第百七十八話 How Deep Is Your Love
いよいよ?とうとう?
最終話です!!
薫子と祐希の物語りは何か胸に残りましたか?
「カコちゃんと出逢えて良かった」
祐希は一言呟いたあと、L-8を前にして薫子の顔を見つめながら話し出した。
「実は国立大学受かってた」
「え?」
「建築じゃないけど、父さんと兄さんと同じ大学」
「本当はそこに行きたかったの?」
「うん」
「どうして行かなかったの?」
戸惑う祐希に薫子は今回は
「聞かせて。どんなことでも聞いておかないと後悔したくないから」
と言った。
「入学手続き書類には保護者欄いわゆる身元引受人の署名捺印欄があって、父さんの弁護士さんを通して、裕子さんにお願いして郵送までしてくれる事になってたんだ」
「だったら何故?」
「その場で署名捺印までして貰えば良かったのにって言って弁護士さんにも謝られたけど、裕子さんは一旦預かって後でやるって言ったのに書類を提出してくれなかった」
「え?何で!?」
「多分、同じ大学には違う学部でも行かせたくなかったんだろうね」
「どうして……そんなこと」
「あくまでも格下にしたかったんだと思う。勝手に今の大学の進学は決まってた」
「だから退学しようと思ってたの?」
「そう。二浪して成人したら保護者欄は必要なくなる、そしたら弁護士さんに身元引受人になって貰えばって考えに至ったから」
「行きたくないって言ってたのに、私、見送りに無理矢理行こうって言って……祐くん……ごめんなさい。そんなことまでされてたなんて……」
薫子が泣き出した。
「違うよ」
「え?」
「あの時裕子さんがそうしてくれなかったら、君にもう一度出逢えなかったんだから」
「でも」
「僕は何ものにも代え難い、大切な"家族"を手に入れた。だから見送りに行くことにした。あれは自分の考えだよ」
泣いている薫子の頭を優しく撫でる。
「こっち来て」
祐希は胡座をかいた膝に薫子を座らせた。
「ちょっときついかな?」
そして笑いながらギターを薫子の身体の前で手にした。
「カコちゃんのためだけに歌うから……」
祐希はゆっくりと静かにギターの弦をつま弾き始めて、薫子の耳元で囁く様に口ずさむ。
Bee Geesの"愛はきらめきの中で"だ。
あの時、江ノ電の中で聞いたフレーズが薫子の耳元とギターの音色が胸にまで響く。
二人は寄り添いながら、いつまでも一緒に過ごせる様にと"愛はきらめきの中で"誓った。
fin
100分の2の青写真をご覧頂きました皆々様
まずは、たくさんの皆様のご支援のお陰様をもちまして、無事最終話を迎えさせて頂きました事を、心より感謝申し上げます。
初めての投稿させて頂いた、この作品は私にとって、とても思い入れが深く、時には感情移入をし過ぎて薫子や祐希と一緒に涙を流し、時には通勤電車でドアにもたれながらマスクをしているのをいい事に、薫子と祐希の会話をブツブツ独り言で考える毎日でした。
(隣の方にブツブツが聞こえて変な人と思われたら困るので行きの通勤電車は基本立ったままでした!)
ここまで話が膨らむとも思わずに二ヶ月に渡り投稿をさせて頂きましたが、今はこの二人の物語が終わってしまうのが寂しくて寂して仕方がありません。
実は当初、このお話のモチーフはASKAさんの
「始まりはいつも雨」でした。
ところがこの歌曲のASKAさんによるソロリリースは
1991年(平成3年)3月だったのです。
どうしても1980年4月の新入大学生を描きたかったので、この曲を入れ込むことが出来ませんでした。
それでも、薫子と祐希が一緒にいると必ず雨が降ると言う展開は折り込ませて頂きました。
数年後二人は、この曲を聴きながら「あの頃の僕達みたいだね」と祐希が言い、薫子が「祐くん歌って」と弾き語りのおねだりをしているかもしれません。
その時はもしかした家族も増えていかも?
長々と制作の際の想いを書かせて頂きましたが、それもこれも毎日ご覧頂いた皆さまのPVに力を頂いたことが励みになったことを心から感謝し、1700人超えの読者の方々へのお礼の言葉とさせて頂きます。
本当にたくさんたくさんご覧頂き有難うござました。
優月菜




