第七話 距離を置くって?
そして二人が昼ご飯の後片付けも終わり…あと二十分で次の講義が始まるという頃、わらわらと学生達が次の製図に備えて作業着に既に着替えて講義室に戻って来てる者もいた。
作業着とは言っても汚れてもいい私服だ。
「おーい祐希!」
香山の席に溜まる様に三人組がおり、木元が自席に座っていた祐希を呼びつけて自分の席に座らせる。
「何?」
「あれ?機嫌悪くない?」
と草壁。
「そんなことねぇーし、何?…あ、木元、プリンの事教えてくれてありがとな、以上」
「おいおい、どうした?何かあったのか?」
「あの子が」
「あの子ってカコちゃんのことかよ?」
「純粋無垢過ぎて……席に戻る」
「それはお前だって似たようなもんじゃん、くよくよ悩んで一度は大学辞めようとしたのに来る気になった理由の一つは絶対カコちゃんだろ?」
と木元が言うのに対して祐希は
「いや、連休中に線引きして楽しくなって早くパースもやりたいって、俺やっぱり建築が好きだったんだって思って」
と言い返すが、
「そう思わせてくれたのは三枝さんかも……」
そんな祐希を見て香山が言う
「あのさ、お前はさ、これからカコちゃんとどうなりたいの?」
「え?どうって?」
顔を真っ赤にして祐希が問い返すと草壁に
「好きって言っちゃえばいいのに」
と言われ
「女の子にこんな気持ちになったのは初めてだけど、まだ知り合って何日も経ってないのに三枝さんに対してドキドキしたりギュッってなったりで自分自身変だと思ってるのに、幼稚園児じゃあるまいしそんな風に簡単に言えるかよ…」
『当たって砕けたら友達でもいられなくなるかもしれない方が恐怖なんだよ』と思いつつも更に顔が赤くなった祐希に
「固形炭酸王子もそんな風になるんだね!好き好きって言ってる様に聞こえるけどねー」
草壁が笑いながら冷やかすと
「その何だか分からん呼び方やめてくれ!嫌な事しか思い出さない…」
『でも本当は自分でも分かってる、本当にあの子の事が好きなんだ……独り占めしたい』
「言ってやろうか?お前今カコちゃんを独占したいと思ってるだろ?」
木元に言われて
「えっ!!」
祐希が驚きのあまり立ち上がった。
三人共ニヤニヤしてるのを見て祐希はムスッとした顔で座り直す。木元が祐希に言う
「ちょっと待ってろ、お前ここにしばらくいろ」
「何で?」
「ここに座ってろ、皆んな絶対後ろ見んなよ、オレはこれからカコちゃんを一押ししてくる」
「一押しでも何でもしてくれ……」
木元の席の机にに打っ伏した祐希だった。
木元は薫子の席に向かうと横にしゃがみ込んで机に手を掛けて話しかけようとした時、薫子の方から
「木元さん、何ですか?」
笑顔で言われた。
『マジ可愛い!つかこっちは機嫌良さそうなのに』
「あのさカコちゃん、これからオレの言うことよく聞いてね」
「え?はい」
「カコちゃんはさ、今彼氏いる?」
「ええー!いません!いません!……というか、お恥ずかしながらそんな話、皆無です。」
「いや、そんな恥ずかしいことじゃないよ。」
「そうですか……」
「じゃ、ここからが本題ね。」
「え?」
「大学生になる前、男のことで困ったこととか無かったかな?」
「……ない訳でもないです。」
「そりゃ、そうだよね。カコちゃん可愛いし、オレ達最初はカコちゃんのこと妹みたいな気持ちで接してて……祐希以外は兄弟の中の兄ちゃんなもんだから、右左も分からなさそうなカコちゃんのことほっとけなくて、でももう二ヶ月も経ったしさ、オレ達がいつもそばにいると楽しくなるはずの学生生活もつまらなくなる可能性もあると思うから、これからは少し距離感を保って接するね。」
「それってどういう?」
「オレ達が近くにいすぎると他の友達も彼氏も出来ないかもって事って話だよ。」
「そんな……」
「いやいや色々な可能性は無限大だし、せっかくの学生時代を狭い世界観じゃもったいないからね。」
「もう、お友達じゃなくなるって事ですか?」
「そうじゃないよ、今後社会に出ることも考えたら、色々な他人の考えを見たり聞いたりすることも勉強だから他の人達とも交流した方がいいって事だよ。」
木元の言う事はもっともだとも思う。
前三人とばかり話して、ノート貸しの際の九十五人の学生中何人くらい?としか話をした事がない。
それでも距離を置くと言われたたら寂しい。
しかしながら薫子も意を決して木元の思いを汲み取り「はい」と小さく答えた。
「それでね、オレらが距離取ったらカコちゃんには、これからたくさんの男共が声をかけて来ると思うんだけど、友達になるも彼氏になるならないも選択はカコちゃんがするんだよ。」
「今もう木元さん達、四人の方はお友達です!」
「いやいや、それはまた別の話でオレ達は最初に会って、まあ友達?になったからさ……でオレ達四人だって男だから言いたくはないけど、男はなんだかんだ言っても狼だから百人中一人の女子の彼氏になりたいだけなヤツだったり、友達飛ばして身体目当てってヤツもいるかもだから……カコちゃんは純粋だし可愛いから本当に気をつけて欲しいんだ。」
「え?……怖いです」
「あぁ、ごめんごめん、怖がらせるつもりはなかったんだけど、カコちゃんがあまりにも人を疑わないから心配でさ…まあ親心みたいな感じ、何かありそうだったら分かる近くに四人のうち誰かが気がつく様にはしてるからさ。」
「本当ですか?」
「約束する。」
「……有難うございます、色々考えて下さって。」
「いえいえ、まあとにかくオレ達以外の男女問わず他の奴等とも学生生活も楽しんで。」
木元は自席に戻って行った。




