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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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8/9

第八話 距離を置かれたら…!?


どうして今こんな話をされたのか?


『私何かしちゃったかな…』

製図室に移動する為にそれぞれが教材を持って講義室から出て行く。

いつもなら「カコちゃん行くよ」と声を草壁さんあたりが声掛けしてくれるのに、今日はそれもない。木元の席から自席に戻った祐希は自分の荷物を持つと薫子の方も見ないまま行ってしまった。

まだ、講義室には半数くらい学生はいる。


『あ、そうだ…製図の前にはトイレ!』

大多数の学部が入っている新校舎と異なり、工学部が使用している旧校舎は元々男子学生用トイレは多めだが、女子学生用は後から取ってつけた様なところにしかない。

講義の合間に行こうとしても、前の時間の講義が押したりすると、次の講義までに戻れないほど遠くて我慢することもあるくらいだ。


ただこの大講義室からは製図室への通りすがりにトイレがある為、移動を含めても少し余裕もあった。

スケールやら何やら入った大荷物を持ち上げるとトボトボと歩き始めた薫子は、今絶望感に打ちひしがれていた。

そんな時背後から「三枝さん」と声を掛けられた。振り向くと見覚えがない背の高い大人びた風貌の男子学生が一人。

「何でしょう?」

と薫子。

「あの、今日は一人なんだね?いつも誰か前の方の席の人達と一緒だったから声掛けにくくて……今ちょっとだけいいですか?」

『はあ?ワタシはトイレに行きたいんですけど!』

と思いながらも

「はあ。」

頷きながら答える。

「多分、哲学のノートを一番最初に借りた者で、あの時は君の右側のはみ出し文が、講師の口頭で話したことを書いてるのかと勘違いして変な質問した後ろの方の席の山本靖之って言いますが、なんかすみませんでした、あれからノート貸す度に一言付け加える様になったそうで」

「あ、あの時の。」

『そうだ、この人だ…しつこく色々質問して来て気にしないで下さいって言ったのに、まだ言うんだ』

「あの時のことはもう忘れて下さい、私の方は忘れてました。」

薫子は終話を目指すも

「いや、この前、琥原君にもノート貸してた時にも話してたから気になって…」

「あれは初めてお会いした方にお貸しする事になった時だったので念のため話しただけです、気にされていたのなら申し訳ありません。」

「あの責めたい訳じゃなくて……僕、話しが下手ですみません、ただ三枝さんとは以前からお話ししてみたかったから。」

「山田さん、本当に申し訳ないのですが、私ちょっと急いでますので失礼します!」

「え?三枝さん、怒ってます?」

「怒ってませんよーでも急いでるんですー!」

ニコリと笑いながら振り向くと一目散で講義室を後にした。廊下を小走り気味に歩いていると今度は後ろから肩を叩かれる。


「ねぇねぇ、僕、鈴木優磨って言うんだけど、もし君が後方席にいたら一番近くの席だった男」

「はぁ、それでその鈴木さんは私に何のご用でしょうか?」

「あのさ、僕達付き合わない?」

「え?」

「僕んち建設会社でさ、僕はさ、ゆくゆくは社長になる訳、そしたら君社長夫人だよ」

「からかってますか?」

「え、本気だってば」

「今どうしてそんな話が出るんですか?」

「カキクがいないからだよ、あ、今はカキクコか」

「?」

「前の三人組だよ、あいつらが君の事毎日きっちりガードしてたから話もできなかったからさ」

「ガード……」

「僕はまた君は琥原の彼女とかでヤツが出てくるまでガードしてんのかと思ったくらいさ」

「そ、そ、それはないです。」

「じゃ彼氏いないんでしょ?だったらいいじゃん、

僕達お似合いだと思うよ」

確かに見た目はカッコいいというか可愛い系?作業着として着ているであろう私服もオシャレ感があるけどと薫子は思った。

「あの、鈴木さんは大学に何しに来たんですか?」

「え?そりゃ一応建設会社の次期社長としては建築のノウハウは知っておかないとって」

「建築士にはなりたくないんですか?」

「狭き門だから無理って元々分かってるし、だから卒業さえ出来ればいいんだってば、建築士は雇えばいいんだから」

「建築士になりたいから学びに来てる訳ではないんですね?」

「学ぶって元々勉強は嫌いだし渋々って感じだから内申もギリセーフラインで滑り込んだんだもん」

「では、お付き合いなんて無理です。」

「どうして?僕と将来結婚したら社長夫人だよ」

『話が飛ぶ人だなー』

と思いつつも薫子は毅然とした態度で鈴木に告げる。

「私が今ここにいるのは、建物を建てるのに必要な知識を身につけて、いずれかは自分で設計した建築物を建てたいからです。」

「うちは建設会社なんだから君に設計させてあげる事も出来るよ」

「もし私がお付き合いする人を選ぶなら同じ志しを持った方がいいので!失礼します!」

一礼してトイレに急ぐ薫子だった。


『何あれ?変な人…本当に色々な人がいるんだな』

気づかなかっただけで薫子は自分の事を観察されていたのかと思うと気分が悪かった。

ようやくトイレにも行かれ製図室に移動する為の廊下の角を曲がった時、10人ほどの集団が待ち構えいた。

『何ごと!?』

「三枝さん、僕ら先輩方と建物を見学したり、工法の勉強したりする研究会に所属してるんだけど、それで良かったら三枝さんも参加してみない?」

「あの私人見知りなんで五人以上のグループはムリなんです、ごめんなさい」

笑顔で答え、相手の反応も見ずに先を急いだ。


トイレで作業着、とは言っても決まったものごある訳ではなく本人達が汚れても構わない服ではあるがそれに着替え、ちなみに黒の長袖のシャツに赤を基調にしたチェックのネルシャツ、チノパン、汚れても構わない黒のスニーカーが薫子の定番だった。そしてようやくと言う感じで製図室に到着。

水平線と平行線の入りと抜きを極める実技もそろそろ終わりを迎える。ゴールデンウィーク中も自宅にA2判ドラフターで必至に練習をしていた薫子だが、どうしても線終わりまで同じ強さが続かないことがある。授業終わりの提出時、突き返される学生もいる中、返された事はなかったものの、自分としては納得は行ってなかった。

それでも今日の二コマと明日の二コマで納得のいくものをどうしても提出したいと考えていた。


製図室の扉の前で思うところがあって一呼吸してから扉を開けた。

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