第九十一話 楽しい会話??
直希は微妙な顔つきで質問を返して来た。
「では法制上の問題をクリアしたとして、君が三建ての家屋を在来軸組工法で建てるとしたら、まずは何を考える?」
「三階建ては自重、建物の重さが大きくなるため、一、ニ階の柱に高い強度と耐久性が求めます」
「土台には何を使う?」
「土台には桧または 栗《クリ》、あるいは防腐処理を施した米栂。湿気に強く、腐りにくい木材が選びます。」
「柱は?」
「 通し柱・隅柱には桧 の四寸角以上のものを……ただ三階建ての場合の一階の柱には五寸角を使う方が得策かと考えます」
「梁は?」
「梁には 松、特に地松や米松を使います。横方向の荷重に強く、粘りがあるため、重い上層階を支えるのに適しているものをと考えます」
「何年ものを使う?」
「木材として理想的なのは"その建物が建っている期間と同じだけ生きた木"と言われておりますが、一般的な住宅資材としては、柱材の杉・桧は樹齢四十年から六十年程度、大梁の松で樹齢六十年から百年 以上のものを使うようです」
「伐採から乾燥までの期間は?」
「現在は天然乾燥を重視しておりますので木の水分が抜ける秋彼岸から冬彼岸に伐採し、 葉枯らし乾燥期間として山に三ヶ月から半年放置、葉から水分を蒸発させた後、桟積み乾燥として製図・製材された後、風通しの良い場所に積み上げ、柱材は最低半年から一年。厚みのある梁は一年から二年以上になります。いずれにしても最低でも二年ほどの期間が必要です」
「延床面積約三十坪ほどの家屋に必要な材木量はどれくらいになるか計算をしたことはあるかな?」
「延床面積が約三十坪の三階建て住宅と仮定すると、必要な材木量=体積の目安としては、延床面積一坪あたり約0.2から0.25立方メートル(\bm{m^3})の木材を使用します。坪 × 0.25 = 約7.50から8.0\bm{m^3}。
本数としては柱四寸角三メートルものだけで百本から百二十本程度…これに梁、桁、垂木、野地、床材などが加わりまして」
薫子が答えたところで、直希は手を少し挙げて話を止めさせた。
「三枝さん、素晴らしい。これはお世辞でも何でもなく、よく勉強しているね。ここにはその話についていける学生はまだいないだろう。ちょっと試すつもりがそこまで答えられるとは驚きだよ。実に先々が楽しみだ!」
直希が本当に楽しそうに褒める。
薫子は思わずお礼を言ってお辞儀した。
「有難うございます」
すると直希は続けて、こう言った。
「そこで先程の君からの質問なんだが、僕も生まれたばかりの頃の話なので残念ながら明確には答えられそうにない。今日のところはその話、僕への課題にして貰えないだろうか?」
「え?あ、はい。宜しくお願いします」
薫子に着席を促すと直希は他学生に話を振った。
「では他に、男子学生諸君どうかな?」




