第八十四話 ひと泳ぎの後で
「身体が重い」
『このくらいでフラフラだなんて、たるんでるな』
と、思っていた時、先回りした祐希が新しいバスローブとバスタオルと別にタオルを持って来た。
「意地悪してごめん。身体拭いてからこれに着替えて」
薫子が躊躇《ちゅうちよ》したのを祐希は察して、
「バスローブ広げて見ないようにするから、その間にタオルで身体拭いて、終わったらバスローブかけるから言って」
「うん。わかった」
そして祐希に言われた通りまずはびしょ濡れのバスローブを脱いでタオルで拭く。
「終わったよ」
「こっちのタオルは髪の毛用に使って」
祐希は新しいバスローブを薫子の肩にかけると下に落ちている濡れものを持ってリビングに入って行った。
早くも夕焼け空が広がり始めてる。
まだ午後四時前なのに九月も末になると急に宵闇が早くなる。
『そろそろ帰る時間かな』
薫子は一つため息をつきながらリビングに向かった。
戻ると脱いであった靴下を履いて中に入って窓を閉めながら
「脱いでおいて正解だった」
鼻で笑った。
キッチンから甘い香りがして来て祐希がマグカップを二つ持って出て来た。
「温かい、暖炉ってすごいね」
薫子が言うと
「そうだね、やっぱり直火だからかもね。はい、これホットミルク。いくら何でもプールはなかったね……これで身体温めて」
「有難う」
二人は少しでも暖炉の近くに直に腰を下ろすと、
静かな時間が流れてミルクを呑む音も心地よい。
飲み終えると、祐希が
「カップ洗って来る」
薫子のカップを受け取ろうとすると
「私が」
「お客様だからね、今日は任せて」
祐希がキッチンに入って行った。




