第百七十七話 愛はきらめきの中で?
次回が最終話となります!
読者の皆様が朝型の方が多そうなので
午前中に投稿を考えています。
あともう一つ、おまけで外伝のご用意も致しました!
そちらはおやつの時間に投稿致しますので、どうぞ最後まで、お楽しみくださいませ。
押入れを開けて中から何か取り出す薫子。
先程、布団を出した時にはなかったので、祐希が風呂に入ってる間に仕込んだものなのだろう。
「え?」
祐希がかなり驚いているのを見て、薫子は満面の笑みを浮かべた。
「ギター?」
「持ってる?」
「あ、いや、裕子さんにギターは下品だって中学生の頃言われて……高校生からは一人暮らしになったから買えなかった訳じゃないんだけど」
「言葉にコントロールされてた?」
「かも……」
薫子は黒いギターケースを祐希の前に静かに置く。
「開けていい?」
「もちろん、これは祐くんのだもん」
祐希はゆっくりとケースを開けると
「嘘!L-8※!?しかも左利き用?」
「チューニングもして貰ったけど、ギターケースのポケットに音叉と、予備の弦とピックがいくつか入れてくれてあると思う」
「あ、本当だ」
祐希はケースの中のギターを食い入る様に眺めているが、おあずけを食らったワンコの様に手を出さない。
「祐くん、持ってみて」
「その前に何で?」
「何で?クリスマスプレゼントだよ」
「理由が聞きたい。L-8の左利き用なんて絶対特注品だし、一体幾らしたのかすら気になる」
『理由か……』
薫子には言いにくい理由があったが……。
「あの時、江ノ電の中で口ずさんでくれた曲が聞きたいなぁって」
「何で僕がギター弾けるって知ってるの?」
「あれ?聞いた事なかったっけ?」
「カコちゃん……こんな高価なもの、まさかバイトした?」
「そんなヒマないでしょ?分かってるよね?いつも一緒にいるんだから」
祐希は建築学科の講義時間を考えると確かにと言う様に頷く。
「それじゃあ……」
「貯めてたお小遣いとかお年玉で買いました。私、中学生の時からガリ勉だったから使い所がなくて」
「本当に?」
「本当」
「そっか……じゃ、何で弾けるって知ってんの?」
『それたのに、また戻る?』
「それは……」
「それは?」
「ヤキモチで……」
「カコちゃんが?誰に?」
「もう聞いてると思うから話すけど、私が製図の講義の前にびしょ濡れになった時の話」
「あの時の話?」
薫子が急に不機嫌になって祐希が慌てた上に無理矢理キスしたことの発端で、祐希はちょっとモヤっとしたが再度聞き返す。
「あの時?」
「あの時、あそこのお手洗いって私しか使わないから、個室でいつも鼻歌歌ったりしてた」
「鼻歌?」
祐希が笑う。
「でもあの日は誰かがお手洗いの中にいて」
「あ、文学部の女子達か……」
「会話が聞こえて……"王子が学祭の時に弾き語りした曲歌ってる"って」
「たまたま軽音に同じ左利きの友達がいて、たまにギターを借りて弾かせて貰うことがあったんだけど。学祭当日独奏するはずだった弾き手が一人風邪で休んで時間回しが出来ないからって、何でもいいから弾いてくれないかって、そいつに頼まれて」
「それ、私、聞いた事ないんで」
「え?」
「私、聞いた事ないから」
「え?本当にヤキモチ?」
薫子は顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。
※1980年当時のYAMAHA製アコースティックギターの名称。一枚ものの天然木を使用した、かなり音質の高いもの。




