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100分の2の青写真《ブループロット》〜不便な時代もいいとこあるじゃんっ!!〜  作者: 優月菜


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第二十九話 パパと遭遇!?


帰り道。


もう善福寺池まで来てしまった。

薫子は両親との約束の午後六時まで、もうあまり時間がないのに、足取りが重かった。

「カコちゃん?急がないと」

祐希が言う。


『今日はお別れは寂しくないのかな……?』と薫子は思う。


「あの」と二人が同時に言葉を発した時、前方から

「クゥーン」と鳴き声がした。


長身の歳の頃は四十半ば(しじゅうなか)くらいの男性が下駄を鳴らしながら、こちらに向かって歩いてくる。

腕の中にすっぽり収まっているのはピップスだった。


まだ二人の姿は認識されてはいない距離だが、薫子の方は『パパとピーちゃん!』と分かったので、祐希に向かって

「あの人、ち、ち、父です」と小さな声で告げた。

その時の祐希の反応は早かった。


「カコちゃん、お父さんに挨拶したら帰るね、俺がお話しするからカコちゃんは何も言わなくていいから、でもお会いしたところでお父さんの方側に移動してね、とにかく急ごう」

薫子の背中をスッと押すと早歩きを始めた。


途中、持っていた薫子のキャンパストートを返しながら

「先に挨拶しちゃうね。また明日ねカコちゃん」

祐希はそう言って笑った。


薫子の父、三枝(さえぐさ)(ゆたか)の方から声を掛けられる前に祐希がほどほどに大きめな声で

「こんばんは、三枝さんのお父様ですね」

と話しかけた時、薫子は祐希に言われた通り、父豊の方側に移動した。


「ああ、こんばんは」と豊が応えると


「初めまして、僕は三枝さんと同じ大学でも建築を一緒に学んでいる琥原祐希と申します。いま三枝さんとは真面目に今お付き合いをさせて頂いております。本日は上野に建築物を見に行って参りましたが遅い時間となりましたので、ご自宅の近くまではお送りしようと……ですが、お父様とお会い出来たのであれば安心なので僕はこちらで失礼致します」


「え?そうなの?帰っちゃう?」

『パパ何言ってんの?』と薫子の方が焦る。


「はい、また日を改めましてご挨拶に伺わせて頂きたいと思っておりますので、その節には宜しくお願いします、では失礼します」

祐希は両手を身体の脇にピッタリとつけ豊に深々と頭を下げると、振り返り元来た道を戻って行く。


そして駅に向かう右手に曲がる道に差し掛かった時、祐希は振り返るともう一度丁寧にお辞儀をして立ち去った。


薫子はお辞儀の後に一瞬目が合ったと思い、小さく胸の前で手を振った。


後ろ姿が見えなくなった後

「かっこいいねぇ彼」

父豊から発せられた第一声がこれだった。


家まで、後五分もないが

「この辺でバイバイするつもりだったんだからね」通学経路を教えない約束を守ってると言いたげな薫子にピップスが抱きつこうと豊の腕の中でバタバタする。


「はいはいピーちゃんはお姉ちゃんが大好きだもんね」

豊から薫子にピップスが飛び移った。

「いいねぇ彼、きちんとしてる、うちの社に来ないかな?あ、建築士になっちゃうのか……」

薫子は不思議な気持ちでいっぱいだった。


『何で琥原くんのこと褒めてんの?お母さんが何か話したのかな?お小遣い前倒しに貰ったから詮索しようとして……さてはパパは』


「パパ、今日はピーちゃんとお池を何周くらい廻ったのかな?」

「そうだな、五周くらいしたかな……あぁ荷物持つよ」

薫子の肩から荷物を取り自分の肩にかけて誤魔化したつもりが、

「何のために?」


むしろ薫子に問い詰められた。


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