第四十七話 普通のデート?⑯【鎌倉土産①】
鎌倉の老舗菓子店紅谷。
「えーと、この詰め合わせを一つお願いします」
祐希は"あじさい"と和洋菓子のミックスを一箱頼むと店員さんに聞かれる。
「お熨斗紙はいかがされますか?」
「表書きは結構です、無地でお願いします」
と言い足した。
薫子は店の外で待っている。
日暮れ時、夕焼けが空を紅く染めている。
八幡宮の大銀杏の木が風でさわさわと揺れているのが遠目でも見えた。
「お待たせ」
ぼんやりしていた薫子に驚かすように祐希が声をかける。
「はい」
しかし、薫子の反応が薄かったので祐希は『疲れさせちゃったかな?』と思った。
祐希は薫子の手を取ると
「段葛を歩いて帰ろう」
と誘った。
横須賀線に乗っての帰路。
大船駅で意外とたくさんの人が降りたので、また端席に座らされる薫子。
『もう本当に琥原くんって…何だろ?独占欲?』
と思いながらも、ちょっと嬉しい。
祐希が窓の外の夕焼けを見ながら
「疲れたでしょ?品川着いたら起こすから寝ていいよ」
と気遣う。
「琥原くんこそ、吉祥寺までまたお迎えに来てくれたんだから私より早起きしてるでしょ?」
と言い返す薫子。
「え?そんな変わらないよ、起きて十分くらいで支度して出かけられるから俺」
「またまた、そんな訳ないでしよ」
「本当だよ」
「じゃ何時に起きたんですか?」
と言った瞬間、電車がガタンっと揺れて、また至近距離になって目と目が合う。
付き合って一ヶ月と数日、最近はむしろ意識し過ぎてぎこちない。
「そう言えばさ、さっきのシンデレラの話なんだけど、その後危ないことはなかったの?」
「バス通学になって、髪の毛モンチッチにしたら全くなくなりました!カコロールを守る会の人から残念がられましたけど……そう言えば卒業の時、担任の先生も縦巻きロール似合ってたのになって笑ってました」
「カコちゃん、俺に気を遣ってない?」
「え?」
「俺が固形炭酸王子なんて話をしたからさ……」
「張り合っちゃってって事ですか?」
目をパチクリする薫子。
「いやいやいやいや、そうじゃなくて……」
「琥原くんが自分の話をしてくれたから、私もしておこうも思っただけですよ、何なら、今日お花畑のお嬢様に聞いてみます?」
「え?」
「あのお土産」
網棚を見上げて
「うちに買ってくれたんですよね?」
『何で、そんなに勘がいいの?』と思いながら
「うん、この間お父さんにお会いした時ご挨拶させてくださいって言ったままになってるから、ちょっとだけ寄らせて貰おうかな?って思って」
「信用できる人になったんですか?」
「え?まだダメなの?」
「ふふ、信用してますよ」
焦る祐希を面白がる薫子に
「もう驚かせないでよ」
本気で焦る。
が、次の一言がもっと祐希を驚かした。
「でも今日父はいませんよ」
「えー!」




