第七十一話 寂しくないの?
「会えないのは寂しい……」
祐希が呟いた時、薫子はタオルを右手に持ったまま祐希の顔に両手を伸ばすと自分から初めて口づけをした。
瞬間、戸惑った祐希もそれに応える様に口づけを続けた。
口づけの後。
しばらくしてお腹が空いていたことを思い出した祐希は公園の売店で売っていたホットドッグとコーラを二人分買いに行きそのままベンチで簡単に薫子とお昼を済ませた。
そして二人はどこに行くとでもなく、ただただ手を繋いで歩きながら話をする。
そして祐希の薫子への執着心を隠したままの説明に納得出来ず、薫子は
「二人の為のってことなんだよね?」
「うん、まあそう」
「じゃ、私もバイトするから!」
『ダメダメ!バイト先が危ない!意味がない!』
祐希は隠し事があるために説得に欠ける話ししかできない。
「正直に言うと、俺はカコちゃんのこと出来るならトランクに入れて連れて行きたいよ」
「え?」
「ずっと一緒にいたい」
「じゃあ何で一人でバイトするって決めて一人でハワイに行くって決めたの?」
「それは……カコちゃんのことはしまっておきたいくらい、誰にも見せたくないほど好きだから」
「そんなのわからない、理解出来ない……」
「理解してもらえなくても本当の気持ちだから、出来るなら、ずっと一緒にいたいよ……でも今の俺はまだ何もなし得てないし、ただの学生だから」
「私はこの夏休みに一緒に課題をこなす、ただの学生で良かったのに……琥原くんは違ったんだね」
また薫子は泣き出した。
『ここはどこなんだろう…』歩き続けて今どこにいるかも分からない。
祐希は葛藤していた。
薫子に自分の今の彼女に対する気持ちを話せば、無理をしてでも自分に合わせようと背のびしようと考えてしまうのではないか?
それでは本当に薫子のことを思って少し距離を置こうとした意味がない。
また、これは自身の出自に関わることをまだ薫子に話していないことも大きな要因ではあった。
が、木元に言わせると、いくらスキャンダルに疎い薫子でも、その両親が知らない訳がなく知っていても尚交際を止めないのは祐希自身を認めてくれているからなのではないか?と言われた事が希望ではあった。
それでも今以上の関わりに進む事は、今の自分の意思に反することになるので自分自身が許せなかったし、更にもう一つの秘密が心にブレーキをかけていた。
いつの間にかまた恋人ベンチに戻った時。
「やっと見つけた!」
と香山。
「おーい、こっちこっち」
後から木元と草壁もやっできた。
「良かった!見つかって!有難うなお前たち」
木元が言うと後の二人は
「今度ちゃんと話聞かせろよ、全く最近二人でコソコソしやがってよぉ」
香山が言うと草壁が
「まあ、いいじゃん、じゃまたね!」
と二人は立ち去った。
「どうしたんだ?いきなり」
祐希が木元に尋ねると、
「あの、座りませんか?」
薫子が祐希との間を空けようとするも
「こっち」
祐希が自分の横を空ける。
やれやれと言った顔で木元が腰を下ろして話し始めた。
「何から話せばいいのやら……」
「じゃ帰れ」
祐希があっさり言うと、木元が祐希の耳打ちして
「助けに来たんだけど」
「え?」
「とにかく話させろ」
二人の小競り合いに薫子は涙で腫れた目をパチクリさせている。
木元が薫子と祐希の前に飛行機のチケットを二枚差し出すと
「えーと、実は俺も祐希と一緒にハワイでバイトすることになりました!!」
「えーっ!?」
祐希と薫子は同時に声を上げた。




