第九十五話 兄弟だったなんて……
『兄さん?』
「……さえ……さえぐ……三枝さん!」
何度も櫻井は声掛けしていたのだろう。
薫子は何が起きたのか分からず呆然としていた自分に気づくと
「すみません……何でしょうか?」
櫻井に聞き返した。
「大丈夫?顔色悪いけど」
「はあ、大丈夫です。失礼しました。」
「来週中に今月の一回目の意見交換会が開催される予定なんだけど、稲垣先生は本当にお忙しい人でね。最近、テレビとかにもコメンテーターとして出たりして、まあハンサムだからさ。君もそう思うだろう?」
「あ?……はい」
「何だか、さっきと違って元気ないけど……君、ダメな日にちとかあるかな?」
「それっての日程のことですよね?私なんかが本当に出席しても大丈夫なんでしょうか?」
「先生がもう学年担当に話しておくって言ったんだから、そこはもう決定だよ。えーと一年生は水・木が製図だよね?」
「はい」
「じゃあ、そこは避けてになるか……」
「え?私のスケジュールでのお話になりますか?それは、あの……」
「これは先生からのお達しだから、今更変えられないよ。それで三年生の掲示板を三枝さんが見に来るのは大変だろうから、日にちとどこの講義室を使うか決まったら僕が事前に伝えに行くから、宜しくね」
「あ……はい、分かりました。」
と、肩を落としながら薫子が答えた時、横から会話に入り込んで来た人がいた。
「櫻井君、三枝さんをもう引き取ってもいいかな?」
高見沢教授の助手の坂崎だった。
「あぁ、こちらの話は終わったからね。ではまたね三枝さん。坂崎君、また今度飲みに行こうね!」
「あぁ、じゃ、また」
坂崎が言うと、櫻井は急いで助教授室のドアを閉めると、中からすぐにまた電算機を叩く音が響いて来た。
「助手も助手で"高層"は忙しいんだよね」
坂崎が薫子に話しかけた。
「あの、坂崎さん、私に何のご用でしょうか?」
「あれ?三枝さん、また体調悪いんじゃない?顔色悪いけど……大丈夫かなぁ。高見沢教授がお話があるって言ってるんだけど」
『今日は何の日なんだろう……呼び出しばかり』
「大丈夫です。伺います。」
と、答えた。




