第六十八話 夏だからアルバイト②
「と、言うことがあったらしい」
木元が聖奈の報告をまとめて話す。
「俺がひどい断り方をした女子のことを分かるくらいなら謝って周りたいなんて言ったのを真面目に受け取っただけなのに、それを脅しなんて取るなんて……あんなびしょ濡れになって嫌がらせされたのに、自分からなかった事にして欲しいなんてカコちゃんが言いそうな事だよ……」
と祐希。
「聖奈もビックリしてたよ、すごい回転の速い子だと思ったって、最後、別れ際に多分自分のこと俺の彼女だって気づいたんじゃないかな?とも言ってた」
「え?あれ?女の子達、みんな下の名前で呼び合ってて、セナだけは会話に加わってなくてカコちゃんに覚えられてなかったんだろ?」
「自分から"野次馬の聖奈です"名乗ったって言ったんだと。ところでさ俺も言わなかったから、しょうがないんだけどよ……お前さぁ、いい加減、俺の彼女を名前で呼び捨てしてんの気づけよ」
「え?セナって苗字じゃないの?!」
「やっぱな、鈍臭い似合いのカップルだ。香山や草壁は聖奈ちゃんって呼んでんだろ」
「ごめん!木元が呼び捨てしてるから、てっきり苗字かと思い込んで……で、ごめん、女子って思ってなかったかも……」
「そんなこったろうとは思ってたけど、女子と思ってなかったはどう取れはいいんだよ」
「いや、何気に高校までは何かいつも一緒に俺らと連んでたから仲間って言うか、何て言うか…本当ごめん!で、苗字は?何て?」
「武内、武内聖奈だよ」
「次からは武内さんって呼ぶから、武内さんにも謝っておいて、本当にごめん!」
「分かった分かった…って、本当に女子の扱い粗雑だよな……でもそんなお前が変わったのがさ、カコちゃんの存在だと思うと俺らはお前がたまに口走る"運命"って言葉を信じたくなるぜ」
「いや本当にあの日の出逢いは"運命"だったって思ってるから、これは変わらない」
「で、そんなカコちゃん一筋の祐希くんはさ、何で二ヶ月も放ってハワイにバイトに行けるんだよ?」
「それは……俺の意思が弱いから」
「意思が弱い?二人の為のバイクを買うのにバイトするような奴が?」
「その水かけ事件の翌日、武内さんが言ってた多分"有る事無い事爆弾"のせいでギクシャクしちゃってて、俺、いらぬ嫉妬心にかられてカコちゃんにキスして….…抵抗されたのにやめられなかった」
「おっ、それは真面目な祐希くん有るまじき行為!
……あれ、でも月曜日からまた仲良しに戻ってたじゃん、俺らは金曜日に早期解決したもんだと思ってたんだけどな」
「金曜日は製図終わった後、帰られちゃってて追いかけたけど間に合わなかった」
「へぇー、そっか、で土曜日に色々あったという事なんだな!まあ仲直り出来て良かったじゃん!なのに何故そんなに離れようと考えてるんだ?」
「そばにいると、これ以上自分を抑える自信がない、これから夏が来たらますます薄着になるし……ワンピースでも着られた日には……今の俺は煩悩の塊だ……百八つの鐘どころじゃ煩悩が消せない」
「え?……でもそこは、ほらお互いの気持ちで」
「いや、まだ俺話せてないこともあるし、その事を解決しないうちに、そんなことの距離だけを縮めたくはないんだ。気持ちの距離はもっと近づきたいけど」
「小難しい事言っちゃって離れてる間にカコちゃんが冷めちゃったら、どうすんだよ」
「それは……もしそうならそれでも仕方ない」
「おいおい俺らの"運命論"はどうなるんだよぉ…
って言うか、まずハワイにバイトに行くって話はしたのか?」
「いや、これから……」
「その二人の関係が鮮明になってないうちにハワイの行きの話なんかしたら、かえって危ない気がするけど。大丈夫なのか?泣かれでもしたら思いがけず押し倒しちゃったり….」
「次は負けない!」
「次はってキス以外に何かした訳じゃないだろ?」
「キスした時にちょっと抵抗されて、でも嫌がられてないって、すぐ分かったから……カコちゃんの腕の力が抜けた時、思わず首筋に……」
「あれまあ、キスマークでも?」
「ヤバかった……いい匂いがして……でもその時、カコちゃんが目を覚ましたみたいに目が開きそうになったから、またキスしちゃって……」
「それもまたヤバいヤツじゃん」
木元は大笑いしながらも
「でも、早く話した方がいいぞ」
念も押された祐希は
『分かってはいるんだけどさ』
少し気持ちが揺らいでいた。
いつも100分の2の青写真をお読み頂き有難うございます!
うっかり67話と68話の投稿順を間違えてしまいました!後の話を先にお読み頂いた方にお詫び申し上げます。
こんな筆者ですが、これからも頑張りますのでどうか応援宜しくお願いします!
優月菜




