第十九話 カッコよすぎる彼①
上野。
関東と東北を結ぶ街。
色々な人々が行き交うこの駅で故郷の言葉を聞きたくてここを訪れると言った詩人は誰だったろう。
「今日のお昼イタリアンでいいかな?」
と祐希。
「イタリアン好きです!」
薫子が言うと、駅から少し離れた路地裏にその店はあった。祐希が街にフラッと出かける時は王道のルートだけではなく路地裏にも足を向けるらしい。吉祥寺の店もそれで見つけた場所だったらしいが、上野のでのお気に入りは、このイタリア料理の店|"Lo spazio "《ロ・スパツィオ》らしい。
一階は雑貨店、その横の階段を上がった2階にある店らしい。二人は階段を上る。
「イタリア語で"宇宙"って言う意味なんだって」
「宇宙?」
薫子は珍しいと思っていたが、祐希の後ろからついて行くと開け放たれたガラス扉の向こう側の窓の外からの風景に目を奪われた。
緑がどこまでも続いているかの様に見えて上野公園の建物もちらほら見えている。広がりを感じさせる造り。
店内はミッドナイトブルーを基調にした装飾とテーブルにも同じ色味のクロスがかかっている。
どっしりしたアールデコ調を思わせる椅子やテーブル。よく見ると椅子はひとつひとつ形が違う。
『宇宙色?落ち着くいい色』と薫子は思った。
「いらっしゃいませー」
左側から明るい男性の声が響く。
「こんにちは」
祐希が言うと調理場と思われるところから大柄な外国人男性が飛び出て来た。
「ユーキ!我が友よ!久しぶりダネ、ゲンキだった?」
いきなり祐希にハグしたが、あれ?と言う様に薫子を見つけると
「ユーキ!ユーキ!このかわい子ちゃん誰?カノジョ?やるなーオイ、コノコノ」
祐希の腕を肘で突っついた。祐希は苦笑いしながら、
「この店の料理人であり店長さんのレオナルド・ビアンキさん」
薫子に紹介するとレオナルドは薫子の目線にかがみながら
「お名前は何ちゃんですか?」
まるで子供に接する様に聞かれて、
「あの、三枝薫子といいます、琥原くんと同じ大学で建築を学んでいます」
と答えた。
「えー!ユーキ!同じ歳?ウソでしょ!こんな小さくて可愛いコ……ユーキ、犯罪にならない?コレ」
「失礼だな、本当に同じ歳だから!もーレオさん相変わらずだな、からかわないでよ、彼女真面目な子だから……ほらびっくりしてる」
目がまん丸の薫子を見て祐希とレオは笑った。
「今日初めてのお客様ねー、どこでも好きな席にドーゾ」
レオに言われ祐希が
「窓際いいですか?」
と聞くと
「モチロンだよお、今お水持ってくヨー」
返事があったので、二人は窓際の席に着くと祐希が話し出した。
「レオさんイタリア人で元々は家具職人だったんだって、ここの椅子やテーブルも実はレオさんの作品で、お客さんで欲しがる人もいるくらいなんだ」
「手作りの椅子とテーブル!すごいこんな素敵なものが造り出せるなんて……テーブルも椅子の形も色々違うのは何か意味があったりするのかとお聞きしたかったんですが。」
「座り心地が違うから、お気に入りの席を選んで貰うって言うのも楽しみにして欲しいんだって」
『よく見てるな、初めてこの店に来た時の俺みたい、俺もレオさんを質問攻めしたけどな』




