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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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第五話 え?お金がない?==加筆・修正あり


「ちなみに俺は線引きとかレタリング得意だけど」


「はい?」

「さっき製図は皆んなに追いついたって話したら感心されたと思ったんだけど……」

祐希が恥ずかしそうに言うと


「そうです!私あまり上手く描けないから追いついたなんて驚きました!教授には毎回受け取っては頂けましたけど何となーくのお顔なんです。製図の高見沢教授はいい方でご自身が歳の近い娘さんがいらっしゃるそうで、私のこと気にかけて下さって……実は私、製図の授業の間は助手の坂崎さんは製図室で男子学生の相手をして部屋にいないからと、普段坂崎さんが管理している資料室を使わせて頂いておりまして鍵もかかるからと鍵までお借りしている状況で、でもここは旧校舎で鍵も今では一本しかないから無くさないでねと、そういいながらも坂崎さんはご自身の製図台(ドラフター)まで貸して下さってて、でも製図台のペダルが重くて上手く板も下がらないし……まあ上手く引けない言い訳です……」


クドクドと話す薫子の顔を真面目な顔で見つめながら祐希が言った。


「じゃあ、明日また製図実習あるし今回から男九十九人の製図室に来なよ」


「え?でも手伝って頂くわけには行かないです!」

「俺も手伝いはしないよ。それに甘えないんでしょ?だったら、男の中でも平気にならなきゃ」

「確かに、そうですよね。教授のお優しさに甘えてしまってました」


『実はそれはそれで安心だけど、本当はもっと近くにいて君のこと知りたいからだよ』と祐希は思う。


そして、

「それに技術は盗むって言うじゃん。助手さんも院生さんも三枝さんだけしかいないところには行きにくくて、技術面の指導できなかったんじゃないの?学びは見て聞くのも大事だかさ。一緒に勉強しようって話」

「一緒に勉強….…」


「多分、製図台(ドラフター)の調整も三枝さんみたいな華奢な子じゃ大変なんだと思うから、自分に合わせるやり方も工夫したらいいと思うし……その工夫も一緒に考えさせて」


「優しいんですね……私なんて、せっかく頂いたチョコも勝手に配ってしまった嫌な子なのに……」


「あれはびっくりはしたけど、それかーってむしろやられたなって感じ!逆に(ラッキー)貰ったし!三枝さんの事、すごいって思った!だから本当にこのまま自分の意思を貫いて変わらずにいて欲しいな」


「……そうですか?」

「本当に心からそう思う」

「琥原さんには初めてお会いした日から私は何だか失礼な言い方ばかりして気になってたんですけど……今頃ですが、ごめんなさい」


「え?そう?全然気になったことないし、むしろ本当はカッコいいと思ったくらい」

「私が?カッコいい?」

「百中一人の女子なのに甘えないなんてすごい事じゃん!」

と親指を立てた。


「この大学に来られて良かったって、今本当に心からそう思えました。でもそのために中高と進学塾にも行かせて貰えなかったのでガリ勉で友達も作れず遊びも行けなかったけど頑張った甲斐ありました」

両手で胸元に拳を作る薫子。


「え?進学塾行ってないの?」

「お恥ずかしながら、両親から我が家はお金がないから参考書はともかく塾には行かせられないと言われまして……自力で頑張れと」

「あのさ、お父さんってどんなお仕事してる方?」

「え……会社員(サラリーマン)です」


『違う職業を言ってるな……』と薫子のガードの固さを知ってる祐希は考える。

もしかしたら建築士なんて男社会に身を投じることになる薫子の士気を試す為に両親がついた嘘なのでは?とも。

だが、ここは突っ込まず


「そうか……そうなると三枝さんってかなり優秀なんだ。自慢する訳じゃなくて、しかも不登校だった俺が言うのも何だけども内部進学でも結構内申良くないと難しいのに一般なんだもんね」


「この大学の建築学科な内部進学も大変だとお聞きしてます……私は優秀な訳でもないし自慢でもありませんがガリ勉した甲斐はあったと思ってます!」

薫子は恥ずかしそうに笑った。


その笑顔に祐希はまたドキッとしてしまって慌てて会話を変えた。


「そう言えば弁当って自分で作ってるんだってね」

「あ、はい」


もう祐希は最後のクリームパンも食べ終わり牛乳も飲み終わったのか、ストローを抜いて中身が出ない様に気をつけながら畳むと紙袋に入れたが、その視線は薫子の二段弁当箱のおかずの段の中にある玉子焼きに注がれていた。


「えーと、玉子焼き食べますか?」

「え?!いいの?」


『そんな見られたら食べますかとしか言えないよ』

と思う薫子。


「じゃ、いただきまー」の「す」

の前に薫子が手をお弁当の上に出した。

「?!」

「お箸をお貸しすることは出来ませんので……こちらで手を拭いてから、どうぞ」


祐希に差し出したのは既に一枚取りやすい様にシート先の方が出してくれてある除菌シートパック。


「何?これ?」

「売ってるお弁当とかによく付いてくるお手拭きみ たいなもので、手が洗えない時に使うんです」

「いつも持ってるの?」


「小さい頃、私身体が弱くて母が心配性なので持たされてて……とにかく使ってから食べて下さい」

「分かった!有難う」


シートを一枚抜き取り手を拭き上げるや否や、割と大きめな玉子焼き丸々一個を一口で頬張った。


「旨っ!何これ?だし巻き卵?」

「ちゃんとしただし巻きな訳じゃなくて、なんちゃってだし巻きですよ」

「えーそうなの?俺には完全にだし巻き卵にしか思えないけどな」


薫子はご飯をちょっと食べながら

「良かったら、もう一つもどうぞ」

「え!ホントに?……でも三枝さんのおかずなくなっちゃうし……」

「私はご飯のお共の子持ち昆布だけでも足りますし、今日あまり食欲もないから……」

「食欲ないの?何か食べられそうなもの言ってくれたら俺買ってくるよ」


『そのドキドキさせてる元凶が言うか……』と薫子の心の声。


「あっいえいえ、そこまでではないです!まあとにかく、もう一つもどうぞ」

「すげぇ嬉しい!」

とぱくり。


「やっぱ、美味い!俺さ、米あまり好きじゃなくてパスタとか麺類しか作らないし、でも玉子焼きは好きで挑戦したことあったけど焦がして以来焼いてなかったから……すごいね三枝さん、こんなに美味しく焼けるなんて」


『都内男子だよね?なのに自炊?』と薫子は思うも

「その時の玉子焼きの調味料って、何を使ったんですか?」

「えーと、砂糖と隠し味程度に醤油だったかな」

「多分ですけど、お砂糖の入れ過ぎかと」

「砂糖の入れ過ぎ?甘いのが食べたいと思ったから

卵二個に大さじ三杯くらい入れたかも……」


「火加減にもよりますが、お砂糖が多いと焦げやす

くなりますよ」

「知らんかったぁ」

と言いながら笑う祐希。


『また私ドキドキし始めちゃう』と薫子が思っていたところ、これまた祐希の視線は薫子のおかずに。


「何だかお食べになるものも偏ってるみたいなので

タンパク質も摂らないと、唐揚げも食べますか?」

「美味しそうだから、つい目が……いいの?」

「いいですよ」


この人、薄茶毛大型犬ゴールデンレトリーバーみたい、尻尾をぶんぶん振ってるのが見えそうと思いながら

「但し唐揚げは手づかみだと油になるので……」


彩りの添え物野菜として入れてあったヘタ取り済みのプチトマトに刺してあったピックからトマトを取って祐希に貸そうと右手で取った時、いきなり祐希がそのまま薫子の手を掴むと、そのピックの先のトマトを口に入れてしまった。


「え」

手を掴まれたままの薫子固まる。


「甘い!このトマト甘いね!あれ?三枝さん?」

「トマトじゃなくて唐揚げが食べたかったんですよ ね?」

手を掴まれてドキドキしたのを悟られない様に薫子は『鎮まれ鎮まれ私の心臓』と思いながら言う。


祐希は祐希で薫子と話してる間中、ドキドキが止まらないのに自分自身の行動に驚きながら

「三枝さんの手見てたら思わず掴んじゃって……ごめんなさい」

シュンとした顔がまた大型犬(ゴールデン)だ。


「いいですよ、このピックで唐揚げもどうぞ」

「トマト食べちゃってごめんね!……そう言えばトマトも久しぶりに食べたなぁ」

「そうなんですか?野菜も食べないと身体にわるいですよ……」


そう薫子が話してる間も祐希の琥珀色(アンバー)の瞳は唐揚げに釘付けだった。


「まあとにかく唐揚げ食べて下さい」

「わーい」

またぶんぶん振り回ってる尻尾が見える気がする。


「良かったらですが全部どうぞ」

「でも三枝さんのおかずが……」

「まだ煮物もあるので」

銀紙のカップケースに分けてある方を見る。


「あ、こっちは煮物!」

「これは母の手作りですが、実はおかずは煮物の一番上にあったにんじんしか食べてないので良かっ たら……ほとんど手をつけてないので……もし本当に良かったら好きなだけ食べて下さい」


「えーと、俺、美味しいものに遠慮しないよ。でもホントにいいの?」

「お箸がないので食べにくいとは思いますけど」

さすがにお箸は貸せない。

「大丈夫!」


本当に祐希は器用にピック二本と指でおかずを全部食べ切り除菌シートをもう一枚使って完食。

「ご馳走様でした!」


大満足な笑顔で挨拶され、ずっと心臓バクバクの薫子もご飯を食べ終えた。


が、胸がモヤモヤしたまま……午後の授業を迎えることになった。


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― 新着の感想 ―
1980年という時代背景の中で物語が進むため、現代のようにスマホで簡単に連絡を取れないところが個人的にとても魅力的でした。 会話や日々の行動、そして偶然の出来事を丁寧に積み重ねながら、少しずつ距離が近…
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