第14話 魔王城の休日、なぜか恋の勝負になってます
休日。
魔王城の広場には、朝からたくさんの魔族が集まっていた。
「本日は魔王城交流イベントです!」
壇上に立っているのはクロードさん。
「普段は仕事ばかりの我々ですが、今日は仕事を忘れて思いっきり楽しみましょう!」
「おー!」
「楽しみだ!」
魔族たちが盛り上がる。
私も拍手をした。
「楽しそうですね!」
「ああ」
隣にいる魔王様も頷く。
その反対側にはレオンさん。
「今日は何するんだ?」
「いろいろありますよ」
クロードさんが紙を広げる。
「第一種目――」
魔族たちが静かになる。
「料理対決!」
「また!?」
私は思わず声を上げた。
「第二種目――宝探し!」
「おお!」
「第三種目――二人一組での障害物競走!」
「…………」
魔王様が私を見る。
レオンも私を見る。
「…………」
「…………」
嫌な予感がする。
クロードさんが笑顔で続ける。
「そして最後に――」
「はい?」
「自由時間です!」
「普通ですね」
「ええ」
クロードさんが意味ありげに笑う。
「ただし、自由時間は二人一組で行動してください」
「…………」
魔王様とレオンが同時に私を見る。
「リリアーナ」
「リリアーナ!」
「…………」
私は頭を抱えた。
「どうして私を見るんですか?」
「いや」
「別に」
二人とも視線を逸らした。
◇
「第一種目、料理対決!」
厨房。
参加者が並ぶ。
魔王様。
レオン。
そして――
「私も参加します!」
私。
「リリアーナ様まで!?」
クロードさんが驚く。
「だって楽しそうですから」
「……そうですか」
クロードさんは少し考えた。
「では、魔王様、レオン様、リリアーナ様の三人でチームを組みましょう」
「三人で?」
「はい」
魔王様が少し嬉しそうになる。
レオンも笑う。
「一緒に作るのか!」
「楽しそうですね」
私は笑った。
「何を作りましょう?」
「俺は肉!」
「私は魚がいい」
「じゃあ、両方使いましょう」
「…………」
「…………」
「どうしました?」
「リリアーナが決めるなら、それでいい」
「俺も!」
こうして料理が始まった。
◇
「リリアーナ、これ切る!」
「はい。お願いします」
「魔王、これ混ぜて!」
「分かった」
「魔王様、火をお願いします」
「ああ」
三人で料理を作る。
不思議だった。
魔王様とレオンは普段なら張り合っているのに。
料理を始めると意外と息が合う。
「魔王、そこ押さえて!」
「分かった」
「リリアーナ、味見!」
「はい」
「どう?」
「もう少し塩を――」
「分かった!」
「…………」
魔王様が少し笑っている。
「楽しいですね」
私が言う。
「ああ」
「うん!」
三人で笑う。
すると。
「完成!」
大きな皿に料理が盛られた。
肉と魚。
野菜。
そしてパン。
「美味しそう!」
私は目を輝かせた。
「いただきます!」
一口食べる。
「美味しい!」
「本当か?」
「はい!」
「やった!」
レオンが喜ぶ。
魔王様も嬉しそうに笑った。
「三人で作ったからですね」
「そうだな」
「うん!」
◇
「第一種目の優勝は――」
クロードさんが結果を発表する。
「魔王様、レオン様、リリアーナ様のチームです!」
「やった!」
レオンが飛び跳ねる。
「よし」
魔王様も拳を握る。
私は拍手する。
「楽しかったですね」
「…………」
「…………」
二人とも私を見る。
「どうしました?」
「いや……」
「別に……」
二人とも嬉しそうだった。
◇
第二種目。
「宝探しです!」
広い庭に大量の箱が置かれる。
「この中から金色の鍵を見つけてください」
クロードさんが説明する。
「制限時間は三十分!」
「スタート!」
全員が走り出す。
「リリアーナ!」
「はい!」
「こっち!」
レオンが手を振る。
「いや、こちらだ」
魔王様も呼ぶ。
「えっと……」
私は二人を見る。
「一緒に探しましょう!」
「分かった!」
「ああ」
三人で探す。
「ここにはない」
「こっちもない!」
「では、あちらを――」
「あった!」
レオンが叫んだ。
「これ!」
手に持っているのは金色の鍵。
「見つけたんですか?」
「うん!」
「すごいです!」
私が褒める。
レオンが嬉しそうに笑う。
すると魔王様が。
「……よく見つけたな」
「へへ!」
「やるじゃないか」
「ありがとう!」
二人が笑う。
私は嬉しくなった。
「本当に仲良くなりましたね」
「…………」
「…………」
二人とも少し照れた。
◇
そして最後の自由時間。
「では、二人一組で自由に過ごしてください」
クロードさんが宣言する。
「…………」
「…………」
魔王様とレオンが私を見る。
「リリアーナ」
「リリアーナ!」
「はい?」
「私と――」
「俺と――」
二人が同時に言った。
「…………」
「…………」
私は考える。
「三人で行けばいいのでは?」
「…………」
「…………」
二人が固まった。
「駄目ですか?」
「……いや」
「別に……」
「では、三人で!」
「うん……」
「……ああ」
三人で城内を歩く。
私は楽しかった。
「今日は本当に楽しいですね」
「そうだな」
「俺も!」
「こういう休日もいいですね」
「…………」
魔王様が私を見る。
「リリアーナ」
「はい?」
「来週も――」
「魔王様!」
突然、魔王軍の兵士が走ってきた。
「何だ」
「緊急の知らせです!」
「内容は?」
「人間領から使者が来ています!」
「…………」
魔王様の表情が変わった。
「人間領から?」
「はい」
私は不安になる。
「何の用でしょう?」
兵士が答える。
「それが――」
「はい」
「『元聖女リリアーナ様にお会いしたい』とのことです」
「…………」
空気が変わった。
魔王様が私を見る。
「リリアーナ……」
「…………」
私は胸の奥がざわつくのを感じた。
聖女を辞めた。
王都を離れた。
魔王城で働き始めた。
もう過去のことだと思っていた。
なのに――
人間領が、再び私を呼んでいる。
「どうしましょう……」
私が呟くと。
「行く必要はない」
魔王様が静かに言った。
「ですが――」
「私が話をする」
「魔王様……」
「君を、また聖女として連れ戻そうとするなら」
魔王様の目が鋭くなる。
「今度こそ、私が止める」
その言葉に。
私の胸が、ほんの少しだけ熱くなった。
そして――
魔王城の休日は。
ここから一気に、波乱へと変わっていくことになる。




