第八十話 もう一つの家
その前でバイクのエンジンを止めると祐希が言った。
「結局、降られちゃったね!俺雨男なのかも、ごめん!」
「ううん、私かもだし……二人の時、雨よく降るよね」
祐希に手を貸されてバイクから降りる薫子が聞く。
「ここは?」
「今日の目的地、俺んちです」
「え?新宿じゃないの?」
「もう一軒の俺んち」
門扉の錠前を外して扉を開けた。
中に入ると、手入れの行き届いた庭が面前に広がり、その奥に平屋ながら高さも奥行きもありそうな家屋が見えた。
『あれ?ここ見た事ある?』と薫子は思う。
バイクを引きながら、門扉を中から閉めると祐希が
「早く中に入ろう」
と言った。
玄関も高さのあるオーク色の木の扉、その上には葡萄の木のモチーフのはめ殺しのステンドグラスが入っている。
バイクを家の前に停める。
扉を開けると祐希がヘルメットを外して床に置くと
「俺達だけだから入って」
玄関中に誘う。
「待っててタオル持って来るから、そこで上着とか適当に脱いで」
ブーツと靴下を脱ぎながら言うと左廊下奥から二番目の扉を開けて入って行った。
「広いし、天井高い」
薫子は言いながらヘルメットを外す前にリュックから自分のタオルを出して、祐希と自分のヘルメットの二つを拭くと玄関の上り框の端の方にもう一枚新しいタオルを出して下に引いて並べ直した。
背の高い玄関扉の上は天井までステンドグラスが続いていて、まるで教会の様だ。
ジャケットを脱ぐと中は濡れていなかったのでタオルで拭くよりも雨水を落とそうと一旦薫子は玄関から外に出ようとした時、
「カコちゃん!どこ行くの?!」
祐希が慌てた様に声を掛けて来たのに薫子の方が驚いて
「あの、えーと、外で雨水を落とそうと思って…」
「え、あ、そう……」
「玄関じゃ悪いと思って……」
「どっか行っちゃうかと思った……ごめん」
「じゃ、ちょっと叩いて来る」
「いや、それ俺がやるから!それよりジーパンびしょ濡れじゃん。あの今空いてるドアのところランドリーだから、あそこで何か適当に使って!これ、とりあえずタオルね」
薫子のジャケットを取り上げると祐希は元々置いてあったサンダルを引っ掛けて外に出た。
いつもとちょっと違う祐希の態度にドキドキした薫子。
ナイロン製のトレッキングシューズは沁みる程度だったが、確かにジーパンはずぶ濡れだった。
祐希から貰ったプルオーバーがが首元まできっちりしていたのでジャケットのチャックを上まできちんと閉めていなかった。
そのため肩のところまで水が入って沁みている。
「このまま入ったら廊下濡らしちゃうかな?」
と思いつつも先程祐希が既に雨水を垂らして移動したので廊下は濡れている。
そこをヘルメットを拭いたタオルで後ろ向きに辿り垂れた水を拭き取りながらランドリールームに入ると一旦ドアを閉めた。
とりあえずジーパンを脱ぐ。
濡れたジーパンのせいで靴下も結局濡れて、結局、プルオーバーも中のシャツも……下着までも濡れてる。
畳んただシャツに下着を包み、一番濡れてるジーパンをフリースで包んで持って出ることにする。
「これ、乾燥機?洗濯機?海外製かな?」
縦型の丸窓の扉の機械が二つ壁に嵌め込んである。
「これ使っていいのかな?」
棚に置いてある中からバスローブを見つけた薫子は身に何もつけないまま、直に着ると紐をギュッとリボン結びをした。




