第百七十五話 階段の続き?
「やっぱり……ツツミさんが」
雨戸は閉めたが、今度は布団の上で先程と同じ様に二人で毛布を被って話を続けている。
「うん。中井さんからの電話の最中にツツミさんから、二人の再出発?のために何かさせて欲しいって言われて」
指輪の一品製作を依頼することに。
それにしてもと薫子は指輪がはまった自分の薬指を眺めながらサイズをどう測ったか知りたかった。
「サイズはどうして分かったか?気になる?」
「うん」
「カコちゃん、製図の時間居眠りしたことあって」
「え?居眠り?」
「本当に疲れちゃってって言う時だったと思う。チャンスを伺ってたから、起こさない様に糸を指に絡ませて、それをスケールで測った」
「気がつかないうちに……そんなこと」
居眠り中に測られていたと思うと恥ずかしくて、薫子はまた頬を紅らめた。
そして祐希の方から、ツツミに材質とだいたいのデザインの申し出をして見積もりの上、製作に入って貰ったが、通常の一品製作と考えると時間がない中、どうしても今日という日に間に合わせて欲しいとお願いしたのだ。
ツツミは今、中井と結婚をし大阪住まい。
一日でも製作に時間を費やしたいところ、郵送発送の兼ね合いもあり、超特急で、それでも丁寧に仕上げてくれた逸品だった。
「材質は長く使える様に地金には18金のホワイトゴールドを使って貰って、カコちゃんの方には誕生石のピンクサファイアを入れて貰ったんだ。その周りの金色の部分ももちろん18金だよ」
「すごいピンクサファイアなの!?高かったんじゃない?」
「バイク売った」
「え!?何で?」
「僕の勝手な思い込みで……一緒にいられる時間は長いけど、顔は見られないしカコちゃんをかえって疲れさせちゃうって分かったから」
『確かに……でも』
薫子は思う。
「でも私はバイクに乗せて貰うの好きだったよ」
「え?本当?」
「うん。だって祐くんにくっついていられたから」
「え?そうなの?」
「うん」
話した方の薫子も聞いた方の祐希も顔が真っ赤だ。
「それと……パパが祐くんのバイク見たがってた」
「え!?お父さんが?」
「私が小学生の頃、パパ、バイク持ってて、ちょっとだけ遠くに遊びに行く時に乗せてくれたりしたの」
「やっぱり……カコちゃん乗り慣れてる気がしたんだ。初めてのはずなのにクラブバー握ったから」
「あ、あれね……どうしようかなって思ったけど、まさか抱きついてって言われるとは思わなかったから……嬉しかったけど」
「買い戻す!」
「売ったばかりなのに?」
「いや、もうこれは自分の稼いだ金がどうとか言ってられないっ!お父さんにも見て貰いたいし、カコちゃんにも乗って貰いたいから」
「祐くん、落ち着いて」
「いや、むしろこれは大事な事で……」
薫子が身体の向きを変えて膝立ちすると、祐希の顔を両手で包み込む様に押さえて口づけした。
これは明らかに気持ちのこもった誘惑的な意味がありそうなキス。
「カコ……ちゃん」
「祐くん、うるさい」
前に薫子が祐希に言われた台詞。
「ん……」
「……ダメだよ」
祐希が薫子の肩を少し押し返した。
「何でダメなの?」
「……どうしても!って言うか……ここで?って、こっちが聞きたいよ」
「初めての日からキスしかしてくれないよね」
祐希は動揺していた。




