第七十七話 寝顔も素敵!?
明朝七時。
薫子が少しでも早く祐希に会いたくて待ち合わせ十五分前に藤棚ベンチに行くと、そこには俯いて腕組みをした状態でベンチに座る祐希の姿があった。
それは誰が見ても分かる。
『寝てる……きっと時差ボケとかだよね』
山登りの様な格好でと言われたが、祐希はライダースジャケットを着ている。
細身のジーパンをブーツインして履いている。
『カッコいい……でもちょっと痩せた?』
そう思いながら右隣に座る。
小雨でも降っていたのか祐希の髪が少し濡れているのを拭こうと思い、近頃流行りのゴアテックス素材のリュックを背中から降ろしてタオルを出した時、
不意に祐希に肩にもたれ掛かられた。
『わ、これは…』
少しずつ起こさない様に右に動き祐希の頭を左腕で支えながらタオルを置いた自分の膝に落とし込んだ。
祐希の両手がちょうど膝先あたりに乗って何だかこそばゆい。
真横から見る祐希の顔
『まつ毛長い……色白なままのキレイな横顔』
思わず覗き込もうとした、その時!
「あっ!」
と叫ぶと祐希が飛び起きた。
「琥原くん?大丈夫?」
「え?え?俺今何してた?」
「えーと、多分うたた寝?かな?」
「あ……膝枕してくれてた?」
「ほんのちょっと」
「うわー寝過ごしたって勘違いして起きちゃった!
残念なことしたー!」
本気で頭を抱えて膝枕を惜しそうに言うのを見て薫子は笑いながら
「まだ時差ボケあるよね?大丈夫?」
祐希はにっこりしながら
「時差ボケはもうないよ。それより膝枕が残念過ぎて目も覚めた」
近いところで見つめられて薫子は
「変なの……あ、髪が濡れてたから、これ」
ちょっと照れ笑いしながらタオルを差し出す。
「今日カコちゃんに会えると思ったら昨日の夜中なか眠れなくて……でも気づいたら五時ごろ目が覚めて、もう出かけちゃえって出てきたら、道空いてるし早く着いたんだけど、その時小雨が降ってたからかな……」
「え?もしかして一時間くらい待った?」
「あぁ、いやそんな事ないよ」
薫子から「ありがとう」とタオルを受け取って祐希は髪を軽く拭きながら、
「もしかしてなんだけど……今日お弁当とか?」
薫子に聞く。
「もちろん、山登りって言われたから…」
「えっと、実はそうじゃないんだけど…」
「え?」
「そのお腹空いちゃって」
「朝ごはん食べないで来たの?」
「うん」
「じゃ、お弁当食べる?」
「食べたい!カコちゃんのお弁当!」
「でも……この辺は今日、平日だしそろそろ子供達の登校時間だから……」
「あっ、そっか!じゃ、ちょっと移動しよう!俺のバイトの成果も見て貰いたいし……」
ちょっと照れてる祐希が可愛く見えた薫子だった。




