぎます」


「では――」


 神殿長が聖女の証を掲げる。


 その瞬間。


 光が大広間を包んだ。


「……!」


 眩しい。


 けれど。


 その光の中に。


 私は何かを感じた。


「……え?」


 胸元が熱い。


 以前、私が聖女だった頃に持っていた力。


 それと同じ。


 けれど。


 少し違う。


「リリアーナ?」


 魔王様が私を見る。


「大丈夫か?」


「はい……」


 私は胸元を押さえる。


「ただ……」


 何かがおかしい。


 光が強すぎる。


 そして。


 祭壇の上にあった聖女の証が。


 突然――


 ひび割れた。


「えっ?」


 パキンッ。


 小さな音。


 そして。


 聖女の証が二つに割れた。


「…………」


 全員が凍りついた。


「これは……」


 神殿長が震える。


「ありえない……」


 エミリアが青ざめる。


「私が……失敗したんですか?」


「違います!」


 私はすぐに駆け寄った。


「エミリアさんのせいじゃありません!」


 その時。


 割れた聖女の証の中から。


 一筋の光が飛び出した。


 光は宙を舞い。


 私の目の前で止まる。


「……?」


 そして。


 光の中に。


 一人の少年の姿が映し出された。


 黒い髪。


 赤い瞳。


 まだ幼い。


 けれど。


 私は知っている。


「…………魔王様?」


 私の隣にいる魔王様が、息を呑んだ。


「…………」


 少年は、誰かに向かって笑っている。


 その隣には。


 幼い少女。


 金色の髪。


 白い服。


「…………私?」


 私の声が震えた。


 すると。


 映像の中の少年が、少女に手を差し出した。


『大丈夫』


 幼い魔王。


 そして。


『僕が守るから』


「…………」


 魔王様が動けなくなる。


 私は映像を見つめる。


 なぜ。


 どうして。


 私と魔王様が。


 こんな幼い頃から――


「…………」


 映像が消える。


 大広間に静寂が戻った。


 そして。


 割れた聖女の証の奥から。


 一枚の紙が落ちた。


 私は拾い上げる。


 そこには。


 たった一行だけ。


『三つの力が目覚めた時、扉は開く』


「…………」


 魔王様が紙を見る。


 レオンさんも。


 王太子殿下も。


 エミリアも。


 全員が黙っている。


 そして私は。


 胸の奥に浮かんだ一つの疑問を、口にした。


「……魔王様」


「なんだ」


「私たち……」


 私は震える声で尋ねた。


「昔、本当に会っていたんですか?」


 魔王様は答えなかった。


 ただ。


 赤い瞳で私を見つめていた。


 その表情は――


 何かを思い出しかけているようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。