第五十三話 祐希の反省の元!?②
そして顔を上げると薫子は続けた。
「私はついこの間、琥原くんから固形炭酸王子のお話を聞きました」
それを聞いて今度は響めく。
「祐希が自分から話したって…」
「どう言うこと?」
口々に隣同士喋り始める。
「琥原くんは、あの時の自分に怒ってました。幾らそう言うことに自分が関心がなくても、好きだと言うことを伝えくれた皆さんの勇気に応えなければならなかったのではと……先に有難うって言って、でも自分の気持ちには嘘はつけないから、ごめんなさいと言うべきだったと話してくれました」
それを聞いた女子達は、『嘘っ!祐希がそんなこと言う?』と言った表情になると、薫子がまた話し出す。
「琥原くんは当時皆さんが似たような髪型をされていて同じ制服を着ていて本当に申し訳ないことに、お名前が覚えられなかったとも言っていて、もし分かる術があるなら謝って回りたいくらいだとも……」
「嘘よ!そんなこと、あんたの勝手な作り話でしょ!」
水かけ女子のマリが言う。
「ちなみに私は他人のお名前を覚えるのは得意なので、皆さんのお名前を覚えました。琥原くんにお伝えしましょうか?」
「何言ってんだか、自己紹介した訳でもないのに覚えられる訳ないじゃない!」
「お話しの合間に、お名前を呼び合っていらしたので、覚えてますよ」
「じゃあ言えるもんなら言ってみなさいよ!」
「ではこちらから」
向かって左側にいる女子から名前を言って行く。
「クミコさん、ユミコさん、マユミさん、ケイコさん、マリさん、ヨウコさん、ユウコさん、ヒロミさん、サチコさん……あなただけお話しに加わらずお名前が分かりません。全員じゃなかったですね。すみません」
一人一人自分の名前を言い当てられ、その度に驚いたような顔になるも右端の女子は自ら手を挙げると「文学部の野次馬のセナです」と答えた。
「琥原くんが謝りたいと言っていたので、お伝えしておきますか?」
薫子が言うと、マリが激怒して
「何それ!脅し!?」
薫子に更に顔に向かって水をかけた。
「え?」
「だって、そうじゃない、そんなの祐希に伝えるってことは、あんたが私達から何かされたって思うもんでしょ!!」
薫子は驚いた様に
「あ…それは……琥原くんの気持ちを考えて……」
しばらく考え込んでいると、セナが
「もう、いいんじゃない?そろそろ講義室遠いから戻らないと時間がないよ」
と声を発した。
「あんたはただの野次馬でしょ?黙ってなさいよ!」
マリの怒りは収まらない。
その時、薫子が
「すみません、琥原くんの気持ちしか考えてなくて
あなた方のお立場もありますよね!では今日のことはなかった事にして下さい!お願いします!」
十人全員がその大きな声と内容に耳を疑った。
「あんた自分が何言ってんのか分かってんの?こっちが仕掛けた事なのよ」
「それはそれとして、私はもう琥原くんを悩ませたくないだけなんです……だから忘れて下さい!お願いします!」
頭を下げながら言う薫子に、『祐希が選んだ子ってこんな子だったんだ』と思う気持ちと『いい子ぶってる?』とがほぼ全員の気持ちの中を駆け巡る。
そんな時またセナが
「彼女がそう言ってるんだから、ここはもうそう言うことにしようよ!こっからだと本当に時間がないよ!マリなんて遅刻したら、そろそろ単位危ないかも!」
畳み掛けるようとするも、マリが
「バッカみたい!!」
と捨て台詞を吐きながら扉を勢いよく開けて出て行くと、皆それに続いた。
最後にセナが薫子に話しかけると
「ごめんね、風邪ひかないでね」
「あ……有難うございます」
薫子が返すと手を振りながら急いで立ち去った。




