第三十一話 あー良かった!
翌朝。
『今日は一日座学の日か……昨日の夜、あの両親に付き合わされたせいで眠くなりそう』と思いながら大学までの道のりを歩く薫子。
朝は少し遠回りをして駅から来た風に、正門から校内に入ることにしている。
「え?」
正門の手前の並木道、ポプラにもたれていたのは
「琥原くん?」
「おはよう」
「おはようございます。昨日はまた送って頂いて有難うございました。帰りに父にまでご挨拶頂いて……」
薫子ののんびりした挨拶中にも関わらず、祐希は食いつき気味に問いかけてきた。
「お父さん何か言ってた?」
「あの……美男子で好青年だって」
「え?本当!?」
「母には話さないって約束したんですけど、結局、あの二人ものすごい仲良しなんで……帰り道に父から何げなく聞かれた、どこに行ったかとか話したこと全部母にもバレました」
「でもお父さんは、俺のこと褒めてくれたって事だよね?」
「そうです!仕事柄、人を見る目はあると母もいつも言っていて、そんな父が大学卒業したら、うちの会社に来ないかな?って、でも建築士になっちゃうのかって残念って言ってたくらいです」
「良かった!ホッとした」
一瞬、祐希は気が抜けた様にしゃがみ込む。
そして薫子の左手を取って、ぎゅっと握りながら
「カコちゃんに恥かかせたら悪いと思って必死だったから」
いつもと逆に見上げながら言われる。
『可愛い、また尻尾が…』
薫子は 大型犬をギュッとしてナデナデしたくなるのを誤魔化すように
「そう言えば、何で正門から来るって分かったんですか?」
「朝は多分皆んなと同じ方向から来ないと、それはそれで怪しまれる?と思ってるかなぁと思って」
「それで待っててくれたんですか」
「少しでも早く会いたくて」
『って、他の誰とも話させたくないから……って俺やきもち焼きか?』と朝から薫子の上気した顔見て照れる祐希。
「待っちゃいました?」
「ううん全然、行こっか」
祐希が手を差し出すと薫子が目をまん丸くして
「学内では手繋ぎ禁止です」
と言って顔を真っ赤にして走り出した。




