第七十五話 働いた後の……
「はぁ、疲れたぁ」
その頃、従業員専用の借り上げ社宅の様なアパートメントの一室に、祐希と木本がベッドに倒れ込む様に横たわっていた。
「今日も忙しかったな……」
このところは来たと思えば帰るツアー客の対応に追われる毎日。
ハワイ在住のホテルマンは日本語を器用に扱うも日本人の機微には疎く、先に言いたいことを汲み取ってと言うところまでは厳しいのか、すぐに祐希に頼って来る。
「オレもヘトヘトだぜ」
「プールサイドでナイスバディの女性のお客様にカクテル運んでチップ貰ってるって聞いたけど」
「それはさ、仕方ないだろフロントからは戦力外通知貰っちまったんだからさ」
「早かったよなぁ戦力外通知……支配人とは言え、お前の叔父さん鬼だよな」
「だよな」
「でも木元は外にいる方が似合ってる」
「そうだな、オレも疲れるけど楽しい!そう言えばさ。明日の休みはどうすんだ?」
「スケッチの続きに行って来る。もうニ、三枚は描きたいし、そっちはデートだろ?」
「でへへ、嘘ついて悪かったけどさぁ。いつも置いてけぼりだったから今回はなっ」
「夏はいつも武内さんちって家族でハワイだったんだなぁ。さすが大手建設会社の社長一家」
「お父さんは一週間くらいしかいないんだよ、お母さんと三姉妹だけでコンドミニアム持ってるから丸々一ヶ月滞在して買い物三昧らしい……実はオレも毎年誘われてはいたんだけどさ、女の人四人のところに泊まるは、さすがに無理!だからさ、補習もあるからって断ってたんだよな」
「だよなー」
二人で笑う。
「冬はどこだっけ?」
「冬は北海道に美味いもん食いに行くってお父さんが引かないらしい……で今度はオレも来ないか?って言われてる」
「家族仲いいんだな」
「あーごめん」
「いや、大丈夫、気にすんなって」
「夜くらいは一緒に飯でも食わないか?」
「いや、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるから
いいって」
祐希が笑うと、木元が真面目な顔して聞く。
「余計なお世話だって事はよく分かってるんだけどさ、カコちゃんとはその何だ……」
「何?」
「んー」
「何だよ?はっきり言えよ」
「結局、キス止まりなんだろ?」
祐希の顔がみるみる間に赤くなる。
「……っ」
「オレもさ、何でも知ってる訳じゃないけどさ。もしかしたら役に立つ情報もあるかな?と思って」
「余計なお世話だっ!!」
祐希は急に胸が苦しくなってはち切れそうな自分をまた誤魔化すのに必死だった。




