第四十話 普通のデート?⑨【ゲニウス・ロキ】
「どのお刺身も美味しい」
薫子が呟く。
「建屋も見ないと損するよ」
祐希がテラス席の木の柵から下を見下ろす。
「ここって断崖絶壁のところに建ってるんですね……さっきから床の間からに荒波が見えてちょっと怖いんですけど……しかもこのテラス、木だけで支えてる様に見えますが」
「木だけだよ。支柱だけで支えてる。まさに場所の力を活かした土着的な建築物なんだよね」
「ゲニウス・ロキ?、この間、概論で聞いた古代ローマの土地の精霊?土地との対話って言う話の?」
「ここだったら断崖絶壁の場所と対話しながらこの建物を建てたってみたいな?」
食事が終わる。
建物の構造や梁などの話を少しした後、
「外側から見てみようよっか?」
祐希に促され今まで見下ろしていた千畳敷から岩谷洞窟の橋の方に向かうことにした。
また会計バトルが繰り広げられたが、どちらに軍杯が上がったのかは言うまでもない。
「たくさん食べたのは俺の方だからって……」
魚見亭を左に出て急な石階段を降りながら薫子がブツブツ言いながら祐希の後について降りる。
「カコちゃんは結局お刺身も全部は無理だったでしょ?」
「でも……」
「ほら見て、あそこ」
断崖絶壁に木の柱だけで支えられているテラスが見える。
ちょうど引き潮のようで海も穏やかだ。千畳敷の先の方まで行けそうだった。
「うわーあそこでご飯食べてたなんて!」
『怖いって言うのかな?』とニヤニヤする祐希。
「素敵」
薫子が頬を赤らめて興奮していた。




